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第157回(2007.08.28)
前提条件と制約条件の不思議な関係 |
◆前提条件の例
155回で、前提条件を検証しようという話をした。今回はもう少し、この問題を突っ込んで考えてみたい。
プロジェクトの条件には、前提条件と、制約条件がある。前回の記事について、前提条件のイメージがよくわからないという意見があったので、ちょっと事例を紹介しておく。以下に示すのは、ジョリオン・ハローズの「プロジェクトマネジメントオフィスツールキット」という書籍にあげられている前提条件のテンプレートの例だ。
【資源の前提条件】
必要に応じてプロジェクト要員の確保が可能
必要に応じて主要な顧客の資源の確保が可能
プロジェクト要員の殆どが開発環境の経験がある
顧客側でシステムの機能要件を詳細に説明できる要員の確保が可能
市場から特殊な分野の経験者やスキルの保有者の確保が可能
専任の要員は少なくとも一週間35時間の労働時間を確保できる
つまり、このプロジェクトを推進するに当たって、これだけは成り立っていると仮定して進めようというのが前提条件である。
◆制約条件の例
これに対して、制約条件とはどのようなものか?同じく、ジョリオン・ハローズからの抜粋である。
【資源の制約条件】
主要な(人的)資源がパートタイムでしか確保できない
主要な顧客の資源の確保に制限がある
プロジェクト要員の多数が開発環境の経験が無い
顧客側でシステムの機能要件を説明できる要員に制限がある
この2つをよく較べてみてほしい。例えば、
必要に応じてプロジェクト要員の確保が可能
という前提条件がある。この前提条件は本来プロジェクトマネジメントでは前提であるが、IT系のプロジェクトを中心になかなか、成り立たなくなってきている。これが成り立たないとどうなるか?例えば
主要な(人的)資源がパートタイムでしか確保できない
といった制約条件が生じてしまうのだ。
◆前提条件+制約条件=プロジェクト環境
さて、ここで前提条件とは何かを別の視点から考えてみよう。前提条件とは
組織がプロジェクトマネジャーにプロジェクトを依頼するときの前提
である。こう定義すると不思議に思われる方もいらっしゃると思う。例えば
必要に応じて主要な顧客の資源の確保が可能
は顧客の問題であって組織は関係ないと思われるかもしれないが、そうではない。
この問題自体は顧客の問題であるが、このプロジェクトを組織として顧客から引き受た際にこの条件が成立しないリスク、つまり、顧客がきちんとした体制をとらないリスクを組織としてを受け入れている。
そう考えると組織としては、2つの道しかない。一つは、顧客にこの前提が守られるようにアプローチしていくことである。もう一つは、顧客には強くはいえないと諦め、プロジェクトマネジャーに「顧客の対応は悪いと思うのでよろしく」ということである。この場合、この前提条件は
主要な顧客の資源の確保に制限がある
という制約条件になってしまう。
このようにプロジェクトを定義するというのは、前提条件と制約条件の折り合いを探すことに他ならないが、前提条件と制約条件を併せてプロジェクトの環境という。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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