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第118回(2006.09.26)
金はいくらでも出す! |
◆金はいくらでも出す
「いくら予算を使ってもよいので、半年でこの商品を開発してほしい」
「金はいくらでも出す。とにかく、半年でこのシステムを動くようにしてくれ」
あまり、現実感のない話だが、たまたま、この2週間の間に、3回、このような話を耳にした。いずれも当惑気味だった。
米国にいけば、この種のプロジェクトは結構多い。というよりも、このようなニーズにこたえるためにプロジェクトマネジメントをビジネスの分野に持ち込んだといっても過言ではない。
日米で何が違うか?経営を戦略的に行っているかどうかだ。経営を戦略的に行っていこうとした場合、ポイントになる資源は「時間」である。日本は90年代前半までは戦略経営を行ってこなかったので、時間が問題になることは少なかった。
米国で戦略経営が言われるようになったのは70年代の後半である。80年代に入ると、そのための環境として戦略情報システムが構築されるようになってきた。
◆「レッドブル、 翼を与える」
最近、よくレッドブルのコマーシャルを見かける。「レッドブル、 翼を与える」というやつだ。レッドブルのコマーシャルではないが、プロジェクトマネジメントは戦略経営においては、まさに翼である。戦略経営とは時空間を自由に飛びまわらなくてはならない経営手法である。
実は「レッドブル、 翼を与える」が初めてブラウン管に登場したのは、1988年である。そこからどんどんグローバルなCMになって、やっと日本でも発売されるようになってきた。プロジェクトマネジメントについても、戦略経営についても、ちょうどレッドブル並の時間の遅れがある。
◆プロジェクトマネジメントは翼
もう少し話が飛ぶが、松下電器のグループ内での事業重複は売り上げベースで1兆円あったそうだ。これをリストラクチャリングし、V字回復させたのが中村前社長である。これはまさに経営の戦略化の経営であるが、逆に言えば、戦略化すれば一つ一つの商品やサービスの経営への影響は大きくなる。一つの商品開発が失敗すればその事業が失敗してもおかしくない。その中で何よりも重要なのが時間。競合より早く商品を出せればよいといった単純な話ではない。競合との関係次第では、意図的に後だしする方が効果的といったこともありうる。要するに時間が生命線というのは、立てた戦略を実行するために、計画通りに商品開発を続けていくことが必要なのだ。このためには、プロジェクトマネジメントは極めて重要な役割を果たす。まさに、翼だ。
冒頭に述べた2つのケースはいずれもリードタイムの短縮だが、このようなニーズが出てくることは、その企業(SIの場合は顧客企業)が戦略経営を行っているからに他ならない。これからもこのようなニーズが増えてくることは間違いない。
さて、このようなニーズにこたえようとした場合に、プロジェクトマネジメントのポイントはどこか?リスクマネジメントである。
◆リスクマネジメントのパラダイムシフトをせよ!
今、日本では、失敗してはならないプロジェクトを失敗しないようにリスクマネジメントを行っている企業が多い。これはこれで、有効はリスクマネジメントの活用方法である。ところが、上のようなプロジェクトはまったく逆である。何か工夫しなければ必ず失敗する。そこに、工夫を入れなくてはならない。石橋をたたいて渡るタイプのマネジャーにとっては無理・無謀の類の工夫であることも少なくない。
リスクマネジメントがより威力を発揮するのは、このようなケースである。自分であえてリスクを作る。つまり、リスクがある工法、調達などを行う計画を作る。そして、そのリスクとうまく付き合いながら、プロジェクトを進めていく。これが必要だ。
商品開発の例で言えば、思い切ったコンカレント化をし、極端なフロントローディングを行う。当然、後工程で仕様が変更になり、手戻りするリスクが高くなり、手戻りするとリードタイムが長くなる。この場合に、ポイントを抑えながら、もし、仕様変更の必要が生じても手戻りを起こさないようなタイミングで仕様変更をかけていく。
これが本来のリスクマネジメントである。
冒頭に述べたようなプロジェクトマネジメントをするには、リスクマネジメントのパラダイムシフトが必要である!
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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