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第108回(2006.07.18)
プロジェクトマネジメントはどこに向かうのか(その2)〜スーパーPMは必要か |
◆ベストプラクティス
いつの間にか、プロジェクトマネジメントの強化=プロジェクトマネジャーの強化だという図式ができてしまった感がある。この図式は正しいのか。そもそも、なぜ、こんな図式が見られるようになってきたのか?
理由ははっきりしている。プロジェクトマネジメントの「絶対的なベストプラクティス」の中に、「スーパーマンのようなプロジェクトマネジャー」(ここではスーパープロジェクトマネジャーと呼ぶ)というのがあるからだ。このベストプラクティスは正しい。かつ、他のベストプラクティスに較べると明快であるし、成功の確度も高い。
しかし、残念なことに、このベストプラクティスのケイパビリティ(実行能力)を持つ組織はほとんどない。ゆえに、ケイパビリティをつけることが最大の課題だと考え、上のような図式、「プロジェクトマネジメントの強化のためにプロジェクトマネジャーを鍛えよう」が生まれた。
組織側の視点からみればだいたいこういうことだ。しかし、この図式は空理空論に近い。
◆ガバナンスに注目しなくては何も見えない
なぜか?それは「スーパープロジェクトマネジャー」の役割と能力にある。
話は変わるが、前回、紹介したPMI(R)の新しい標準「The Standard fro Portfolio Management」、「The
Standard fro Program Management」に共通の面白い図が出てくる。
◇プログラムマネジメント・ポートフォリオマネジメント

「Governance Context」とタイトルの図だ。PMI(R)の一連の活動はこの図を書くことをゴールにしていると思われる図である。次にバージョンではPMBOK(R)にも入ると思われる。
ガバナンスの概念が分かりにくい人は、「これだけ知っていれば困らない(手法編)」に
「プロジェクトガバナンス」
という記事があるので、ぜひ、目を通してみてほしい。
この図を見ていると、プロジェクトやプロセスマネジメントにも上位マネジメント(プログラム、ポートフォリオ)が存在し、なおかつ、横にはオペレーションマネジメント(通常の組織マネジメント)が存在するという当たり前のマトリクスであることに改めて気づかされる。
◆スーパープロジェクトマネジャーは存在するか
プロジェクト型組織と呼ばれるオペレーションマネジメントのない組織は別にすれば、プロジェクトマネジメントに全てを託すというのは窮地の策に他ならない。このような策の中では、プロジェクトマネジメントをやっている中でガバナンスの混乱に悩まされ、挙句の果ては、失敗したプロジェクトの全責任を押し付けられることになる。
不幸なことに多くの組織は、オペレーションのマネジメントは確立されているが、プログラムマネジメントはほとんど確立されていない(例外的に、例えば自動車産業や製薬業界では、プロダクトマネジメントとしてほぼ確立されている。これは本当の例外で、これ以外の業界では例外的企業でのみ確立されている程度だ)。プログラムマネジメントが確立されていないと、上位マネジメントの空洞化が起こり、エグゼクティブからプロジェクトマネジャーが直接影響を受けるという構図すら珍しくない。
ここを理解した上でプロジェクトマネジメントの育成について考えてみる必要がある。たくさんの企業を見てきたが、多くの企業が求めているのは、本来プログラムマネジャーがやったり、あるいは、ラインマネジャーがやるような役割までやるプロジェクトマネジャーである。
これはシニアマネジャーの怠慢とか、そういう次元の話だけではない。スコープ定義のあいまいさ、コミュニケーション計画のまずさなどのプロジェクトマネジメントのケイパビリティの不足から、結果としてそのような形になっているという現実もある。逆にこのことが、スーパープロジェクトマネジャーの育成動機になっているから皮肉な現象である。
これは間違いである。プロジェクトマネジャーの未熟さゆえに出てくる混乱をカバーするのがプログラムマネジャーの役割であり、ラインマネジャーの役割である。
プロジェクトマネジメントだけではなく、プログラムマネジメント、ポートフォリオマネジメントだけではなく、オペレーションのマネジメントまでできるようなスーパープロジェクトマネジャーが出てきたら、自分の職がなくなると思った方がよい。
このようなプロジェクトマネジャーは現にいる。しかし、自社の重要プロジェクトの数だけ揃えられるはずはない。このようなプロジェクトマネジャーの確保を目指すというのは自社の資金運用を宝くじでやるようなものだ。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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