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第13回(2006.07.10)
続・PMOの戦略性とは何か? |
前回は戦略的PMOとはどのようなものかを説明した。その中で、ビジョンとミッションの重要性を述べた。
◆前回の復習
PMOの戦略性とは何か(1)
今回は、戦略的PMOとはどのような活動をするかを説明する。まず、前回提示した戦略性の定義
「主体的立場」に立つ時に、環境を広い視野のものに認識し、「長期的な目的と成果」の観点に立って「システム的」に対処しようとする意識と行動の形成のスタイル
をもう一度、思い出していただきたい。前回述べたようにキーワードは3つ
主体性、目的と成果、システム
の3つである。
◆プロジェクトトラブルへの戦略的対応
この点を踏まえて、一つの例を上げて、戦略的な活動のイメージを示す。例にしたいのは、プロジェクトのトラブルへの対応である。実際に、トラブルプロジェクトが多く、その対応としてPMOを設置に踏み切る企業は今でも少なくない。また、日本ではPMOの3大機能といわれるのは「標準化」、「トラブル対応」、「プロジェクトマネジャー育成」であることから考えても一般的なパターンだと思われる。問題はその方法である。
この問題に対して、PMOにプロジェクトマネジャーを置き、プロジェクトレスキューに入る支援形態を思い描く組織は多い。どれだけ実現できているかを別にすればそれを実行している企業も結構ある。少なくとも、プロジェクトマネジャーの派遣までは及ばなくても、プロジェクトマネジメント技術支援スタッフ、技術支援スタッフ、調達支援スタッフなどをプロジェクトに投入し、問題解決に当たっているPMOは多い。
このような支援を見ていると確かに目の前のプロジェクトの問題に対してはある程度有効な支援になっているのだが、PMOとして手がけなくてはならないトラブルの数はあまりにも多く、PMOのスタッフ数には限りがあり、それゆえに、モグラ叩き的対応になっているケースが多い。
◆トラブル支援はモグラ叩きでいいのか?
このような活動はプロジェクトのトラブルへの支援を第一義としているのだからそれでよいという考え方もあるだろう。しかし、PMOの側の要員数の制約などで個別のプロジェクトに対して十分な支援が出てきていないのであれば、話は変わってくる。つまり、問題解決をしているとはいえないからだ。そこで、PMOの要員を増やし、トラブルへの対処を手厚くしようといった議論になる。
このような考え方、展開は戦略的であるとはいえない。いくつか欠けている点がある。まずは主体性。PMOの要員を増やせと言い出したところで、主体的な問題解決を放棄している。戦略的であるためには、あくまでも「自分でコントロール」できる(「自分でできる」ではない)範囲で問題解決策を求める必要がある。また、プロジェクトをアセスメントし、その結果に基づき、支援要員を投入するといったやり方がシステム的かという議論もあるだろう。
◆リカバリー支援の目的は救済か
そもそも、リカバリーに対してPMOが支援する目的は「そのプロジェクトの救済」かという議論もある。そのプロジェクトが救済されなくてはならないことは事実であるが、それはプロジェクト自身の役割である。PMOの役割はプロジェクト自身が立ち直ることを支援することであり、PMOとしての目的は、プロジェクト失敗率の低減、プロジェクトマネジャーの育成といったところではないかと思う。
◆トラブル時にPMOが解決すべき問題
そのように考えると、トラブルが発生しているという状況において、PMOとして解決しなくてはならない問題は
・プロジェクトマネジメントの蹉跌
・プロジェクトマネジャーの未熟さ
・プロジェクトの外部環境の問題
といった中にあることが多い。プロジェクトの状況そのものの問題が優先されるケースは稀だと思われる。
むしろ、PMOが支援するときに重要な視座は、そのプロジェクトの期間、あるいは、組織の中で、同じ問題を再発しないような形で支援することである。
そこで、そのような中にある問題の本質を見極め、それに対処していく。これは、
リカバリーアセスメント
→リカバリーソリューションパッケージ
→リカバリー
と進めていく「リカバリーマネジメント」そのものである。その結果として、たとえ、要員支援というソリューションになったとしても、このようなプロセスを踏んでいること自体が重要であり、それが戦略的アプローチそのものである。
※リカバリーマネジメントについてはPMO進化論(7)〜(9)を参照。
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