第1回(2004.01.09) 
なぜ、行動できないのか?
 

◆PMコンピテンシーへの関心の高まり
 プロジェクトマネジメントへの関心が高まり、トレーニングを受ける機会も増えてきたし、おびただしい数の書籍も出版されている。また、組織内でのPMOや、メンターなどのサポート制度の導入も増えてきている。

 しかし、個々人のレベルでみれば、決して順調にスキルアップをしているとは言えない状況だ。PMPホルダの数が目覚しく増えているという話は聞くが、よいプロジェクトマネージャーが増えてきたという話はあまり聞かない。

 PMPは3ヶ月勉強すれば取得できるが、よいプロジェクトマネージャーの育成は3年はかかる。もう少し時間が必要だと言いながらも、反面で、PMの育成担当者の多くが、そろそろ、焦りを感じてきたのも事実だろう。

 この状況がPMコンピテンシーへの関心の高まりの背景である。

◆なぜ、できないのか
 では、なぜ、できないのだろうか?

 座学で知識を得る。ケーススタディーで考えるトレーニングをする。ロールプレイでヒューマンスキルのトレーニングをする。メンターからのいろいろな経験上のアドバイスを受ける。これら自体をうまく消化できている人は多いが、実戦ではそれを発揮できないままに終わる。なぜか。

 この問題の一つの答えは、明らかに「経験不足」だ。育成に時間がかかる一因は、経験させるのに時間がかかるからだ。しかし、トレーニングを受けて3年間経験をして、3年後には立派なPMになれるのかというと「?」なのだ。ここに一つ問題がある。

 もう一つの問題は「成功体験」をさせることができないことだ。弊社では多くの企業でPMコンピテンシーモデルの開発を実践しているが、PMコンピテンシー(パーソナルコンピテンシー)の中で必ず出てくるものの一つに「自信」がある。

 最近は、「メンター」をつけるような工夫をしている企業も多い。「自信」を持つのに、周囲の支援が重要なことはもちろんだが、「自信」というコンピテンシーを高めるにはやはり、成功を経験していくしかない。これができない。

◆成功の秘訣は総合的取り組み
 早いもので、PMやPMBOKが注目されだしてもう3年くらいになり、取り組みの早かった企業では徐々に結果が出始めた。もちろん、納期遅れプロジェクト数が会社全体で30%削減できたといった顕著な成果が出始めている企業もあるが、一方で、何も変わらないと感じている企業も多い。

 誤解のないようにしていただきたいが、成果を出している企業はPMのトレーニングだけで成果を出しているわけではない。プロジェクトマネジメント標準の導入、改善、組織的サポートなど、多くの施策を行い、成果を出している。

◆失敗の主要原因は育成
 しかし、逆に成果の出ていない企業のほとんどは、プロジェクトマネージャーの育成に問題を抱えていることも事実だ。水掛け論ではなく、企業の成長は、個人の成長が組織を成長させ、組織の成長が個人を成長させるという好循環で実現される。この循環の構成ができていないのだ。この循環を作る切り口として多くの人が注目しているのは、やはり人である。

 最初の取り組みの時点ではプログラムとして、組織、仕組み、人をセットで取り組む。これは正しいし、否定しているわけではない。しかし、そこで何らかの理由でうまく行っていない場合には、現状打破のレバレッジ(テコ)が必要になる。そのレバレッジになるのは人だという話だ。

 その意味で「人材を育てる」ことには特別な意味がある。

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