第13回(2003.02.06) 
マネジメントプロセスとミーティング(2)
 

前回からの続き。前回記事はこちら

◆企画型ミーティングの進め方
 企画型ミーティングのマネジメントのポイントは、ミーティングのその場のルールを明確にしておくことであろう。その典型的な例がブレーンストーミングである。ブレーンストーミングというと自由というイメージを持つ人がいるようであるが、
 拡散→ひらめき→収束
というルールのグループ思考法であるということをよく理解させておく必要がある。拡散の段階で収束を図るよな意見を述べたり、あるいは収束の段階で拡散を図るような意見を述べたりすることはブレーンストーミングといえどもルール違反である。
 意見交換についても同様である。
 したがって、まず、会議の進め方としては、テーマを提示した後に、手順の説明を行い、ブレーンストーミングや意見交換に入る必要がある。
 また、もう一つ重要なことは評価である。企画型のミーティングは言いっぱなしで終わると全く何も残らないという結果に終わりかねない。したがって、マネージャーは、評価基準を明示し、その基準に基づき、自らが評価をする、あるいはメンバーに評価を促すことにより、アイディア、意見をきちんと評価しておくことが重要である。

◆情報交換型ミーティングの進め方
 グループエアがいくら進んでも、ミーティングに勝る情報交換の手段はないだろう。これはこれからも変わらないと思われる。その意味では、タイプのミーティングの運営はプロジェクトの出来を握るかもしれない。
 とはいえ、だからといってみんなが無目的に集まり、井戸端会議をするのでは、目的は達成できない。情報交換型の会議では、重要なポイントの一つはその事前準備にある。まず、事前に調査票などを使って大まかな情報を集めておく。これでは電子メールを使えば効果的にできるだろう。その上で、参加者それぞれが本番のミーティングで収集したい情報を明確にしておく。ここが第一のポイントである。
 当然、明確にしたいことがミーティングのテーマになる。そして、そのポイントについて参加者がお互いに情報を収集していく。あるいはミーティングマネージャーが参加者の合意の下で、一括して情報収集を進行していくのもよいだろう。ここで重要なことは、如何に情報を交換することが参加者にとってメリットがあるかということを十分に理解させることである。これができていないと有効な情報はミーティングの席では出てこない。したがって、次の機会がなくなるという悪循環に陥ってしまう。ただし、この理解もデジタルの世界での情報共有に較べるとはるかに容易に進められる。これがメリットの一つでもあるのだ。

◆交渉型ミーティングの進め方
 交渉など、ミーティングでやるものではないと思っていらっしゃるかたも多いだろうと思う。確かに交渉や、調整を会議でやるのは難しい。しかし、明確な納期のあるプロジェクトにおける交渉や調整は、とにかく関係者全員に根回しをしてとばかり言ってられないもの現実である。
 交渉型ミーティングの進め方の一番のポイントは、それぞれの利害グループに対してのその立場を明確に表明させることである。だいたい、この種のミーティングが紛糾するのは、これを怠っているケースが多い。その上でもっと大切なことは表明した内容を理解するように持って行くことである。このようなミーティングの席ではとにかく自分の意見をだけを言えばよい、人の意見はきかなくてもよいと考えていることが多い。つまり、後はアンダーテーブルでやりましょうというスタンスである。そのようなスタンスはプロジェクトの致命傷になりかねない。ミーティングマネージャーは、とにかく理解を促進し、その上で、反対グループの意見を求める。
 マネージャーの腕の見せ所はこの後で、利害を分析するところにある。対立していても必ずといっていいくらい一致しているところもある。不一致のところもある。不一致の点を見つけ、その理由を探すというのが重要な役割である。
 理由が見つけられれば、コンティンジェンシープランは結構考え付くものである。このときに、大切なことは、特に日本人は意見を否定されると、それが客観的には合理的な代案であると分かっていても顔をつぶされたという感覚を持つ人が多いことである。ミーティングの席では余計のことであろう。これを防ぐためには、意見と人格を切り離すようなミーティングマネジメントが必要である。

◆ワークショップの進め方
 ワークショップはミーティングというより計画を作る、分析をするといった作業である。したがって、如何に効率よく作業をするかがポイントになる。
 そのために留意すべき点は、分担をきちんとすることと、時間管理をすることである。著者は商売柄、研修をすることがよくある。その際にグループ演習を行うと、2つの極端な作業スタイルを目撃することがある。仮にリスクマネジメントシートを作るという演習をやっているとしよう。すると、最初から最後までみんなで話し合いながら進めていくグループと基本的には個人が考え、それを発表のためというか、グループの成果にするためにまとめるグループがある。このようなグループの特徴はリーダーがいないことだ。
 もう一つのパターンとして、リーダーがいて、時間を切りながら、個人ワークとグループワークを組み合わせていくグループがある。せいぜい、5グループあっても1〜2であるが。ワークショップに求められる進め方はこの方法であろう。
 そのように考えるとワークショップの進め方が見えてくる。
 まず、テーマの説明とともに、ゴールを明確にする必要がある。これがないと、作業分担ができないだけではなく、グループみんなで路頭に迷ったり、個人任せになったりする。それを示した上で、作業分担を決める。次に作業を始めるが、ここで重要なことは、中間報告を入れることである。中間報告によってお互いに自分の作業に対する軌道修正をかけることができるし、ミーティングマネージャーは全体の進み具合を管理できる。
 最後は作業を持ち寄る。そして検証を行わなければならない。
 全般的な注意として、ワークショップは連帯責任から、デスマーチになりかねない。クオリティの高い成果が望めないと判断したら、早々に切り上げる勇気が必要である。

◆意思決定型ミーティング
 意思決定型のミーティングの目的はいうまでもなく意思決定である。ところが、人間というのはなかなか初めて聞いてさあ決めてくれといわれても決められない。従って、最初のポイントは事前に十分な情報を与えておくことである。
 どの程度の情報を与えれば十分かということになるが、これは直ぐに議論に入れるだけの情報である。意思決定ミーティングの基本的な流れは、まず、選択肢を抽出し、選択肢を評価し、結論をだして、検証するという流れである。すると議論とは、選択肢を提案できることに他ならない。
 日本のミーティングはよく決めるためのミーティングではないと言われる。なぜか?確かに一つのことを決めるにはいろいろな調整があり、根回しが必要であるという事実もあろう。しかし、何よりも大きいのは、決定が場当たり的なのである。つまり、折角ミーティングを持っても、意思決定の基準が決められていないのである。
 逆にいえばこれが一つのポイントである。意思決定の基準を明確にしておけば、「決まらないものも決まる」。ただし、政治の世界のように、基準に含みを持たせては何の意味もないことになるが。

◆進捗管理型ミーティング
 進捗管理型のミーティングは、情報交換を始めとするいくつかのタイプのミーティングを組み合わせたものである。
 プロジェクトにおいては進捗報告型のミーティングは極めて重要な意味を持っており、いくつかのポイントがある。ここでは2つの側面から考えてみたい。一つ目は進捗報告という作業そのものである。進捗報告という作業は単に報告をするという作業ではなく、もし問題があった場合にはこれからどうすればよいかを「計画」として報告する作業である。したがって、事前にミーティングでの協議事項を十分に吟味し、分析、検討を行い、そのような報告をするための準備を行うことが求められよう。また、この際に重要になるのは、ツールの共有である。プロジェクト全体が共通のツールで進捗の分析、問題の分析、方策の立案を行える状況を作っておく必要がある。
 もう一つの側面はミーティングそのものの運営である。進捗会議があたかも「軍法会議」のような雰囲気になっているプロジェクトをよく見かける。これは明らかに本末転倒している。このようなことをすれば、逆にプロジェクトの実態が把握しにくくなるのは明らかである。このようにならないためには、まず、進捗会議が何のためのものかを周知徹底し、その上で最初の視点、つまり、問題点をみんなで解決するための進め方というのを工夫する必要がある。
参考文献:
八幡紕芦史氏「ミーティング・マネジメント」、生産性出版(1998)
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