第174回(2008.01.29)
組織が行うべきプロジェクトマネジメント(1)〜責任のフレームワーク

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

今年の戦略ノートは、特に、「組織のプロジェクトマネジメント」を大きなテーマとして、いろいろな意見を発信していきたいと思っています。

これをめぐって、本誌はもちろん、他のメディアとの提携も模索しながら、意味のある活動をできればと考えています。ご期待ください!


◆プロジェクトにおける責任

最初に考えてみたい話はこれである。細かな話は次回以降とし、まず、最初にフレームワークについて考えてみたい。

組織のプロジェクトマネジメントというと、PMOがプロジェクトマネジメントを支援することと想像する人が多いと思うが、PMOの活動を以て組織のプロジェクトマネジメントだというのは適切ではないかもしれない。

一つのプロジェクトのライフサイクルの中では、明確な責任分担があることが多い。
つまり、すべてがプロジェクトマネジャーの責任ではないことが多い。大きく分けるとプロジェクトには3つの責任がある。

 (1)プロジェクトの成果責任
 (2)プロジェクトの企画責任
 (3)プロジェクトの事業責任

の3つである。


◆プロジェクトマネジャーの責任

(1)のプロジェクトの成果責任は、設定された目的と目標(成果)を達成する責任である。一般的にはこれはプロジェクトマネジャーの責任である。

しばしば問題になるのは、設定された目的や目標の妥当性である。その組織において、まったく考えられないような目標を設定したとすれば、その目標の達成はもはやプロジェクトマネジャーの責任とはいえない。つまり、プロジェクトの成果責任だとはいえない。プロジェクトの企画責任である。


◆プログラムマネジャーの責任

プロジェクトの企画責任とは、事業にとって意味のある目的や目標を設定することである。この際に上に述べたように、実現可能な目標を設定する必要がある。つまり、現在のプロジェクトの実行能力を見極めて、その能力に見合う目標設定をしなくてはならない。これは一般的にはプログラムマネジャーの責任である。

では、事業にとって意味のある目標の達成が、既存の能力でかなわない場合にはどうすればよいのだろうか?技術が未確立である、予算が十分にとれない、納期が無理そうだなどのケースである。

プログラムマネジャーの選択はいくつかある。たとえば、「そのプロジェクトのスコープを削減し、別のプロジェクトで実現する」、「そのプロジェクトに対して、別のプロジェクトから金を引っ張ってくる」、「自ら陣頭指揮をとって目標を実現できるようなイノベーションを実現していく」などだ。


◆事業マネジャーの責任

ここで見方を変えてみると、この責任はそもそも、プロジェクトを企画する立場のプログラムマネジャーが負うべき責任かという疑問が生じる。上に示した選択の中で、一番目や二番目の選択をとって対応できる場合には、上位組織から与えられた事業課題を与えられたリソースで実現するという意味でプログラムマネジャーの責任である。

しかし、イノベーションを起こすというのはどうだろうか?イノベーションというのが身近に感じられなければ「改善」でもよい。

この部分はプログラムマネジャーの責任であるとは考えにくい。これは事業目標を達成するために組織としての生産性を上げることに他ならないからだ。これが(3)のプロジェクトの事業責任と呼んでいる部分である。責任者はシニアマネジャーであったり、エグゼクティブマネジャーであったりする。いわゆる事業マネジャーの責任である。

同様の意味で、プロジェクトの選定に対してもこの境界を明確にしておく必要がある。
事業環境を鑑み、どういうプロジェクト(テーマ)を実施するか、つまりポートフォリオを組み、トータルの経営資源を配賦するのはプログラムマネジャーの責任ではない。事業マネジャーの責任である。配置されたリソースの使い方を考えるのはプログラムマネジャーの責任である。ゆえに上に述べたようなプログラムマネジャーとプロジェクトマネジャーの責任配分になるのだ。

◆PMOの責任

最後にPMOの責任について触れておく。

PMOは3つの責任をそれぞれの責任者が果たせるように支援をする責任を持つ。

ただし、今の一般的な認識として、プログラムマネジャーや、事業マネジャーの責任そのものを代理しようとする風潮があるが、これはPMOの正しい責任の果たし方だとは言えない。PMOの責任はあくまでも支援であり、代理ではない。支援は代理にはできないことがある。多くのPMOスタッフが自らの立ち位置を決めかねている理由はここにある。3つの責任に対してPMOは中立な存在でなくてはならない。


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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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