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第85回(2005.11.02) 
チーム指向(2)〜ITは例外か?

◆ITは例外か?

前回、ワーキンググループでは能力を超えた課題に対応できないという話をした。これに対して、IT系の方から、プロジェクトにはメンバーとして開発を担当している人もいるので、1+1が3になるという議論は成り立たないのではないかという意見を戴いた。今回はちょっと脱線してこの問題について議論をしておきたい。

ITのプロジェクトの場合、ピーク時には数百と言う要員を抱えているプロジェクトは珍しくない。そうなると、管理スパンの問題からも、分業をして、担当ごとに仕事を進めていく。この際に、スキルに注目して、必要なスキルを持った人を担当させていくという考え方で進めていく。


◆垂直分業と水平分業

この中で分業には2つの着眼点がある。一つは垂直の分業で、工程ごとに分業をする。異なるスキルの作業を分業していることになる。もう一つは水平の分業で、工程内で分業をする。これは、一つの仕事を一人ではできないので、それを何人かで分担して行う分業である。


◆垂直分業におけるチーム

垂直の分業においてチームが有効なことは明らかである。上流工程の作業を、上流工程の作業者だけではなく、下流工程の作業者とコラボレーションすることにより、パフォーマンスが高く、開発効率の高い設計が可能になる。この有効性は、例えば、自動車開発における「サシミ」型開発(サシミのように工程の一部をオーバーラップさせていく開発方法)の効果を見ても明らかだし、マイクとソフトの開発方式を見てもよくわかる。

ただし、注意しておきたいのは、日本のIT企業の場合、工程がキャリアパスになっている企業が多い。つまり、プログラマからキャリアをはじめ、徐々に上流工程の担当になっていく企業が多い。このような場合には、ある工程を担当するエンジニアは、自分の担当する工程より下流側の工程を経験していることになる。従って、あえてチームでコラボレーションする必要はないという理屈になる。これは一理ある。しかし、サシミ方式がコミュニケーション効果もあることを考えると、一概にはムダだとは言い切れないことも事実である。


◆水平分業におけるチーム

次に水平分業においては、チームは必要ないかということだが、結論としては必要である。ソフト開発でいえば、XPなどの方法論はチームドリブンである。これは、エンジニアの創造性を引き出し、生産性を上げる効果がある。同じような話に、自動車業界ではボルボ生産方式(ワークショップ生産方式)がある。これはラインで工程ごとに分業化するのではなく、複数の工程をまとめて複数の作業者の協同作業として行う方式である。自動車のような規格品の場合、このやり方には賛否両論があるが、生産性は高くなるという。

ただ、後者の場合には、不確実性が小さい場合が多い。システム開発に限らず、一般的に製品開発では、工程が進むにつれて不確実性が小さくなる。プロジェクトマネジメント的にはリスクが小さくなるといってもよい。一般的に残る不確実性は技術的な不確実性であることが多い。設計した仕様が実現できるかどうかという不確実性である。この不確実性は垂直分業の比率が高くなればなるほど、小さくなる。後工程のことを考えて設計するからだ。上に述べたように、日本では、上流工程のエンジニアは下流工程の経験者であり、ゆえにこの不確実性がかなり除去されている。つまり、実装できるような設計になっていることが多い。


◆現時点で水平分業におけるチームの必然性は低い

一般論として、チームの必要な理由は不確実性に対する適切な対処をすることであり、不確実性がなくなればなくなるほど、分業がしやすくなる。

その意味で、ITの場合、実装段階ではチーム的な発想よりも、ワーキンググループ的な発想の方が重要である。一方で、アウトソースの活用などにより開発経験の乏しいSEやプロジェクトマネージャーが増えているという事実もある。この点を考えると、今後、下流工程の自由度が上がり、創造的な仕事が要求されるようになる可能性もある。

ITプロジェクトにおけるチームの認識は以上であるが、この点も踏まえて、この後の議論を進めていくことにする。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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