第38回(2007.06.11)
プロジェクトマネジャーを育てる(6)〜望まれるメンター像
 

◆メンター像の前提

前回はメンタリングには

 ・人材育成を第一義とする
 ・プロジェクトマネジメントの技術支援を第一義とする

の2つのケースが考えられ、まず、ここを明確にしていかないと中途半端なものに終わってしまうという話をした。

第37回 プロジェクトマネジメントにおけるメンタリングの位置づけ

ただし、これらは、どちらかだけということではない。

人材育成を第一義だとしても、当然メンターにプロジェクト成功のためのプロジェクトマネジャーの指導という期待は大きい。逆に、プロジェクトマネジメント技術の支援を第一義としても、プロジェクトが成功すればよいという話ではない。

今回は、それぞれの目的に応じて、どのようなメンターが必要かを考えてみたい。

まず、最初にはっきりさせておきたいのは、既に述べたように、メンターというのは2つの専門性を持ったπ型人材であるということだ。ひとつの専門性は、いうまでもなく、プロジェクトマネジメントに関する専門性である。もうひとつの専門性は人材育成、あるいはメンタリングそのものに対する専門性である。この両方が必要である。


◆人材育成第一の場合にはスポンサーシップが重要

その上で、単純化すれば、人材育成が第一義の場合にはプロジェクトの場合には、ひと言でいえば、スポンサーシップに富んだ人材がメンターになることが望まれる。

第36回 メンタリングとは

で述べたが、プロジェクトマネジャーにおけるメンタリングでは、

・スポンサーシップ
・調整と保護
・チャレンジ
・ロールモデル
・受容と確認
・カウンセリング
・友好

のあたりの支援が重要になると思われる。特に、最近、プロジェクトの制約条件が厳しくなる中でプロジェクトマネジャーが苦労しているケースが多いが、そのような傾向を考えると特に、心理・社会的機能(上の項目の後ろ4つ)の重要性が高まっていると認識される。


◆プロジェクトマネジメント技術支援が第一ならコーチングが重要

次にプロジェクトマネジメントの技術支援を第一義とする場合には、

・育成とコーチング
・調整と保護
・ロールモデル

の3項目が圧倒的に重要である。本当にそのようなメンターが確保できるかどうかという現実を考えずに単純に言えば、メンティから尊敬される人が、コーチングを中心にプロジェクトマネジャーを指導し、同時に、プロジェクトスポンサーを動かして、プロジェクト環境を整えていくことができる人材が望ましい。


◆プロジェクトスポンサーに注目しよう

メンタリングをよく、ナナメの上司関係だという人がいる。つまり、プロジェクトマネジャーの人事権を持たない人が、フランクにプロジェクトマネジャーのメンタリングを実施していく。これが基本である。従って、現役のプロジェクトマネジャーよりは、第一線を離れた「できた」プロジェクトマネジャーを当てる傾向が見られるようになってきた。

しかし、複雑なプロジェクト環境の中で、こんなやり方で本当に役に立つかという議論がある。人材育成はある程度可能かもしれないが、率直に言えば、プロジェクトマネジメントの技術支援は難しいだろう。

この議論の中でひとつ抜けている視点は、プロジェクトスポンサーの存在である。プロジェクトの推進体制にもよるのだが、プロジェクトスポンサーの指導は本来、ラインとしての指導ではない。変な言い方であるが、プロジェクトスポンサーとして指導である。

実は、日本組織の中で、抜け落ちている視点はロールの視点である。ひと=ロールだと考えている人がまだ多い。だから、話がややこしくなる。

メンタリングを人事考課者(組織マネジャー、ラインマネジャー)のロールでやってもうまく行かない。これは間違いない。しかし、同じ人が、「プロジェクトスポンサー」というロールでやれば、これほど有効な方法はないだろう。

これをやろうとすると整理すべき点も覆いが、ここがプロジェクトスポンサーシップの問題として、今後、考えていかなくてはならない課題であることは間違いない。

また、メンタリングがすべての方法かどうかは分からないが、リーダーシップやコンピテンシーを持ったプロジェクトマネジャーがなかなか育たない原因のひとつは明らかに、スポンサーの指導不足にある。

プロジェクトスポンサーがメンターをやることによって、この問題の本質的解決になることが期待される。


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