第208回(2009.05.19)
クリエイティビリティとコンシステンシー

◆クリエイティビリティとコンシステンシーの両立

プロジェクトの本質は、クリエイティビリティ(creativity)とコンシステンシー(consistency)の両立にある。

クリエイティビリティは創造性。これはなんとなく、イメージがあると思う。問題はコンシステンシー。辞書を引くと、一貫性とか、矛盾のないことといった日本語が当てられている。

これが何を意味しているかというのは結構難しい議論である。今回の戦略ノートはこの辺の話をしてみたい。


◆プロジェクトマネジメントのバリューは何か?

プロジェクトマネジメントが普及してきたにもかかわらず、相変わらずオープンプロブレムになっている問題がある。それは、プロジェクトマネジメントの価値(バリュー)は何かという話だ。

プロジェクトの成功を目標達成だと定義し、プロジェクトマネジメントの価値をプロジェクトを成功させることだという方程式は怪しい面がある。プロジェクトのクリエイティビリティが担保されているのであれば、この方程式は正しい。しかし、クリエイティビリティの小さいプロジェクト、言い換えると、誰にでもできそうな目標を掲げたプロジェクトであれば、その目標を達成することが成功だという定義がそもそも怪しいからだ。


◆プロジェクトマネジメントのミッション

では、何か?

この問題はプロジェクトマネジメントのミッションとは何かと考えてみると、意外とはっきりしている。プロジェクトマネジメントのミッションは、
「コンフリクトの克服」
である。コンフリクトとは二律背反のこと。たとえば、顧客の利益と自社の利益、品質とコストなどだが、クリエイティブな仕事には多くのコンフリクトがある。このコンフリクトの解消こそ、プロジェクトマネジメントのミッションに他ならない。そして、コンフリクトの解消が結果として、プロジェクトの成功をもたらす。これが正しい方程式。

その中で、バリューは何かと考えてみると、「高いレベル」でコンフリクトを克服すること、あるいは調和させることである。このレベルこそが、プロジェクトマネジメントの価値に他ならない。

そして、コンシステンシーというのは、高いレベルでコンフリクトが調和された状態を指している。つまり、クリエイティビリティの発揮された目標に対するコンシステンシーである。


◆プロジェクトマネジメントとはいえない例

たとえば、顧客の要求が思ったよりも複雑で、当初考えていたコストでは収まりそうにないとする。このときに、顧客を説得して、スコープを削減する。これはあまりレベルの高くない調和である。あるいは、顧客から追加予算を取って、何とか顧客の要求に応える。

これはプロジェクトの推進方法としては一つの知恵であるが、こういうやり方をするのであればプロジェクトマネジメントに大した価値はない。今の多くのプロジェクトでそうであるように、マネジメントではなく、単に可視化の手段に過ぎない。


◆プロジェクトマネジメントを「使って」何をするかを考えよ

プロジェクトマネジメントは、コンフリクトの高いレベルでの克服、つまり、顧客が満足し、自社も満足できるような問題解決を模索し、それを実行できてはじめて価値を持つ。

プロジェクトマネジメントは「しなくてはならないもの」ではなく、「使って何かをするもの」なのだ。このように考えると、SIプロジェクトのような受託業務も含めて、クリエイティビリティが重要な意味を持つ。プロジェクトマネジメントをしない場合と比べて、プロジェクトマネジメントをすることによってどのようなクリエイティビリティが実現できるのか?ここである。

逆にいえば、プロジェクトマネジメントというのは、高い目標に対して、コンシステンシーを実現出来るようなものでなくてはならないともいえる。これは、管理からマネジメントへというパラダイムチェンジに他ならない。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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