第6回(2006.04.24)
プロジェクトスポンサーとしての活動
 

◆スポンサーの活動

前回は、スポンサーに果たしてほしい役割について述べた。今回は、では、実際にスポンサーにはどのような活動をしてほしいかについて述べて行きたい。基本的には、前回述べた役割がベースになり、その役割を果たすためにどのような活動をするのかということになる。

スポンサーの活動を考える場合には、やはり、プロジェクトマネジメントフェーズごとに何をしなくてはならないかを考えるのが合理的である。まず、最初は、立ち上げプロセスについて考えてみよう。


◆プロジェクトマネジャーの任命

立ち上げプロセスでは、スポンサーはプロジェクト憲章を発行する役回りになるので、その中で、プロジェクトマネジャーとチームの任命をしなくてはならない。プロジェクトマネジャーの任命は分かりやすいが、チームの任命についてはやや分かりにくい。というのはプロジェクトはプロジェクトマネジャーだけを任命して、権限委譲し、その時点からプロジェクトマネジャーがプロジェクトチームを作っていくというイメージがあるからだが、チームも任命の対象になる。ただし、この場合のチームというのは、どのくらい決まっているものかという議論がある。一般的に考えてみて、総量でどのくらいのリソースを活用するかということ、後はキーパーソン(必ず必要な人材)くらいがスポンサーが決める対象になるだろう。その意味で、チームを任命するというのはリソースプールを承認するというレベルでよいと思われる。


◆戦略課題の解決

二番目は戦略上の課題の解決をする必要がある。これがマスタープランということになるが、この部分を安易にプロジェクトマネジャーに押し付けるべきではない。たとえば、SIプロジェクトで営業的受注をすることがある。新規顧客の開発を戦略課題としているような場合だ。このとき、営業価格でそのプロジェクトを実施することはプロジェクトの課題ではない。プロジェクトの課題はあくまでも通常の見積予算でSIを完成させることである。その差分は戦略課題の解決の中で、何らかの方法でカバーしなくてはならない。これはスポンサーの仕事である。

同じ意味で、プロジェクトのプライオリティを明確にすることもスポンサーの仕事である。戦略実行の視点からみた場合に、重要なプロジェクトをそうでもないプロジェクトを区分し、プライオリティをつけていく必要がある。

この際、重要なことは、当該プロジェクトの優先順位と、そのような優先順位になっている理由をプロジェクトマネジャーに説明することである。その説明のしかた次第で、当該プロジェクトがプライオリティが低い場合でも実行の動機を向上できるし、また、マネジメント実務の中でも重要な情報になるからだ。


◆人材の育成

このほか、スポンサーの役割として次世代の経営を担う人材を育てる役割がある。プロジェクトマネジャーは経営人材としての資質をはぐくむには絶好のチャンスであり、積極的に活動すべきであろう。そのような観点からすべきことは、まず、プロジェクトの方針や手続きを確立する過程で、それからの根拠とか、設定プロセス、手続きの考え方など、自社の仕組みの組織的な意義を、プロジェクトマネジャーにきちんと理解させていくような活動が必要である。

また、プロジェクトマネジメントでも、育成観点からも必要なこととして、プロジェクト実施に影響を与えそうな環境要因や政治的要因をプロジェクトマネジャーに説明し、対応を議論していくことである。この議論はプロジェクトにおけるステークホルダ対策として重要なだけではなく、プロジェクトマネジャーの組織人としての視野を広げ、成長を促す上でも重要である。


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