第119回(2006.10.03) 
おとなのプロジェクトマネジメント

前回からの続き。

118回「金はいくらでも出す」


◆おとなのプロジェクトマネジメント

プロジェクトリスクへの認識の高まりの一方で、リスクを見つけてそれを潰すのがプロジェクトマネジメントだといった認識が強くなってきた。それはいいのだが、何やら、変な方向に向かいつつあるのではないだろうか?

ソフトウエアエンジニアリングマネジメントの「グル」であるトム・デマルコはその著書

 熊とワルツを

の中で、リスクマネジメントをおとなのリスクマネジメントだと称している。おとなの決定的だともいえる特長は「人生の不愉快なことに立ち向かう意思があること」だとしている。これになぞらえて

 起こりうる悪い事態(リスク)をはっきりと認識し、それらに備えておくことがマネジャーとしての成熟のしるし

だとし、それゆえに、リスクマネジメントはおとなのプロジェクトマネジメントだといっている。

名言だ。ところが、現実にはリスクマネジメントが、プロジェクトの開始前にいやなことをすべて葬り去るマネジメントになりつつある。たとえ、それにどれだけの対価を払おうとも。いや、この言い方は正しくないかもしれない。一方で「経営的プレッシャー」があり、見合わないリスクのあるプロジェクトはやってはならないという風潮が蔓延しつつある。

これでは、「こどものプロジェクトマネジメント」である。


◆メンバーがこども!?

もう少し、おとなのプロジェクトマネジメントという意味を考えてみたい。リスクと深い関係があるのだが、あなたのプロジェクトマネジメントのスタイルは

 何も問題がなくても報告をさせるマネジメント



 何か問題が発生したときに報告をさせるマネジメント

のどちらだろうか?プロジェクトマネジメントは人の管理をするものではなく、成果の管理をするものである。従って、マネジメントスタイルは後者でありたい。しかし、現実には前者であることが多い。理由は、メンバーがこどもだからだそうだ。何十人のプロジェクトマネジャーからそんな話を聞いた。

おとなはこどもを保護しなくてはならない。おとなは、子供がリスクを無視しても、悲劇が起こらないようにしなくてはならない。

プロジェクトマネジャーが子供なら、、、あれ?どうなるんだろう?リスクを冒したこどもを虐待する?

プロジェクトチームがおとななら、リスクを管理しておけば、進捗の管理はいらない。
なんと美しい世界だろう。おとなのチームを創ろう!

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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