第6回(2002.07.04,7,6改訂、2004.1.9改定) 
EVMS(後)
 
◆スケジュールとコストの効率を求める

 さて,次は効率である.
 スケジュール効率(SPI;Schedule Performance Index)はスケジュールが予定より,どの程度の割合進んでいるか遅れているかを評価するものである.

 SPI=EV/PV=112000/128000=0.88

となる.SPIに対しては

 SPI>1.0 スケジュールが予定より進んでいる
 SPI=1.0 予定通り
 SPI<1.0 スケジュールが予定より遅れている

ということが分かる.つまり,今回のケースの場合,予定より12%スケジュールが遅れていることが分かる.
 次にコスト効率(CPI;Cost Performance Index)はコストが予定より高いか安いかを評価するものである.

 CPI=EV/AC=112000/116000=0.97

となる.CPIからも同じように

 CPI>1.0 予定よりコストが安い
 CPI=1.0 予定通り
 CPI<1.0 予定よりコスト超過

ということが分かる.つまり,今回の場合,予定より3%コストが余分にかかっていることが分かる.

◆完成を予想する
 さて,SPIやCPIから何が分かるのだろうか?
 まず,一つ目はスケジュールについてである.完了時のスケジュールは
  10日/0.88=11.4日
となることが分かり,このままでいけば1.4日遅延すると予想される.では,予定通りに完成させるにはどうすればいいか?追加要員が必要になるが,何人必要かという問題になる.このためにもう一つ新しい変数で必要スケジュール効率(TC_SPI)という変数を導入する.これはSPIと同じ要領で残りの作業量を残りの計画値で割ればよい.

  (160000−112000)/(160000−128000)=1.5

となる.つまり,1.5倍の効率が必要になるわけだが,現在の効率は1.0ではなく,0.88であるの改善率ということで

  1.5/0.88=1.70

となる.つまり,Aさんと同じ人が1.7人いれば期間内に計画通り作業を終わることができるとわかる.

 二つ目はコストである.完了時のコストは

  EAC=AC+(BAC−EV)/CPI
     =116000+(160000−112000)/0.97=165484
   ※BACは完成時の予算=160000円

になる.つまり,5484円の予算超過ということになる.
 ただし,EACの求め方は3通りあり,どの方法がよいかは諸説がある.

@EAC=BAC/CPI
AEAC=AC+(BAC−EV)/CPI
BEAC=AC+(BAC−WCWP)

@は残りの作業が同じ効率で進むと仮定した場合の最終コスト予測になっている.Aは上で説明したACをベースにして残り作業を見積もりしなおした最終コスト予測である.Bは残りの作業が予定通り進むと考えた場合の最終コスト予測である.
 実際にEVMSでどの値を選ぶかは,リスクマネジメントの範疇の問題になる.
 これらのパラメータの間の関係を整理するとのようになる.

◆EVMSによる報告
 アーンドバリューを使うことにより,進捗報告のスタイルを変えることができる.8日目の報告を例にとってみよう.
【従来の報告】
 10ページ中,7ページ完了.少し遅れ気味だが全力を尽くして予定通りに終わる

**EVMSによる報告**
 SV=−16000円で,スケジュールは16000円分遅れている.
 このままのペースでいくと,完了にはあと4.5日かかる(2.5日の遅延)
 CV=−4000円で,コストは4000円超過している.
 このままのペースでいくと,総コストは165484円になり,5484円の予算オーバーになる.

 最後にアーンドバリューによる進捗マネジメントの方法を整理しておくと下図のようになる.




◆お奨め図書
EVMSの勉強には,
 能沢 徹:図解 国際標準プロジェクトマネジメント―PMBOKとEVMS,日科技連出版社(2000)
がお奨めです.
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読者からのコメント
参考にさせていただいているのですが疑問点がいくつかあります。よろしくお願いいたします。
計算がおかしいです。
◆完成を予想する
 完了時のスケジュールは
  10日/0.88=12.5日→11.37日ではないですか。
0.88のSPIで割ることはおかしいのでは?
そこで、8日から3ページをBさんの効率2/3→0.667で計算すると
3÷2/3→4.5となります。これが答えではないですか。
ご連絡お待ちします。
青井謙一(48歳・三菱樹脂(株))
ご指摘ありがとうございます。計算が間違っていますので、
  10日/0.88=12.5日→11.37日
の部分、修正しました。
 後半部分のご指摘ですが、ご指摘の趣旨は分かりますが、EVMの考え方だと、この記事の計算のようにSPIで効率を考える方が適切だと思います。これが、小さなプロジェクトではうまく適用できない理由の一つでもあります。
好川哲人
『  1.5/0.88=1.70
となる.つまり,Aさんと同じ人が1.7人いれば期間内に計画通り作業を終わることができるとわかる.』
の『Aさんと同じ人が1.7人』は、『Bさんと同じ人が1.7人』の間違いではないでしょうか?
残り3ページでしたらAさんなら3人日でできるはずです。2日なら(Aさんと同じ人を)1.5人雇えば終わるはずです。
長谷川(35歳、コンサルタント)
いつも勉強させていただいています。有益な情報をありがとうございます。
とてもよくわかりました
匿名さん

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