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第10回(2002.06.29) 
計画とは何か
 

プロジェクトという仕事の仕方の理解しにくいところは,プロジェクトが

 手法とか環境に何か新しい要素があり,できるかどうかわからないときの仕事の仕方

であるにも関わらず,

 計画を作る

ところであろう.なぜ,どうなるか分からないものの計画が立てられるのか?よしんば立てたとしても,なんの意味があるのか?計画がなければどこまで進んでいるかわからないという意見もあるが,不正確な計画に縛られれば,進行の邪魔になるともいえる.

この問題と解く鍵は「リスクマネジメント」と「計画変更管理」にある.

リスクマネジメントは予定通りに行かないことを予め見越しておき,その対処を折り込んでおくことである.考えられるリスクを「モレなくダブリなく」抽出し,そのリスクに対して,実際にそのような事態になったときにどうするかを予め決めておく.その措置にお金がかかる場合もあるので,必要なら予算措置もしておく.これによって実際に予想外の事態になっても計画への影響は最小限に押さえることができる.分かり易い例はスケジュールを冗長にしておくことだ.過去の実績からすると10日かかる作業を作業者が休むリスクを見込んで11日で計画しておく.すると,もし本当に作業者が1日休んで11日かかったとしても計画は変更しなくてよい(普通に考えれば1日分たくさんのお
金がかかるが,この辺は計画の妙でそうならない場合もある.この辺は手法編のクリティカルパスの解説を読んでみてください).

リスクを配慮した計画を組むことにより,計画通りに進められる確率は上がる.

それでもどうしようなくて計画を変更しなくてはならないことがある.例えば,上での例で一人が思っていた半分の量しか作業ができなかったとしよう.これではもうどうしようもない.このときは計画変更を行う.計画変更管理は,計画通りに行かないときに,一時も早く計画を変更し,新しい計画に従ってその後の作業を進めることである.計画通りいかない理由というのはいろいろあるが,基本的には不確実要素があったので計画が不十分であったと考える.本来ならできるはずだけど,担当者が悪いからできないとは考えない.従って,計
画を速やかに変えて,そのような変更をしても最終納期を守り,総予算を守るにはどうすればよいかを一生懸命考える.これがプロジェクトマネジメントだといってもよいだろう.

そのためには,異常(計画と実績の差異の発生)の早期発見が必要である.そのために,進捗管理の方法が大切である.EVMS(Earned Value Management System)が注目されているのはこのような理由である(EVMSについては来週半ばあたりに手法編として解説を配信しますので,少々お待ちください).

プロジェクトマネジメントの巧拙は計画変更の巧拙でもある.しかし,同時にどれだけ計画変更が少ないかで巧拙が決まることも事実である.一見,矛盾しているようだが,上に述べてきたように

 ・リスクを適切に見抜く
 ・異常の早期発見

の2つによって矛盾ではなくなる.これが可能にするがクオリティの高い計画である.事実,プロジェクトマネジメントの達人に秘訣を聞くと,間違いなくリスクの見極めと変更管理という答えが返ってくると思う.

次回はリスクに対する戦略についてもう少し深く考えてみる.

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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