第135回(2007.02.27) 
アカウンタビリティを高めるプロジェクトマネジメント

このタイトル、ちょっと迷った挙句に決めた。なぜかというと、そもそも、プロジェクトマネジメントとはアカウンタビリティを高めるために行うべきものであり、特別な方法などないからだ。

 第131回 レスポンシビリティとアカウンタビリティ

をもう一度読んでいただければわかるが、アカウンタビリティを確保するためのポイントは

・目標との差異を数値で報告すること
・結果を分析した振り返りが含まれること

であり、これはプロジェクトマネジメントの基本中の基本である。したがって、アカウンタビリティを高めるには、プロジェクトマネジメントの教科書どおりにやろうというのがすべてである。

だが、あえてこのテーマを取り上げているのは、現実にはプロジェクトマネジメントでアカウンタビリティが確保できていないケースが多いからである。逆にいえば、プロジェクトマネジメントをしているといながらしていないといってもよい。

アカウンタビリティが確保できないケースを分析すると、理由はコミュニケーション(マネジメント)ではないケースが多い。特に日本企業においては、顔を合わせていれば安心してしまう傾向がある。これは一理あることは確かだ。プロジェクトマネジャーがメンバーの進捗を見るせよ、顧客がプロジェクトの様子を見るにせよ、顔を合わせたときに感じるものというのはかなりの情報量である。

言い換えると、「人を管理」するやり方である。このやり方が有効なのは、当事者が責任をきちんと果たせる場合にある。極論すれば、定型業務として、同じことを同じ時間で繰り返し行うライン作業のような業務はこの方法でほとんど管理できる。

ところが、非定型業務になるこのような方法では管理できない。管理した気分になっているマネジャーも少なくないが、実質的には管理できていない。

管理をするということは、予定通りに業務が完了することについて、見通しをもち、責任をもつということに他ならない。ところが、非定型の業務で人を管理していたのでは、見通しは「彼ならがんばってくれるだろう」という以外にはない。これでは、成果に対する責任も持てない。もし、プロジェクトが予定通りの成果を達成できなかった場合には、自分としては叱咤激励するという責任は果たしたのだが、メンバーのスキル不足だったとしかいいようがないのだ。

では、何が足らないのか?コミュニケーションのベースになり、また、見通しのベースになるベースライン計画である。プロジェクトマネジメントを導入した企業では(ベースライン)計画は作っているが、その計画を使ったコミュニケーションが行われていないケースが多い。ゆえにコミュニケーションの問題だと考え勝ちなのだが、コミュニケーションよりは計画に問題がある場合が多い。つまり、コミュニケーションのベースになりうるような計画が作られていないのだ。それがよくわかっているので、コミュニケーションの際に参照する計画はマイルストーンレベルのものだけということになる。

スケジュールを念頭において話をしてきたが、これは、SQCDすべてについて当てはまる。アカウンタビリティを高める第一歩は、計画をベースにして日々、最悪でも週間の進捗と予定について議論できるような計画を作ることである。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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