第138回(2007.03.27) 
ファシリテーティング・プロセス

◆ファシリテーティングプロセスとは

ファシリテーティングプロセスと言われて何のことだか分かるだろうか?プロジェクトファシリテーションではない。

PMBOK(R)では2004年版(第3版)から消えてしまったが、2000年版まではプロセスにコアプロセスとファシリテーティングプロセス(補助プロセスと翻訳されていた)の2つの種類のプロセスがあった。当時は、「ファシリテーション」という言葉が今ほど普及していなかったが、今であれば、ファシリテーティングプロセスと表現すると意味するところが明確に分かるだろう。

コアプロセスとは、スコープ、タイム、コストに関わるマネジメントプロセスであり、それ以外のプロセスはファシリテーティングプロセスである。この区分がなぜなくなったのかは、あとで述べるが、このプロセス概念はマネジメントモデルとして非常に分かりやすい。

ファシリテート(facilitate)とは、日本語で言えば「支援する」、「促進する」といった意味である。


◆ファシリテーティングプロセスは目標達成支援手段

2000年版までのPMBOK(R)のマネジメントモデルを言葉で表現すると

プロジェクトにおけるスコープ、時間(スケジュール・効率)、コストの目標の達成を達成するために、品質、調達、コミュニケーション、リソースマネジメント、リスク監理などを体系的に支援し、プロジェクトプロセスを促進させること

といえる。つまり、目標とするスコープ、納期、予算をクリアするために、適正な(目的に適う)リソースをタイムリーに確保する、調達の方法を工夫する、成果物の品質を管理する、コミュニケーションを計画的に行う、ステークホルダの協力を引き出す、チームを上手に動かす、などに加え、目標に対するリスクをしっかりと管理するといったモデルになる。

簡単に言えば、ファシリテーティングプロセスは目標達成のための支援手段である。

ここで多少、微妙なのは品質マネジメントは目標か手段かという議論だ。日本人的感覚でいえば、「品質絶対」であるので、品質は目標に入れたくなるが、品質はあくまでもスコープの一要素であり、品質マネジメントはあくまでもスコープ達成のためのファシリテートの手段だという方が適切だろう。

もう少し、具体的に考えてみると、ファシリテーティングプロセスとはどのような役割を果たすプロセスだろうか?ベースライン計画に対して、実績が乖離してきたときに、是正処置を行い、計画に引き戻す。例えば、スケジュールが遅れた場合には、スケジュールを計画通りに戻すような方策をとる。その方策には、品質を早く収束させる、コミュニケーションを適切に行う、チームパフォーマンスを上げるといったような処置がある。


◆ファシリテーティングプロセスは問題解決プロセス

このようにマネジメントモデルを設定した場合、ファシリテーティングプロセスは一種の問題解決プロセスであるが、直接的問題解決ではなく、支援的問題解決である。直接か支援かというのは、その手段をとることによって問題が解決されるという論理的な根拠があるかどうかである。問題解決策とはその策ひとつで問題を解決できるもの(その根拠があるもの)で、支援というのは、「ひょっとすると効くかもしれない」という程度の根拠か、あるいは、少しは問題の緩和に役立つだろうという程度の効果であることを意味している。

また、このプロセスの特徴は、問題が顕在化した場合にのみ、想定される問題解決のプロセスではなく、潜在的問題がある、言い換えるとリスクレベルの問題がある場合も含めた問題解決プロセスであることだ。潜在的問題に対しては、リスク対応策として、ファシリテーティングプロセスのマネジメントを行うという位置づけになる。例えば、潜在的問題として、メンバーの士気の低下によるスケジュール遅延の可能性があるとすれば、それを防ぐためにコミュニケーションを行い、プロジェクトチームに対するコミットメントを強めていくようなコミュニケーション計画を作るといった方策が考えられる。これがリスク対応策になる。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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