PMstyleはこちら
第1回(2002.04.30) 
プロジェクトマネジメントなくして企業の成長なし 

プロジェクトマネジメントはエンジニアリングなどの場面で,作業をスムーズに進めるための手段として発達.普及してきた.しかし,ここにきて,経営との関係が注目されるようになってきている.

 ひとつの事例を考えてみよう.ジャックスのJANETはジャックスの事業の基幹を担うシステムであるが,開発期間4年間,開発費用640億円,開発要員1800人(ピーク時)という巨大なプロジェクトとして開発された(数字は日経コンピュータ2001.9.24).これを請け負ったのはIBMで,PMI(R)PMBOK(R)をベースにしたプロジェクトマネジメントでこのプロジェクトを見事に成功させている.

この事例をどのように見るか?まず,ジャックス側.このシステムが成功しなければカード事業の存続さえも危ぶまれていたが,このプロジェクトに社内の反対を押し切り,エース人材を投入し,見事に成功させた.プロジェクトマネジメントスキルがなければ,カード事業は破綻していたかもしれない.次にIBM側.言うまでもない.この規模のプロジェクトの失敗はいくらIBMといえどもSIerとしての致命傷になりかねない.まさに,プロジェクトマネジメント技術が生命線になったわけである.

 プロジェクトが経営の中で重要な役割を持てば持つほど,プロジェクトマネジメントスキルの重要性は高くなる.オーナーサイトとコンストラクタサイドでは若干意味外が違うものの,生命線になることでは変わりない.オーナー側ではプロジェクトマネジメントスキルのなさにより,事業そのものが縮小される可能性がある.基幹系の情報システムはジャックスの例に見るとおりであるが,それ以外でも,製品開発プロジェクト,経営革新プロジェクトなどあげればきりがない.企業にとって創造性や革新性は極めて重要であるが,その創造性や革新性を企業の利益に結び付けていくのはプロジェクトマネジメントなのである.

 コンストラクター側では今に始まったことではない.建築業界では巨大なビルはプロジェクトマネジメントスキルがないと建てることができない.エンジニアリング業界でもプラント開発は要素技術とプロジェクトマネジメント技術の集大成である.ここにきて,IT業界でのそのような傾向がでてきた.これまでは資本力だけで大きな開発を引き受けてきたSIも今後はプロジェクトマネジメントスキルなくしては大きな開発などできなくなるであろう.逆に,建築でその兆候が見られるようにファイナンステクノロジーをうまく活用し,プロジェクトマネジメントスキルを持つ小さな企業が大きな開発を引き受け,大きな利益を上げることのできる可能性も高くなっている.

 このようにプロジェクトマネジメントは企業の競走上,不可欠なスキルになりつつあるし,プロジェクトマネジメントのスキルなくして企業は成長しないという時代になってきたようである.GEのようにマネジメントに特徴を持つ企業と同じく,プロジェクトマネジメントを存続基盤として持つ企業というのが出てくるのも時間の問題だろう.

 このノートはこのような立場から,どのようにプロジェクトをマネジメントすれば競争優位源泉になるかということを考えていきたい.

◆関連セミナーを開催します
━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ◆戦略を実行するプログラムマネジメント       ◆3.5PDU's 
  日時・場所:【Zoom】2024年 11月 26日(火)13:30-17:00(13:20入室可)
       ※Zoomによるオンライン開催です。
       ※少人数、双方向にて、演習、ディスカッションを行います
  講師:鈴木道代(プロジェクトマネジメントオフィス,PMP,PMS)
  詳細・お申込 https://pmstyle.biz/smn/program30.htm
  主催 プロジェクトマネジメントオフィス、PMAJ共催
 ※Youtube参考動画「プロジェクトマネジメントの基礎
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  【カリキュラム】                     
   1.プログラムマネジメントとは
   2.戦略サイクルとプログラムデザイン
   3.ベネフィットのマネジメント
   4.ステークホルダーマネジメント
   5.プログラムにおけるプロジェクト間の調整
    ・プロジェクト間のコンフリクトの調整
    ・スケジュール管理とリソース管理
    ・リスク管理
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
前の記事 | 次の記事 | 記事一覧
著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

メルマガ紹介
本連載は、「PM養成マガジン」にて、連載しております。メルマガの登録は、こちらからできます。
スポンサードリンク