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第5回(2002.07.04,7,6改訂)
EVMS(前) |
◆アーンドバリューとは何か
プロジェクトの実施フェーズで,進捗状況の把握が難しいという指摘は古くからあったが,未だに有効な方法は見つからない.最近,この進捗の定量的管理の方法として注目さるようになってきたが,アーンドバリュー(Earned
Value)という概念である.
「Earn」というのは稼ぐという意味である.つまり,稼ぎ高で進捗状況を管理しようとする考え方である.まず,計画を「ベースライン」として金銭換算しておく.これに対して,やはり金銭換算された進捗(アーンドバリュー)を使って定量的な分析でいろいろな情報を得ようとする管理方法である.一連の管理システムをアーンドバリューマネジメントシステム(EVMS;Earned
Value Management System)と呼ぶ.
アードバリューがプロジェクトマネジメントで進捗管理に使われるようになったのは,1967年に米国国防省の調達規則DoDI7000に使われだしたのが最初である.もう35年前であるが,長い期間普及しなかったのは,その複雑さにあるという説が有力である.確かに,複雑である.
以下では,例を用いて,アーンドバリューマネジメントシステムを見ていこう.
◆計画価値
Webサイトを作るとしよう.担当はAさんで10ページのデザイン,製作を行う.1ページあたり8時間かかる予定で,1日8時間の作業をするので,予定通りいけば10日間で終わることになる.Aさんの時給は2000円である.
さて,このときに,成果物単位量(つまり,Webページ1ページ)を完成するために必要な金額は8時間×2000円である.全体の達成量は10ページなので,
8×2000×10=160000円
だけの価値を生み出すことになる.これ計画された全体価値である.計画された価値はベースラインと呼ばれることもある.
作業は順調に進み,5日後である.この時点でのベースラインとなる計画価値(PV;Budgeted Cost Work Scheduled)は
PV=8×2000×5=80000円
である.
◆達成価値(アーンドバリュー)と実経費
これに対して,実際に5ページのデザインと製作が終わったとしよう.すると,Aさんは実際に
8×2000×5=80000円
だけの価値を生み出したことになる.これを達成価値(EV;Budgeted Cost Work Performed)と呼ぶ.アーンドバリューというのはこの値のことである.
さて,このときに,実際に使われた費用は
8×2000×5=80000円
で,これを実経費(AC;Actual Cost Work Performed)という.
さて,6日目にAさんは体調を崩し,出勤できなくなった.代わりにBさんが作業をすることになった.BさんもAさん同様Webデザインのプロであるが,経験が浅く,製作の部分でAさんと較べると若干能率が劣る.その代わり,時給は1500円である.Aさんは3日間休み,その代わりにBさんが作業をした.8日目が終わった時点で7ページしか終わらず,まだ,3ページが残っている.このときに,同様の分析をしてみよう.
まず,8日目が終わった時点でのベースラインは8ページで
PV=8×2000×8=128000円
である.ところが,達成価値は
EV=8×2000×7=112000円
である.また,実経費は,Aさんの5日分とBさんの3日分で
AC=5×8×2000円+3×8×1500円=116000円
である.
このときにこの3つの値を使ってスケジュールとコスト分析を行う.
◆スケジュール差異
まず,スケジュール差異(SV;Schedule Variance)を求める.スケジュール差異は計画したスケジュールに対して遅れているか進んでいるかである.
SV=EV−PV=112000−128000=−16000円
である.つまり,スケジュールは16000円分遅れていることになる.
◆コスト差異
次にコスト差異(CV;Cost Variance)である.コスト差異は予算に対してオーバーしているかどうかである.
CV=EV−AC=112000−116000=−4000円
で4000円分だけ予算超過していることになる.
(以下,次回に続く)
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◆お奨め図書
EVMSの勉強には,
能沢 徹:図解 国際標準プロジェクトマネジメント―PMBOKとEVMS,日科技連出版社(2000)
がお奨めです. |
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