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第4回(2006.03.31)
プロジェクトコミュニケーションの実態 |
(※本記事は翔泳社 PM Magazine No.3への連載記事をメルマガ用に再編集したものです)
◆コミュニケーションに起因するトラブルの経験は93%がある
まず、全体的にコミュニケーションに起因するトラブルの経験があるという回答が93%に上った。後で述べるようにこれがすべてプロジェクトの致命的なトラブルに結びついているわけではないが、この数字は正直外に多かった。確かに、著者がコンサルタントとして活動する際にも、プロジェクトで何らかのトラブルが発生したときに、振り返りで原因分析をすると必ずといってよいくらいコミュニケーションの問題が出てくるので、この結果は驚くに値しないのかもしれないが、数値化してみると改めて驚いたといったところだ。
◆問題点は意思疎通と情報伝達の不足
この中で、コミュニケーションの問題として、意思疎通の不足が35%、情報の伝達不足が30%で、両方をあわせると65%になる。注目したいのは、はやり、意思疎通の不足を痛感している人が多いことだ。3人に一人が意思疎通の難しさを感じた経験があることになる。ここ2年くらいコミュニケーショントレーニングが重視だと考えられるようになっているが、この状況を見ると納得させられる。また、コミュニケーションの工夫に関する自由記述の中にも、普段の業務中でのインフォーマルな接触を上げている人が目立ったのも、このあたりの事情によるものだろう。
一方で、情報伝達の不足の経験がある人も30%ある。これについても後で述べるが、考えさせられる数字である。
さて、ついに、どのようなコミュニケーションでトラブルが起こっているかであるが、スコープ(仕様)に関するものが40%あり、第2位がステークホルダコミュニケーションで16%であることを考えると圧倒的に多い。さて、では、どのようなコミュニケーションでどのようなトラブルが多いのだろうか。あまり、明確な傾向ではないが、スコープに関するコミュニケーション、および、ステークホルダコミュニケーションで意思疎通の不足が多いくなっている。また、進捗報告で、情報伝達不足が多いという結果が出ている。もうひとつ、スコープに関するコミュニケーションでは、コミュニケーションのタイミングのずれが多いという結果も注目に値する。
◆結果としてスケジュール遅れと品質トラブルが起こる
コミュニケーションのトラブルの結果発生したプロジェクトのトラブルとしては、スケジュール遅れと品質トラブルで56%を占めた。これはある読者の方から指摘されたことだが、プロジェクトにどのような影響が出てくるかは因果関係があるので答えにくいという面があるが、その点は差し引くとしてもスケジュールと品質に重要な影響があることは、上のスコープに関するコミュニケーションでトラブルが多いという点からも納得のいく結果だといえよう。
◆コミュニケーション計画がないとタイミングがずれる
分析の最後にコミュニケーション計画の問題に触れておきたい。コミュニケーション計画が常にある(ほぼあるも含む)という回答は思ったより少なく、40%に満たなかった。かつ、32%が「ない」ということであり、これも予想外に多かった。ただし、ほとんどの回答がコミュニケーションに起因するトラブルがあったという答えであったことも影響しているが、コミュニケーションに起因するトラブルとコミュニケーション計画の存在の間には予想していたような明確な関係は見られなかった。一方で、コミュニケーション計画の意味であるが、コミュニケーション計画がないと起こりやすいトラブルとしてタイミングのずれということが明確になっている。これは当たり前かもしれないが、興味深い結果である。このコミュニケーション計画というのは、ほとんど会議体の設定などだと想像される。
◆アンケートから分かること
これらの結果からいえることを整理しておこう。まず、今回のアンケートの設問意図の中でもっとも強く意識したのが、コミュニケーション計画と、コミュニケーションスキルがコミュニケーションにどのように影響をしているかである。上に述べたとおり、意思疎通の不足はコミュニケーションスキルの問題が大きい。これがもっとも多かったことは、コミュニケーションスキルを向上させていく必要があることを痛感させられる。
ここで、問題がどのような対象に対して発生しているかを分析してみる。メンバーとの間に情報伝達の不足が多い。これはコミュニケーション計画の問題であるといえる。
さらにいえば、インフォーマルなコミュニケーションについても、ある程度、コミュニケーション計画によりある程度、カバーできるものであるので、ここでもコミュニケーション計画の不十分さが伺える。
このようにコミュニケーション計画の策定とフォロー、その中でのチームのメンバーのコミュニケーションスキルの向上などを全般的に行うコミュニケーションマネジメントの不十分さが目立つ結果であった。
◆読者の方から寄せられたノウハウ
今回の読者の方からの意見であるが、実は、整理の段階で非常に困った。
書かれていることのほとんどがコミュニケーション計画策定のノウハウであった。コミュニケーションをとるツール、タイミング(会議など)、場所、コミュニケーションプロトコルなどであり、ほとんどの意見が、どのような人にも参考になると思われる。
全般的にいえば、ツールに関しては、メールの利用方法、Webサービスの利用方法、メディアの使い分けといったあたりに関する意見が多かった。また、タイミングについては会議体の開催方法についての紹介と同時に、インフォーマルコミュニケーションの方法が多くあった。インフォーマルなコミュニケーションでは、ユニークなものが目立った。場所については、フェイスツーフェイスの重要性を指摘する意見が目立った。また、これと関連するのだと思うが、電話の重要性を指摘する意見も多かった。
この中から特定の意見を抽出することが難しいので、これらの貴重なノウハウについてはいずれは、Web上で公開するので、その際に参考にして戴くということにしてもらいたい。今回は、雑誌掲載くらいのタイミングでWebに生データとして公開することにしたい。
今回は、エディターズチョイスのみを紹介する。今回は、佐々木さんという方の
まずコミュニケーションという曖昧な言い方をしない。コミュニケーションは一般的に理解されている「ヒューマンリレーション」の意味で使い、情報の伝達・共有は「インフォメーション・マネジメント」と名づけてプロジェクトの明確な管理対象という共通認識をメンバーが持てるようにする。
を選ばして戴きたい。
好川も同じような危機感を持っている。最近、コミュニケーションに関心が高まってきたが、反面、リーダーシップなどと同じような、お化け言葉になりつつある。つまり、正体がわからないままに、みんなが自分のイメージで想像し、その想像に基づいて動いているような傾向が見られる。計画としては5W2Hで意識あわせをしていくことが重要であるが、それ以前の問題として、コンセプトをチームと主要ステークホルダとの間で共有していく必要があるだろう。
◆セミナーのご案内
pmstyle.bizでは、
プロジェクトを成功させるコミュニケーションマネジメント
http://www.pmstyle.biz/smn/comm.htm
というセミナーをやっています。コミュニケーションマネジメントに不安のある方、あるいは、現在の会議体だけのコミュニケーションから一歩進化させたい方、ぜひ、ご参加ください。
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