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第146回(2007.06.05)
プロジェクトの経営的貢献 |
◆あなたのプロジェクトは経営にどう貢献しているか?
突然であるが、あなたの行っているプロジェクトが経営にどのように貢献しているかを考えたことがあるだろうか?今回の戦略ノートはこれを話題にしてみたい。
プログラムマネジメントやポートフォリオマネジメントがそろそろ、本格化してきた。シニアマネジャー以上の人は受け入れるかどうかは別にして、その意味するところはピンと来る人が多い(こういう言い方は失礼ではあるが)。ところが、現場のプロジェクトマネジャーの人はピンとこない人が圧倒的に多い。
現場側から見たときにピンと来ないひとつの理由は、そもそも、プロジェクトがどのような構造で経営や事業に貢献しているかがはっきりしないことにあるような気がしている。例えば、SIプロジェクトマネジャーで、納期遅れを起こしたときに、顧客への迷惑による企業イメージの低下(場合によってはペナルティによる財務的負担)、納期遅れ対応に付随するプロジェクト予算のオーバーによる収益の低下以外の経営や事業への影響をどのくらい想像できるだろうか?
プロジェクトマネジャー自身がプログラムや事業において意思決定をする機会は少ないと思うが、プロジェクトにおける意思決定の中では、この要素は結構、重要である。
◆納期遅れの影響を考えてみよう
例えば、納期遅れという問題を考えてみよう。ある企業でこんな事例があった。
ベンチャーのシステム開発企業A社の話。社長の個人的なつながりで、年間売り上げの40%近くに相当するような案件を受注してきた。資本金の約10倍の案件だ。当然、自社ではまかないきれないというので、このプロジェクトのプロジェクトマネジャーになる役員のかつて勤務していた中堅どころのSI企業B社に応援を頼んだ。
A社は開発力はあり、開発そのものは順調に進んだ。しかし、顧客のビジネス上の事情により、この開発案件がスケジュールが3ヶ月くらい遅れる可能性が強くなった。
ここで、A社は(というか、社長とプロマネ役員は)、この案件をB社に譲渡した。細かい事情とオペレーションはここでは書けないが、一言でいえば、そのままでやっていると、発注先からの入金の目処が立たず、資金繰りができなくなるので、発注企業の了解を得て、B社にそこまでの分を清算してもらって、自ら降りた。
この事例をひとつ取ってみても、プロジェクトのスケジュール遅れが、プロジェクト(マネジメント)だけの問題でもないし、バランスシートだけの問題でもないことがお分かりいただけるだろう。この例では、キャッシュフローマネジメントと密接な関係がある。
逆にいえば、プロジェクトは売上げや収益だけではなく、キャッシュフローにも貢献しているのだ(もっとも一昔前なら、上のようなケースは、モノとは別にカネを払うようなやり方が横行していたが、内部統制が強まってきて、だんだん、そんなことができなくなっている)。
◆プロジェクト結果の評価は結局この構造を明確にしていくことだ
プロジェクトが成功かどうかという評価が難しいということがよく言われる。プロジェクト結果の評価の難しさは、このようにプロジェクトのパラメータと経営のパラメータの間の関係を総括的に評価するメトリクス(いわゆるベネフィットに対するメトリクス)の設定が難しいことにある。キャッシュフローだけであれば話は単純だが、これ以外もプロジェクトが貢献すべき経営的パラメータがある。
非常に大雑把にいえば、プロジェクトの貢献には
(1)事業戦略への貢献
(2)EVA(付加価値)への貢献
の2つがある。(2)はさらに、
(2−1)キャッシュフロー
(2−2)資本費用
に分けることができる。さらに、キャッシュフローであれば、
(2−1−1)ライフサイクル収入
(2−1−2)ライフサイクル支出
(2−1−3)プロジェクトコスト
くらいに分けることができる。さらに、例えば、ライフサイクルの収入を考えると、SIのような受注型プロジェクトであれば「価格」がすべてであるし、商品開発のプロジェクトであれば、「価格」と「シェア」に分解できる。
ここまでくればプロジェクト成功のメトリクスとして使うことができる。実際のプロジェクトを考えてみてもそうなっていることが多い。
その意味で、EVAからみの話はそんなに難しいことではないのだが、問題は、戦略実現への貢献である。このメトリクス設定を難しくしているひとつの原因は、戦略そのものが明確でないことにあるが、それはちょっと傍におき、仮に戦略が明確だとしても、それをメトリクス化することは難しい。例えば、ポートフォリオのように2次元で表現できるような単純なものでよいのかどうかという議論すらある。
残念ながら、これが戦略経営の本質であり、残念ながら、一般的な解答は存在しない。みなさんが知恵を絞ってほしい(っていうか、これはシニアマネジャーの役割だが
、、、)
とりあえず、上の構造をブログに図示している。ご参考まで。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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