第121回(2006.10.24) 
受動的リスクと能動的リスク

◆はじめに

この辺からなんとなく、リスクの話が続いています。

 金はいくらでも出す!

今回もリスクの話です。

◆リスクをとる

「リスクを取る」という言葉がある。「虎穴にいらずんば虎子を得ず」といった意味合いのことだ。プロジェクトにおいてリスクマネジメントというと、「如何にリスクをとらないか」という視座で行うことが多い。どこが違うのか、今回は、これを考えてみたい。

プロジェクトを失敗させないということを考えるとある意味で当然のことだといえる。

ただし、これには条件がある。常識的な前提条件が成立し、目標も常識の範囲内である場合だ。しかし、常識的でないケースは必ずしも少なくない。例えば、プロジェクトマネジメントの前提条件には

 必要に応じてプロジェクト要員の確保が可能

という前提条件がある。この前提条件が成り立っていれば、作業見積りをして、スキルにあわせたリソース配置を行い、作業を進めていくというマネジメントができる。
その中で、見積り精度が悪いといった問題があったとしても、リスクとして誤差を管理していくことで何とかプロジェクト目標を達成できるだろう。


◆リスクをとるしかないケース

しかし、一旦、この前提条件が崩れてしまうと、PMBOK(R)のようなオーソドックスなプロジェクトマネジメントは成立しない。そもそも、作業工数を見積もること自体の意味が薄れてくるし、計画的に行う意味がなくなる。すると、できる作業からやっていく中で、何とかするといったゲリラ的マネジメントが必要になるだろう。

もう一つは目標が厳しい場合だ。例えば、極端に納期が短い場合。このような場合には、あらゆるものがリスクになる。これに対して一つ一つ、対策を設定みても始まらない。どこかにリスクを集約してしまって、そのリスクの克服をすることだ(ただし、こうなってくると、もやは、リスクとは言えず、課題なのかもしれないが)。

例えば、とにかく納期に見合う要員数だけを確保する。普通に考えれば、これは火に油を注ぐような結果になることが多い。スキルが足らない、チームとして活動できない、チームリーダーが不足するなど、あらゆる問題が噴出していく可能性がある。しかし、逆に言えば、この要員に起因するリスクを何とか押さえきれば、プロジェクトの目標をクリアすることはできるのだ。


◆戦略的リスクマネジメント

このように、前提条件が怪しかったり、あるいは、目標が厳しい場合には、受動的なリスクだけに対応していても拉致があかない。「座して死する」結果になるだけだ。

そこで、受動的にリスクに対処するのではなく、能動的にリスクをとって、戦略的にリスクに対処していくことが重要である。特に、上の例に見られるように、戦略性が重要である。つまり、分散しているリスクを転嫁することによって、プロジェクトマネジメントとして扱いやすい領域に集中させ、そのリスクに対処する。

このような戦略的対処をすると、失敗すると悲惨な結果になる。なおかつ、受動的なリスクマネジメントの場合には、「運が悪かった」で済むことが多いが、能動的、戦略的なリスク対応をすると「やり方を間違った」ということで責任を問われるリスクも抱えることになる。

座して死を待つか、失敗を覚悟で生きることにこだわるか。プロジェクトマネジャーの真価が問われるところである。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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