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第7回(2002.07.31)
PERT(Program Evaluation and Review Technique)分析 |
◆PERTとCPM
プロジェクトにおいては,各作業(アクティビティ)の所要期間がぴったりと一つに決まることは珍しい.例えば,Webの設計をするのに過去の経験から考えると5日かかる可能性が最も大きいが,うまく行けば4日で終わるだろう.でも,下手をすると7日かかるかもしれないといった感じで考える方が現実的である.ところが,悩ましいことにCPM(Critical Path Method)でスケジュールを作る際にはそのような曖昧さがあるとスケジュールができない.そこで「エイヤー」で決めるという話になる.
このようなときに使える見積もり手法がPERT(Program Evaluation and Review Technique)分析である.
◆PERTとは
よくPERT/CPMという表現がされるので,これらが一つのものだと思っている人が多いが,PERTとCPMは本来違うものである.CPMは確定的なスケジューリング手法であるが,PERTは確率的な手法である.つまり,CPMでは個々のアクティビティの所要期間は確定的に考えるが,PERTでは確率的に考えるのだ.
PERTは1958年に米国の海軍でポラリス・ミサイルを開発する際に考案された手法である.兵器であるのでいつ完成するかは戦局を左右する重要な問題であった.ところが,技術的な不確定要素も大きく,なかなか確定的に計画できなかった.そこで考えられたのがPERTというわけである.
◆3点見積もりがPERTの基本
PERTの考え方は所要期間の3点見積もりである.つまり,各アクティビティに対して,楽観的見積もり値(a),最確見積もり値(m),悲観的見積もり値(b)を設定して,それらから確率計算して全体の工数見積もりを作るものである.所要時間の場合,いくら頑張ってもゼロになることはないので,正規分布では考えられない.そこでβ分布という分布を使う.β分布の考え方の説明は省略するが,β分布に従っている場合,期待値と標準偏差は
期待値= (a+4m+b)/6
分散=(b-a)**2/6
で計算できる.
◆PERTでアクティビティの所要時間を計算する
この式を使って,例えば,最確値が10日,悲観値が13日,楽観値が7日のタスクがあったとすると
期待値= (7+40+13)/6 = 10日
分散= (13-7)**2/6 = 6日
となる.
◆プロジェクト全体の所要時間
プロジェクト全体では,クリティカルパスに並んでいるタスクの期待値と分散を集計したものが工期の期待値と分散になる.
例えば同じタスクが5つ並んでいたとすると,
期待値=50日
分散=30日
ということになる.
◆見積もり精度
ここで見積もり精度を考えてみる.見積もり精度(誤差率)は標準偏差(分散の平方根)を期待値で割ったもので考えればよいので
見積もり精度=(分散**1/2)/期待値
となる.するとアクティビティごとの見積もり精度は
(6**1/2) / 10=0.24(24%)
となる.ところが,全体で考えると,
(30**1/2) / 50=0.11(11%)
となる.つまり,個々のアクティビティの見積もり精度より,プロジェクト全体の工数見積もりの精度の方がよくなるという性質があることが分かる.感覚的に言えば,誤差のプラスマイナスが帳消しになって精度が上がるということで,これは見積もりの方法としてすぐれた方法であるといえる.
◆実際に使うには
実際問題としてメンバーや顧客のマネジメントで忙しい中,こんな計算はできないと思われた方は多いであろう.でも心配する必要はない.例えば,MS Projectには,楽観的見積もり値,最確見積もり値,悲観的見積もり値をアクティビティに設定してやれば,自動的にPERTでクリティカルパスの計算をしてくれる機能がある.エンジニアリング系で比較的経験の豊富なプロジェクトであればCPMで扱えばよいが,例えばコンサルティングプロジェクトとか,製品開発プロジェクトなどではPERTで扱った方がよいと思われる.
というわけで,7月26日にMS Project 2002 という新しいバージョンが発表されたことですし,そろそろ,この辺で,MS Projectを使って自分の仕事の管理をしてみては如何でしょうか?
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参考文献:
佐藤知一:革新的生産スケジューリング入門,日本能率協会マネジメントセンター |
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