第172回(2007.12.12)
Take it easy !

◆「完璧」を定義するなら・・・

前回の戦略ノートに「完璧なリーダー」という表現をしたところ、ある方から定義を問われた。あの人は完璧だという場合、結果として失敗しないという使い方をする場合があるので、ひっかかったそうだ。

この言葉を使った意味をあえていえば結果というではなく、コンピテンシー的な意味合いで完璧という意味だ。たとえば、PMstyleでいえば

・目標達成のための自己の責任を明確に自覚し,結果に対して責任のある行動をとる
・目標の達成を阻害するさまざまな抵抗にひるまず,次々と新たな行動を起こす
・目標達成を阻害する問題を迅速かつ,適切に処理する
・リスクの高い仕事に挑戦する,あるいは,権力のある人に立ち向かう
・ストレスやプレッシャーの中でも自己を安定した状態に保つことができる
・顧客を大切にし,顧客の関心に最大の注意を払う
・顧客にとっての真の利益を察知し,顧客の要望とのギャップを埋める行動をとる
・メンバーを効果的にともに働くように導いたり,動機付けを行う
・先々の展開を予想し,目標達成にむけて戦略性のある発想ができる
・リスクをきちんと認識し,そのリスクを踏まえた発想をする
・複数のものごとのバランスを保ちながら,全体を進めていく
・原因と結果の間の関係を突き止め,それに基づいて考えを展開していくことができる
・ある分野の現象を,まったく異なる分野の現象に置き換えて考える
・新たな発想で事実や技術の活用を考える
・起こっていることをきちんと観察し,それを多面的に比較し,検討することができる
・ものごとを体系的に捉え,曖昧さを排除し,詳細にまで注意を払いながら行動する


といった行動をコンピテンシーとしているので、これらの行動が常にできることが完璧という意味になる。もちろん、そのためには、相応の体系的知識も、ヒューマンスキルも、臨床知も必要であることは言うまでもない。


◆言霊としての完璧

ただ、本当にいいたかったのはそういうことではない。リーダーという言葉には明らかに言霊がある。問題としたのは、言霊としての完璧である。

ちょっと脱線するが、「先生」とか、「○○長」とかといった言葉を考えてみてほしい。何も言わずとも、これらの言葉は、品行方正とか、完璧といったものを連想させる。たとえば、学校の先生を考えてみると、子供の手本にならないことは絶対にしないというイメージを持っている。

周囲の人は、そのように律してほしいわけだ。先生は人を預かるのだから、人の手本になるようにやはり厳しく自らを律っしてほしいと思うわけだ。

ところが彼らも人間である。「先生も人間だよね」と言いたくなるし、自分自身もそう思っている人が少なくない。

にも関わらず、言霊があるので、周りはそうは思わないし、本人も内心はともかく、正直にそれをいうことは難しい。批判にさらされるという以外に、プライドの問題もある。

考えてほしいことは、このような状況が生み出している事柄だ。このような状況では、自分たちの仕事を極めて限定的にとらえる傾向がある。つまり、完璧にできる範囲しかやらなくなるのだ。たとえば、学校の先生であれば、知識を教えるのは自分たちの仕事だが、躾は自分たちの仕事ではないので家庭でお願いしますとなる。

話を元に戻す。同じような意味で、「人の上に立つ」を使うときにも「完璧」という言霊があるし、リーダーにも「完璧」という言霊があるように思える。前回問題提起したのは、はたしてこれがよいことかということ。

前回、ロバート・ケリーの調査を紹介したように、リーダーの平均的な業績というのは20%にすぎない。

米国人は、ゆえにフォロワーシップの業績をいかに引き出すかがリーダーの役目だと考える。ファシリテーションである。

日本人は、ゆえにフォロワーシップが発揮される環境をいかに作り出すかがリーダーの役目だと考える。スポンサーシップである。あるいはサーバントリーダーシップだといってもよい。


◆Take it easy

もう引退してしまったが、岡部幸雄という日本競馬史上3本の指に入るだろうと名騎手が走る前に馬にかけていた言葉が「Take it easy」だという。馬も騎手もリラックスして初めて、勝てるのだという。競馬で、騎手が100%完璧に騎乗することはないという。馬と人間の意思疎通はあるというが、人間が思ったように馬が動くわけではない。すると、偶発性が出てくるので、完全な騎乗(コントロール)は難しい。

そこで、完璧なコントロールを求めるよりも、馬に能力を発揮させる方法を考える。
プロジェクトマネジャーに求められているのも同じことではないだろうか?言霊に振り回されないことが重要だ。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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