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第5回(2005.12.02)
プロジェクトマネジメントプロセスの標準化は必要か?(前) |
(本記事は、翔泳社PM Magazine No.4への寄稿記事を、メルマガ用に再編集したものです。前後半の2回に分けてお届けします)
◆はじめに
今回はマネジメントプロセスの標準化についてアンケートを行った。質問項目は以下の通りである。
問 1 あなたは決まったプロセスでプロジェクトマネジメントをしていますか
問 2 どのマネジメントプロセスが定められていますか
問 3 どのような形で定められていますか
問 4 プロセスにどのような問題がありますか?
問 5 プロセスで使われるツールについてどのような問題がありますか?
問 6 プロセス改善への取り組みの最も重要な目的を一つあげてください。
問 7 決められたプロセスでプロジェクトマネジメントを行う効果はありますか?
問 8 標準プロセスを決める必要性、メリット、デメリットについて自由にお書きくだ
さい。(自由記述)
これに対して、208名の方から回答を戴いた。ご協力ありがとうございました。
結果は第4回にありますので、これを参考にしながら、本記事をお読みいただきたい。
このアンケートを企画したときに、CMMIやISO9000のプロセスと、プロジェクトマネジメントプロセスが混乱するのではないかという危惧を持った。問8の記述内容を見ていると、ややその傾向が見られる。誌面の関係で本記事では、この点については言及しない。
◆決まったプロセスがあるか?
この質問の結果は上記URLの図1に示されている。
90%弱が何らかの標準にしたがってプロジェクトマネジメントを行っている。半分の企業が自社のプロセスを持っており、四分の一が自社にはないが、なんらからの標準を決めている。特筆すべきは、全体の15%に当たる人が、自社にあるにも関わらず、自分のプロセスを持っていることだ。
これには2つの側面があろう。一つはPMBOKに代表されるような比較的きちっとしたプロセスがあるが使いにくいので、自身で工夫をしているケース。もう一つは、アジャイルプロジェクトマネジメントのように、そもそも、プラクティスの中にテーラリングが含まれており、組織の公式プロセスとして個別プロジェクトのレベルでの変更をしているケースである。本アンケートの中での比率は分からないが、今後、後者の割合は増えていくと思われ、成熟度の向上問題も睨んで、これからの標準プロセスの中には、テーラリングそのものをプロセスに組み込んでいく必要があるだろう。
◆何が決められているか
定められているプロセスとしては、予想通りQCDに関するプロセスがこれらと較べるとスコープマネジメントのプロセスが意外と少なかった。数的には2社に1社弱しか、スコープマネジメントのプロセスが決められていない。これは予想で、スコープに端を発するプロジェクトトラブルが多いのも納得できる。逆に差はわずかだが、リスクマネジメントのプロセスを定めている組織(人)の方が多い。これはこの2〜3年のプロジェクトマネジメントへの取り組みの成果だといえよう。
また、問3の結果として、定め方としては、マニュアル、プラクティス、標準ツール、テンプレートが圧倒的に多く、50%を超えるという結果になった。これも予想通りだったが、意外に健闘しているのが「暗黙の了解」である。40%近い人がこの項目を挙げている。これをどのように読むかは興味深いところだ。
◆問題点
そこで、問題点の方に目を移してみる。図3が問4の結果である。これから分かるように「あいまいである」という問題点が頭抜けて多く、50%を超えている。ツールに関する質問では、組織にはないので、自分で作っているという答えが40%を超えている。
プロセスのあいまいさの除去は成熟度向上(改善)の重要項目の一つであり、プロジェクトマネジメントプロセスは導入の早い企業でも10年足らずといったところであるので、こういう結果になっていると考えられる。ただし、実務上、決まっていないではすまないので、現場でルールを決めながらそれを暗黙の了解としてプロジェクトマネジメントを行っている実態が覗える。
逆の意味で意外だったのが、プロセスについて複雑すぎる、ツールについて多すぎるという答えが25%程度と少なかったことだ。どうも、この2つを総合的に考えると、早くから取り組んでいる企業では複雑になりすぎ、取り組みの遅い企業ではあいまいさが残っているという現状があるように推測される。この2つは相反的な概念であるが、結局、他のプロセスの標準化と同じく、いかに、曖昧さと複雑さのバランスをとるかがプロジェクトマネジメントプロセスでも課題だといえよう。
その意味でも上に述べたテーラリングという考え方が今後のプロジェクトマネジメントの組織成熟度向上の鍵を握っていると考えられる。なお、プロセス改善に関しては
(問6)、改善着眼点として
プロジェクトの失敗回避 30%
プロジェクト実行効率の向上 28%
プロジェクト計画(見積もり)精度向上 18%
がベスト3であった。プロジェクト実行効率の向上という回答の中には、おそらく、かなりの割合で納期遅れの解消が入っていると思われるが、それにしてもパフォーマンスに着眼するようになってきているのは注目に値する。
(以下、後半に続く)
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