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第136回(2007.03.13)
プロジェクトマネジャーの道具箱 |
◆ジェラルド・ワインバーグ
ジェラルド・ワインバーグというソフトウエア開発のコンサルタントがいる。非常に観察眼に優れ、深い主張をするので、日本でもファンが多い。
そのワインバーグの代表作のひとつがコンサルタントの秘密だ。コンサルタントとしてのものの見方、行動の仕方を解説した本で、分野を限らず、コンサルティングのバイブルだといってもよい一冊である(木村泉先生の訳も素敵だ)。
このシリーズで、最近(といっても5年くらい前)に出版された本に、「コンサルタントの道具箱」という本がある。
この2冊については、こちらで取り上げているので、興味があれば読んでください。
◆道具を使う
さて、今回の戦略ノートで取り上げたいのは、この「道具箱」という概念である。著者が道具箱というと真っ先に思い浮かべるのが、大工さんの道具箱である。のこぎりやかんな、金槌や錐、ドライバーやドリルなどが、収められている。同じ道具で、サイズの違うものがいくつか収められているものもある。
大工さんは道具箱の中の道具を使って、設計図面どおりに家を作っていく。大工というと手先が器用で、うまく木を切ったり、組み立てたりするところがもっとも重要な資質であるように思えるのだが、実際に現場を見ているとそれ以外にも感心することがある。
それは、この部分の工事は、この道具でやるのかという感心。素人には到底思いつかないような道具の選び方と使い方をするのだ。
◆ビジネスマンの道具箱
ワインバーグの本の話題に戻る。もう10年くらい前からだと思うが、日本でも思考技術が重視されるようになり、最近では人材育成のプログラムに必ず入れられるようになってきた(なぜか、論理思考や問題解決などの分析思考技術が中心で、クリティカルシンキングなどの意思決定技術に重きが置かれないのは謎だが、、、)。
その結果、多くのビジネスマンは思考技術を身に着けるようになってきた。おそらく、ワインバーグの道具箱に入っている要素はほとんど知っているという人が少なくないと思う。また、議論だとか、問題解決の様式はずいぶん変わってきたように思う。
ところが、それによって思考の品質が上がっているかというと少なくとも僕はそうは思わない。ロジックによる展開プロセスの正当化と、プレゼンをはがしてしまえば、以前とあまり変わっていないような気がする。現実に、仕事の見かけ上の生産性は上がっているが、実質的な生産性はあまりあがっていないことを考えると、この推測はそんなに大きく外れていないと思っている。
◆なぜ、道具が使えないか
なぜだろうか?
論理思考法や問題解決法といった道具の使い方がこなれていないからだ。大工のすごいところは、上で述べたように道具を使うTPOの判断であり、また、使い方そのものだ。さらに、もうひとつあげるとすれば、道具を研ぎ澄まし、いつでも使える状態にしている。せっかく、道具を手に入れても、この3つがいずれもできてない人が多い。
例えていえば、今のビジネスマンの思考の道具箱は、道具屋さんに行って、必要なもの一通りくださいと頼んで、道具屋さんが選んでくれた新品の道具を一通り買ってきていれているだけのような状態だ。これでは、使い物にならないのは当たり前である。
ワインバーグの道具箱の本は、コンサルタントの道具の使い方や、また、手入れの仕方についても教えてくれる非常に優れた本である。
◆PMの道具箱
プロジェクトマネジメントでもやはり、道具箱のコンセプトは重要である。プロジェクトマネジメントの道具とは何か?プロジェクトマネジメントのツールは、「マネジメント課題」を解決する方策(手法)である。
PMの道具箱には、プロジェクトにおけるマネジメント課題を解決するための道具がぎっしりと詰まっている。プロジェクトマネジャーは道具箱に入れる道具を選ぶと同時に、「どういう局面で使う道具か」、「どのように使う道具か」といった使い方を理解し、また、常に考え、自分流の使い方を編み出していく必要がある。
また、常に道具は研いておき、いつでも使えるようにしておかなくてはならない。
プロジェクトマネジャーにはそのようなコンセプトの道具箱を持ってほしい。
次回は、道具箱にどんな道具を入れておけばよいかを考えてみたい。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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