第154回(2007.08.14)
マネジメントの基盤としてのコミュニケーション

◆コミュニケーションの活性化

コミュニケーションは(最も重要な)ヒューマンスキルだという認識があるが、意外とその本質的な役割に気がつかない組織が多い。

Y「コミュニケーションを活性化させましょう」

C「コミュニケーションは盛んな方がよいですが、うちのような業務でそれにコストをかけてやるだけの価値があるとは思えないですね」

なんどか、このような経験がある。

プロジェクトマネジメントの中で、「コミュニケーションの活性化」というのはコラボレーション、創発といった意味合いで捉えられることが多い。それゆえにコミュニケーションを活性化させることはクリエイティブな活動、クリエイティブな組織を実現するためには非常に重要な要素である。


◆基盤という発想がないプロジェクトマネジメント

プロジェクトマネジメントの普及はずっと経営コンサルティング活動の中で取り組んできたが、それ自体を単独のコンサルティングの対象にして3〜4年になる。この間、ずっと違和感として残っているのは、マネジメントの基盤創りという発想があまりないことだ。

よくいえばマネジメントを技術的(テクニカル)に捉え、誰がプロジェクトのマネジメントをしてもあるレベル以上のことができるようにしようとしている。実際に、PMBOK(R)を見ればわかるが、マネジメントのあらゆる要素が形式化され、仕組み化されている。含まれていないのは、人間的側面だけで、それについても、多くの組織では、同じように取り組もうとしているように見える。

悪くいえば、マネジメントの本質に入り込むことなく、小手先で何とか対処しようとしている。


◆マネジメントはコミュニケーションを基盤とする

この傾向が顕著に出ているのが、コミュニケーション(の活性化)である。ドラッカーの有名な言葉に

 マネジメントは「個の責任」と「コミュニケーション」を基盤とする

という言葉があるが、この言葉を借りるまでもなく、コミュニケーションというのはマネジメントの基盤である。言い換えると、コミュニケーションがなければ、マネジメントはできないし、コミュニケーションが活性化されればされるほど、マネジメントの成果は大きくなる。これは進捗報告をどうするかとかいう以前の問題である。確かに、アーンドバリューのように進捗を定量化することはコミュニケーションに寄与する。しかし、現場を見ていてつくづく思うのは、アーンドバリューが推定値である以上、どのようなスジのツールになるかは、どれだけコミュニケーションに対する意識が高いかに依存する。


◆コミュニケーションの基盤がないところでアーンドバリューは成功しない

計測方法を決めていても、コミュニケーションに対する意識が低いチームがアーンドバリューをやっても機械的にやるので精度が低くなる。高いチームがやると、その値に魂をこめるので、精度が高くなる。この違いがコミュニケーションの活性化の違いである。

このようにプロジェクトマネジメントの世界を仮に、テクニカルなマネジメントの世界だと捉えても、基盤となるコミュニケーションを構築しないとロクなマネジメントはできないだろう。このあたりをもう一度、考え直す必要があるのではないかと思う。どのようにコミュニケーションの基盤を作っていけばよいかを考えてみたい。これがコミュニケーションマネジメントの本質だといえよう。

ちなみに、ドラッカーのいうもう一つの基盤「個の責任」というのもいうまでもなく、なくては話にならない。進捗の例で言えば、メンバーが自己責任で進捗を正確に把握していないことには、プロジェクトマネジメントなど成り立たない。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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