第132回(2007.01.30) 
プロジェクトに追われるプロジェクトマネジャー

◆失敗は繰り返す

戦略ノート第55回で、PM学会の副会長でいらっしゃる冨永章先生の

「IBMでは過去12年、約3000人分のデータを採ってきた。それによると、失敗した人は、次のプロジェクトでも失敗する可能性が大きいという結果が出ている。本当に失敗は役に立つのか」

という発言を紹介した。

第55回 「失敗は繰り返す」


この発言に関連してこの記事に書いたことはまだ、ぶれていないが、ずっとこの議論は僕の中で気になっている。単にPMコンピテンシーが低いだけの話ではないように思えたからだ。もう3年近く前のことだ。

その後、そのような問題意識を持って多くのプロジェクトマネジャーの方と接してきて、確かに冨永先生の言われている現象はあることは確信できた。そして、その原因にぼんやりと答えらしきものが得られたような気がしている。


◆プロジェクトに追われるというキーワード

多くのプロジェクトマネジャーが同じようなことを考え、同じような行動をしている。しかし、うまくいく人といかない人がいる。結果として大変な差が出る。この違いというのはいろいろと考えられる。

 ・先見、鳥瞰
 ・信念
 ・リーダーシップ

など枚挙に暇がない。その中であるプロジェクトマネジャーと会話をしていて、ひとつ気になるキーワードを思いついた。それが、「プロジェクトに追われる」である。


◆なぜ、プロジェクト追われるのか

なぜ、プロジェクトに追われるのか?この問題を考えるに当たって、プロジェクトに追われるの逆を定義しておく。これを「プロジェクトをコントロールする」と考えることにしている。

プロジェクトのコントロールはどのようにコントロールするのか?というのは結構、難しい質問である。ベースライン計画を作るのはいいとしても、ベースライン計画を作るだけではコントロールはできないことはいうまでもない。もちろん、ベースライン計画を作り、あとは「気合だ!」というプロジェクトマネジメントバブルのときに出てきたやり方でもない。プロジェクトをコントロールするには、2つのマネジメントが必要である。

ひとつは、目標のマネジメントである。目標を合理的に設定し、うまく切り替えながら、プロジェクトの最終目標に持っていくマネジメントだ。もうひとつは、目標達成支援のマネジメントである。これはプロジェクトマネジメントでは、ファシリテイティングプロセス、あるいは、補助プロセスと呼ばれる。


◆管理だけでは「プロジェクトに追われる」

さて、そのように考えたときに、プロジェクトに追われるというのは、このマネジメントをしていないことが原因だと考えるのが自然である。マネジメントをしなければ、何をしているか?「管理」である。

管理とは状況を把握し、見守ることである。管理というのはそもそも、決められたことを決められたとおりに行うことを前提にしている。言い換えると問題が発生しないことを前提にしている。

問題が発生した場合には、問題の管理は行うが、問題解決、あるいは、その支援は行わない。従って問題が発生した後の対応になり、プロジェクト(問題)に追われるのだ。重要なことはマネジメントを行い、発生しそうな問題を取り除いていく、問題が起らないようにメンバーを指導したり、動機付けていく。万が一、問題に発展しても想定内のものとして対応する。このようなマネジメントができて初めてプロジェクトをコントロールすることができる。


◆プロジェクトマネジャーの成熟度

コントロールするか、追われるかの境目はどこにあるのか?この問題に対して、プロジェクトマネジャーの成熟度モデルを提案している。興味がある人はこちらを読んでみてほしい。

プロジェクトマネジャーの成熟度モデル

分かれ目は、決めたことをきちんとできるかどうかである。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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