第6回(2004.06.25) 
プロジェクトマネージャーに意味のある経験とは(1)
 

◆修羅場!?

 この問題については、意見をお持ちの方も多いだろう。こういう議論をすると必ず出てくるのが、修羅場である。特に、プロジェクトマネージャーの経験のある人が人材育成の担当になると、修羅場をくぐる重要性を主張することが多い。もちろん、修羅場をくぐる経験が重要であることはいうまでもない。

 そこで、OJT、修羅場の重要性を説くことを期待されている方も多いかと思うが、あいにくそうではない。

 その代わりに、みなさんにひとつの質問をしてみたい。あなたの同僚、部下、後輩、先輩、パートナーなどの中で、若いときからプロジェクトの中で異端だった人(もっと簡単に言うと、プロジェクトマネージャーの言うことなど聞かず、ひたすら、自分のやり方でやっていた人。かつ、成果を出している人)を一人頭に思い浮かべてほしい。たぶん、一人や二人はいるだろう。思い浮かんだだろうか?思い浮かんだら、その人がプロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーとしてうまくやっているかどうかを分析してみてほしい。

 ほとんどはノーだと思う。それどころか、人事上、プロジェクトマネージャーになる職位までたどり着いていないケースも少なくないのではないだろうか。

◆プロジェクトマネジメントされる経験の重要性

 これらのことは何を意味しているのだろうか?プロジェクトにメンバーとして参加し、プロジェクトマネジメントの枠組みの中で活動するという経験が、プロジェクトマネージャーになったときに、重要な意味を持つことを意味しているのではなかろうか。

 著者はよく、会社に入って2〜3年目でプロジェクトマネジメントの「され方」を教えればよいと主張しているが、これは将来、プロジェクトマネージャーになるためではなく、プロジェクトマネジメントの中で働くこと、あるいは、プロジェクトマネージャーの気持ち、考えを知ることが、組織としてのプロジェクトマネジメントの成熟度を向上させるために不可欠だと考えているからだ。その端的な例が進捗報告で、メンバーが進捗報告の仕方を熟知していなければ、意味のある進捗管理などできるはずがない。言い換えると、メンバーが、プロジェクトマネージャーが求める進捗報告とはどういうものかを知らなければ、プロジェクトマネジメントなどできるはずがない。そして、これはプロジェクトのキックオフミーティングで、報告フォーマットを配っておけばOKというような単純な話ではない。

 こんな例はいくらでもあるが、本題と外れるので、話を元に戻す。この例を見てもわかるようにプロジェクトマネージャーにとって意味のある経験とは、「プロジェクトマネージャーとしての経験だけ」ではないことは明らかだ。

 pmstyleは、プロジェクトマネージャーの育成や、プロジェクトマネジメントのコンサルティングの経験を通じて得られた知見から、このような経験を、4つのカテゴリ、13の経験に整理している。ここでは、これを紹介しておく。

 カテゴリには、「業務上の経験」、「他人とのつながり」、「修羅場」、「そのほか」の4つがある。そして、それぞれのカテゴリにおいて

(1)業務上の経験
  ・エンジニア、セールス経験
  ・リーダー経験
  ・ゼロからのスタートプロジェクト
  ・プロジェクト建て直し
  ・視野の変化

(2)他人とのつながり
  ・ロールモデルの獲得
  ・価値観の刺激

(3)修羅場
  ・プロジェクトの失敗
  ・プロジェクトマネージャーの交代
  ・メンバーの成果の問題
  ・キャリアチェンジ

(4)そのほか
  ・研修
  ・個人的な問題

といった経験を取り上げている。それぞれの経験の意味は次回説明するが、さっと見ていただいても、如何に多様な経験がプロジェクトマネージャーに影響を与えているかがわかるだろう。

スポンサードリンク
読者からのコメント
異端の人に対する意見について
はじめまして。
今回の記事を読んで、疑問にあったことがあります。異端の人がマネジャーやリーダーとして、うまくやれないとの意見についてです。
プロジェクトを破綻させるマネジャーに従う必要があるのでしょうか?なんかよくわからないがお客さんに求められれているから、とか、他の人がやっているから、とか、昔からそうだからという理由で、何を管理したいのかよくわからない進捗報告をさせるリーダに従う必要があるのでしょうか?
メンバーとして、その組織に順応するには、組織がまともである必要があるように思います。毎回毎回赤字や破綻になるプロジェクトチームで順応したメンバーになることは、おかしなことではないでしょうか。そこで順応した人がマネジャーになっても同じことをやると思いますが、いかがでしょうか。
私は、かつて、順応しようとしたことがありますが、どうも体力勝負で進捗を回復させることばかり考えているマネジャーやリーダーに嫌気がさしてやめました。
何事も状況によると思いますが、今回の記事では、絶対的に異端の人はだめだといわれているように感じられますが、いかがですか。
プログラマ(29歳・プログラマ)
重要な指摘をありがとうございます!ご指摘のとおり、今、解説している人材育成の手法は、プログラマさんの言葉でいえば、「まとも」な組織を前提にしています。あえて、まともな「プロジェクト」ではなく、組織と書いたのは、たとえば、書かれている赤字の問題などは、プロジェクトマネジメントの問題ではないと思っているからです。想定されているような企業の場合、プロジェクトマネジメント以前に、経営管理の立て直しが必要です。それを前提にもう一度、記事をお読み戴ければ幸いです。 好川哲人

■本稿に対するご意見,ご感想をお聞かせください.■

は必須入力です
コメント
自由にご記入ください

■氏名またはハンドル名
■会社名または職業
■年齢

                             
このコンテンツは「pmstyle.com」としてメルマガで配信されています.メルマガの登録はこちらからできます.