第2回(2005.09.06) 
コストマネジメントの実態(前)
 
(※本記事は翔泳社 PM Magazineの連載記事をメルマガ向けに編集したものです)

第2回は本誌のテーマに合わせて、コストマネジメントを取り上げてみた。今回も、プロジェクトマネージャー養成マガジンの読者にアンケートをお願いした。アンケートの内容は以下の5問である。

問 1 対象となるプロジェクトの種類を教えてください
問 2 想定したプロジェクトでの当初予算と実績についてお答えください
問 3 主要な原因はどのようなものでしたでしょうか?(複数回答可)
問 4 最終的にそのプロジェクトはどうなりましたか
問 5 プロジェクトの収益を上げるために重要だと思うことを教えてください。

全部で77人の回答が得られた。問1の回答は

IT受注業務プロジェクト        44.2%
IT以外の受注業務プロジェクト     5.2%
商品・サービス開発プロジェクト     15.58%
技術開発・基礎研究プロジェクト     6.5%
新規事業プロジェクト          5.2%
IT投資プロジェクト(自社)      11.7%
自社マネジメント革新プロジェクト    2.6%
そのほかのプロジェクト         9.1%

であった。これから分かるように、ざっと半数がITで受注プロジェクトに従事している。


◆分野によるコストマネジメントの差はあるか

問2に対する回答は以下のとおりであった。

すべてのプロジェクト実績は当初予算以内だった       20.8%
プロジェクト実績が当初予算を超えるプロジェクトがあった  61.0%
すべてのプロジェクトの実績が当初予算を超えた        7.8%
わからない                        10.4%

この中で意味のある数になっているのは、IT受注業務とIT投資、および、商品開発の3つの分野である(ほかは回答件数が少ない)。

IT系はプロジェクトの成功確率が低いといわれるが、意外とそうともいえないことが分かる。おそらく、大型のプロジェクトで問題を抱えているものが多いので、そのようなイメージが定着しているのではないかと思われる。もちろん、プロジェクトであるので、失敗する(計画通りに行かない)ものが多いはいうまでもないが、商品開発と同じ傾向が見られるので、特にITだから難しいということではないだろう。


◆コスト超過の原因

問3に対して、プロジェクト全体としては以下のような結果が出た。

コスト見積もりが過小だった           11
工数見積もりが過小だった            22
スコープや見積もりがあいまいなままスタート   29
途中でスコープが増加した            22
リスク予備の見積もりが甘かった         14
プロジェクト実施の前提が変わった         5
不明・追求しなかった               6
その他                      3

また、IT受注業務に関しては

コスト見積もりが過小だった            7
工数見積もりが過小だった            19
スコープや見積もりがあいまいなままスタート   17
途中でスコープが増加した            13
リスク予備の見積もりが甘かった          8
プロジェクト実施の前提が変わった         1
不明・追求しなかった               1
その他                      2

これから分かるように、コスト超過の要因では、「工数見積もり過小」、「スコープのあいまいさ」、「スコープ増加」が三大要因である。いずれもスコープの問題がコスト超過につながっていることが分かる。


◆コスト超過にどのように対処するか

問4に対する回答は以下のとおりである。

予算を追加し、追加予算内で完了した  23.0%
許容範囲内の予算オーバーで完了した  37.7%
許容範囲外の予算オーバーで完了した  23.0%
中止した               11.4%
その他                 4.9%

これを見ると

・ベースラインは変えないことが多い
・中止することは少ない

という2つの傾向が見られる。これらは、当初計画した利益目標をクリアできていないにもかかわらず、責任をうやむやなまま、あるいはプロジェクトマネージャーに押し付けてプロジェクトを完了するという現実を浮き彫りにしている。ここを変えていかない限り、プロジェクトで十分な利益を上げるのは難しいだろう。

(以下、次回に続く)
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