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第252回(2011.05.09)
場としてのプロジェクト(1)〜プロジェクトとステークホルダ

◆プロジェクトという活動

PMBOK(R)では、プロジェクト・ステークホルダを、プロジェクトという活動に関与する人と定義している。プロジェクトマネジャーもプロジェクトメンバーもみんなステークホルダである。

プロジェクトに対してプロジェクトマネジャーを指名し、そのプロジェクトマネジャーの行う活動というイメージを持つ人が多いが、実はそうではない。プロジェクトには、プロジェクトに投資する人が出す目的があって、その目的に関心や利害関係を持つ人が集まり、役割を決めて目的を達成するというのがイメージに近い。

役割の中では、やや特別な役割となるのが、プロジェクトスポンサーである。プロジェクトスポンサーはプロジェクトを構想し、プロジェクトの目的を決定し、その目的を達成するためにプロジェクトに投資(資源提供)をする。

これがもっとも一般的なプロジェクトのイメージである。


◆プロジェクトは誰のものか?
プロジェクトをうまく行うために、プロジェクトスポンサーは目的達成の視点から、プロジェクトを取り仕切る役割を選ぶ。それがプロジェクトマネジャーであり、一旦、計画を承認したのちは、計画を実行するために必要なすべての権限をプロジェクトマネジャーに委ねる。

したがって、プロジェクトの計画以降でみれば、冒頭に述べたようにプロジェクトマネジャーが中心になって行う活動というイメージになる。しかし、上の説明からわかるように、プロジェクトはプロジェクトマネジャーのものではない。

あえて言えば、以前、PMBOK(R)ではプロジェクトスポンサーの代わりにプロジェクトオーナーという言葉が使われていたことから察せられるように、プロジェクトスポンサーのものであるが、そもそも、オーナーからスポンサーに変わったのは「プロジェクトは○○のもの」という概念が薄くなってきたので、プロジェクトスポンサーという言葉が使われるようになってきたと思われる。

つまり、プロジェクトにおいて、資金提供をするというのは一つの役割に過ぎないという風に考えられるようになってきた。


◆顧客の変容

ちょうど似ているのは会社はだれのものかという議論である。株主のものか、経営者のものか、社員のものか、それとも社会的なもの(顧客や市民のもの)かという議論だ。(欧米では)以前は明確に企業は株主のものだと考えられていた。ところが、株主のものだと考えることが、必ずしも株主の利益にならなくなってきた。会社は株主のものであると同時に、社員のものであり、顧客のものであり、さらには社会的なものであると考えた方が結果としてパフォーマンスが上がり、会社のオーナーである株主のベネフィットも大きくなると考える人たちが増えてきた。

プロジェクトでもそうだ。プロジェクトはプロジェクトオーナーのものであり、オーナーがプロジェクトの目的を決め、担当するプロジェクトマネジャーを取り仕切るよりは、オーナーは場を作り、資金を提供し、そこに社員や顧客、パートナーを巻き込んでいった方が結果としてベネフィットが大きくなると考えるようになってきた。

この背景には、顧客の変容がある。顧客はかつて、プロジェクトに要求を伝え、プロジェクトがそれを実現してくれれば満足していた。ITのように直接受注するプロジェクトでも、商品開発のように市場から顧客の声を聞いて進めるプロジェクトでもそうだった。

ところが、今の顧客はそれだけでは満足しなくなった。開発のプロセスにおいて、何らかの「体験」をすることを求めている。そして、そこで良質の体験をした商品や企業を支持するようになってきた。


◆重要性を増す「場」としてのプロジェクト

このような変化の中で、プロジェクトは単に開発の手段ではなく、社員だけではなく、顧客やさらにはパートナーが集う場として重要性を持つようになってきた。この意味で、プロジェクトスポンサーのものでもないし、ましてやプロジェクトマネジャーのものでもない。顧客のものでもない。だれかが支配し、コントロールするものではなく、「場」となってきた。そのことを象徴するのが、プロジェクトオーナーという言葉から、プロジェクトスポンサーという言葉への変化だと言える。

スポンサーというと、日本語ではテレビ番組のスポンサーを連想することが多いと思う。テレビ番組のスポンサーは、その番組の後援者であり、その番組を成功させる。そのことによって直接、利益を得るわけではなく、その番組が成功することによって自らの商品の宣伝が多くの人にできたり、あるいはブランドイメージが向上するというベネフィットを得る。

プロジェクトスポンサーも基本的には同じような存在である。プロジェクトに投資をすることによって、プロジェクトを成功させ、その成功によって組織にベネフィットが生まれる。

何の話か分からないままに、ここまで読み進めて戴いた方もあると思う。これから、少し、戦略ノートでしようと思っている議論の前振りである。

このような時代において、プロジェクトマネジメントは旧態依然としていていいのかという議論をしたいと思っている。とりあえず、今回はここまで。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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