第9回(2004.09.07) 
成長に役立つ経験
 

◆成長に役立つ経験
前回は、業務要素から学べるものについて、「なじみの薄い業務を経験する」という業務要素を例にとってお話をした。もちろん、これ一つだけではなく、pmstyleでは、プロジェクトマネージャーの育成に有効な業務要素として10の業務要素を定義している。どのような10個なのかを説明する前に、この背景になっているプロジェクトマネージャーの成長に有効な経験について考えを説明しておきたい。

すでに説明したとおり、pmstyleではプロジェクトマネージャーとしての成長に有効な経験を単にプロジェクトマネージャーとしての経験だとは考えていない。ここがポイントになっている。これは皆さんにも覚えがあると思うが、たとえば新入社員で訳も分からないときに自分の上司から得たインパクトであったり、仕事上での失敗や成功の経験が、その後、マネージャーになった際に大きく影響を与えるということは珍しいことではない。これがキャリアを積んでいくことの意味であるとも言える。

たとえば、キャリアの浅い時期に任されないという経験をした人の多くは「任さないマネージャー」になることが多い。反面教師という言葉はあるが、やはり、4〜5年の間、そのような価値観を刷り込まれていると、その価値観になじんでくる人の方が多いようだ。
逆にそのときに、組織としてあるべき価値観を経験するとすんなりとそのような価値観が身につき、組織の価値観を具現化するプロジェクトマネージャーになれる一助になることは明らかである。

◆経験には旬がある
重要なことは、身につけるべき、旬とでもいうべきものがあることだ。たとえば、SI業界などを見ているとよく分かる。SI業界は2〜3年前までは、完全な売り手市場だった。買い手市場になり、このような価値観で育ってきたマネージャーに顧客主義を言っているが、なかなか、実現できない。もちろん、頭(というか口)で分かっていないということではない。その証拠に方針的な部下の指導はできる。しかし、具体的な局面で意思決定をしなくてはならないときに、従来の考えしか出てこない人が非常に多い。もちろん、チェンジマネジメントのやり方にも問題がある(解凍しないままで、新しい価値観を植えつけようとしている)のだろうが、はやり、この種の価値観はマネージャーになって変えようと思ってもそう簡単ではないことを示唆する事例だといえよう。

◆経験のカテゴリ
ちょっと長くなったが、pmstyleでは、プロジェクトマネージャーの成長に有益な経験を以下のカテゴリに分けている。
 (1)業務上の課題
 (2)他の人とのつながり
 (3)修羅場
 (4)そのほか

まず、業務上の課題カテゴリであるが、
 エンジニア、セールス経験
 リーダー経験
 ゼロからのスタート
 プロジェクト建て直し
 視野の変化
といった経験を含んでいる。

◆経験
最初のエンジニア、セールスとしての経験というのが、プロジェクトで言えばメンバーとしての経験であり、ここで基本的な価値観が身につく。したがって、よいプロジェクトマネージャーになれるかどうかの分岐点である。その中で、もっとも重要な価値観は、マネジメント重視の価値観だろう。これが身につかない限り、将来、よりマネージャーになることは難しい。

次のリーダーとしての経験というのは、最初に部下を持ったときである。それまで、部下としての立場でリーダーに接してきており、いろいろなことを感じているが、そのときに感じたことと実際に自分がその立場になり、やろうと決心することは違うことが多い。上の任せるといったことはその典型だろう。文化がそんなに支配的ではない企業では、ずっと任せることの重要性を感じながらリーダーになっていくことも多いが、実際にリーダーになってみると、やはり、任せない方法を選ぶという意思決定をすることが多い。やはり、当事者になってみないと責任性などの実感に乏しく、逆にリアルな状況でどのような判断をするかというのは極めて重要だともいえる。

次のゼロからのスタートというのは、その組織にとってまったく新しい課題になるようなプロジェクトを経験するといったことだ。たとえば、新しい技術、オフショア開発のような新しいマネジメントプロセス、新しい顧客(業界)など、いくらでも考えられる。このような経験をすることは、リーダーとしてであれ、メンバーとしてであれ、プロジェクトマネージャーを成長させるだろう。

建て直しはIT業界でいえば、火消しである。これ以上の説明はないかもしれないが、ちょっとだけコメントしておく。これは、他人が残した負の資産であることが多い。自分のしでかした不始末を自分で始末することとは本質的に異なる部分がある。これがよい経験になる。

さらには、視野の変化ということで、それまでにその人は経験したことのないプロジェクトの規模とか、クライアントのタイプといったこともプロジェクトマネージャーとしての成長に有用である。

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