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第273回(2012.01.25)
プロジェクトマネジメントをクリエイティブにする

◆プロジェクトマネジメントをクリエイティブにする

「プロジェクトをクリエイティブにする」という言い方に違和感を感じる人は少ないと思う。プロジェクトの成果物を創造性の高いものにするという意味だ。1017号の編集後記に書いたのだが、2月11日の「ゲームストーミングによるプロジェクト活性手法」というワークショップをやっていただく野村恭彦さんがご自身で作られたフェースブックイベントページに、受講してほしい人として

システム企画・開発、商品企画・開発、組織開発、経営企画など、あらゆるプロジェ
クトマネジメントを「もっとクリエイティブにしたい」と考えている変革リーダーの
皆さまです

と書かれていた。なるほどと思った。プロジェクトをクリエイティブにするには、プロジェクトマネジメントをクリエイティブにする必要がある。

◆アイデアを出すより、実行が難しい

昨年、スコット・ベルスキ氏の「アイデアの99% ―― 「1%のひらめき」を形にする3つの力」という本が出版された。この本の中に非常に興味深い指摘がある。それはタイトルになっている指摘で、100のアイデアがあっても実行できるのはせいぜい一つであるという指摘だ。つまり、アイデアを生み出すよりは、アイデアを実行する方がはるかに難しい。

たとえば、商品開発を考えてみてほしい。どんな分野でも構わない。あなたが思いつくことさえなかった商品を他社が発売するというのは滅多にないと思う。他社の多くのヒット商品をみて、「うちも同じようなアイデアがあったのに先を越された」という人が圧倒的に多いだろう。これだけでも、アイデアの実現の難しさが分かる。

なぜ、難しいのか。商品開発で考えてみると、いくら素晴らしいアイデアであったとしても、それを実行するにあたって無制限に時間やお金を使えるわけではない。そこには条件がつく。その条件をクリアすることが無理だと判断されれ(難しいけれ)ば、そのアイデアは没になる。

つまり、どのような商品を作るかについてアイデアがないわけでない。組織や顧客の評価を「通る」アイデアがないのだ。問題はこのあとの対処で、多くの場合、アイデアではなく、「実現可能なアイデア」を探すようになる。そしてクリエイティビリティが失われていく。


◆アイデアが実行できるかどうかはプロジェクトマネジメント次第

ここで話を少し整理してみよう。そのアイデアが実現できるかどうかは、アイデアそのものの問題ではなく、プロジェクトマネジメントの問題である。もう少し、正確にいえば、ひらめいたアイデアを制約の中で実現していくためにはどうすればよいかという問題解決ができなくてはならない。

できるアイデアを考えて、ステークホルダの要求によりスコープが変わり、いままでのやり方では少し、実現が難しい部分が出てきたといった話とは次元の違う話である。今までのやり方ではまったく無理で、異なる方法を取らなくてはならないという問題なのだ。そのような方法を考えることこそ、求められているクリエイティビリティである。


◆プロジェクトマネジメントの方向性

そのためにプロジェクトマネジメントはどのように変わらなくてはならないのか?計画の作り方、リスクマネジメント、ステークホルダマネジメント、価値のマネジメント、リフレーミングなどいろいろとある。

その中で、共通的に求められることは、すべての人を巻き込むことである。いろいろな人の考えをプロジェクトに活かしていくことだ。そのために必要な手法がゲームストーミングである。

既存のプロジェクトマネジメントのプロセスや手法にとらわれることなく、多くの人を巻き込んでプロジェクトの進め方を考えていく。そこにプロジェクトマネジメントのクリエイティビリティが生まれる。

 

◆ゲームストーミングセミナーのお知らせ

PM養成マガジン10周年記念セミナーで、ゲームストーミングの体験ワークショップを行います。

本セッションでは、仕事を「やるべきことをきちんと進めるプロセス」から、「誰もが参加して創造的に進めるゲーム」へと変えるための、考え方(ゲーム思考)と具体的なワークショップツール群(ゲームストーミング)を体験的にお伝えします。

━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【PM養成マガジン10周年記念セミナー】
第1回 ゲームストーミングによるプロジェクト活性手法
日時:2012年02月11日(土)  13:30-16:30(13:00受付開始) 
場所:カタリストBA(東京都世田谷区)
講師:野村 恭彦(のむら・たかひこ)氏(国際大学GLOCOM)
詳細・お申込 http://pmstyle.biz/smn/pm_magazine10_1.htm
主催 PM養成マガジン(運営:PMstyle)
3PDUを発行します。
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【カリキュラム】
13:30-14:00 プレゼンテーション:
テーマ:「仕事を効率的プロセスから創造的ゲームに変える」

14:00-15:00 ゲームストーミング体験(1)
テーマ:「プロジェクト推進の課題は何か?」
ゲーム(1):3-12-3 ブレインストーミング (3-12-3 Brainstorming)
ゲーム(2):アンチプロブレム (The Anti-Problem)
レビュー

15:00-16:00 ゲームストーミング体験(2)
テーマ:「ユーザ中心のプロジェクトに変えるには?」
ゲーム(3):ボディストーミング (Bodystorming)
ゲーム(4):共感図法 (Empathy Map)
レビュー

16:00-16:30 クロージング
ゲーム(5):思い出の壁 (Memory Wall)

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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