第38回(2007.04.17)
システム思考
プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木道代 
 

◆システム思考
前回は、どのようにコスト・ベースラインを作成するかを取り上げました。

第37回 コストベースライン(3)

今回は、コスト・ベースラインの話とは全く別なのですが、システム思考を取り上げます。
PMBOKには、スコープ知識エリアの「スコープ定義」のプロセスのツールと技法として、プロダクト分析があります。以前、プロダクト分析の中のシステム工学を何回かに分けて取り上げてみました。

第21回 システム工学
第22回 システム工学(2)
第23回 システム工学(3)

システム工学では、問題に対して全体を統合的に考えること(システムとしてとらえる)によって解決していきます。よく例に挙げられることなのですが、交通渋滞の交差点を解消するためにその交差点の信号を制御したら、かえって渋滞がひどい結果となったということです。それは、その信号だけを制御したためで、周辺の信号を制御しなかったためにいろいろな交差点で矛盾が発生し、かえって全体の流れが悪くなったためです。

このように問題点のすぐそばにある解決策を実行することによって、かえって全体を悪くすることがあるため、問題領域をシステムとしてとらえて、全体を統合的に考えることが重要と考えています。

システム思考では、

「昨日の解決策が今日の問題を生む」

と言うそうです。

例えば、交通渋滞の話ですが、道を拡張するという解決策を実施したとします。
問題点のすぐそばに解決策を見出したということです。
すると、その結果として、当然のことながら、その道の車の流れが良くなります。
ですが、いつの間にか、また渋滞するという場合が往々にしてあります。しかし、その原因は、解決策とその作用の結果という関係だけを見ているとわからない場合が多いようです。

システム思考では、問題を1つの現象(データ)としてとらえずに、問題のパターン・構造をシステムとして考え、そのパターン・構造を作用とその結果として図(因果ループ図:次回に詳しく説明したいと思います)に表していきます。
例えば、交通渋滞の話ですと、次の構造を図で表現します。

1.道を拡張する

2.車の流れが良くなる

3.流れが良くなったことを聞いて、この道を通る車が多くなる

4.車の流れが悪くなる

5.道を拡張する

と、このようにどんどん道を拡張する必要が出てきてしまいます。それで、ループ図なのですね。

この際に考えることは、この構造は、どのタイミングで発生するかということです。
1.→2.はすぐ発生しますが、3.は少し遅れて発生し、3.→4.もすぐ発生します。これらを車の流れを縦軸にして時系列(横軸は時間)で考えて、変わるタイミングについて構造(その原因)を考えていきます。例えば、他の道を通っていた人が、すいている道のことを聞いて、通る道を変えるタイミングです。

このように、因果ループ図と時系列グラフでシステムの構造を認知し、最も小さな力で大きな解決を生む点(レバレッジ・ポイント)を探し、その解決策を考えていくためのツールがシステム思考です。

次回に、もう少し、レバレッジ・ポイントや因果ループ図について、詳しく取り上げます。

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PMBOKは、米国PMIの商標(R)です。

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