第4回(2003.11.30) 
問題解決プロセスを理解する
 

◆プロジェクトマネジメント=問題解決の集合
 過去3回、問題解決の場面で使う手法として、MECE、ロジック、システムシンキングの紹介をしてきたが、今回はそもそも問題解決というのはどういう作業なのかということを解説する。

 プロジェクトマネジメントは問題解決の集合体だと言ってもよいが、本当にありとあらゆるパターンの問題の解決作業である。例えば、スケジュールが遅れそう。予算がオーバーしそう。顧客が仕様変更を言ってきたなど。これらはすべてプロジェクトとして問題発生である。この後は、「スケジュールが遅れている」という問題を例にとって話を進めていこう。

◆問題の発見
 プロジェクトの問題解決においてまず最初にしなくてはならないことは問題の発見である。問題の発見とは文字通り問題を見つけることで、プロジェクトマネジメントでは問題発見のために「進捗報告」という仕組みを取り入れることが多い。つまり、計画と実際の進行に差があるのか、ないのか、あればどのくらいの差があるのかを見つけ出す。これが問題発見である。問題発見において注意しなくてはならないことは、そのプロジェクトにおける「問題」の定義を明確にしておくことである。例えば、計画から差異が問題であると決めても、差異が1%でもあれば問題なのか、50%あったときに始めて問題とみなすかを決めておかなければ決めたことにならない。現実に多くの問題の見過ごしは、気がつかないことより、「認識」の違いによって生じることをよく認識しておかなくてはならない。

◆原因の特定
 問題が発見されると次にその原因を特定しなくてはならない。「スケジュールが遅れている」という問題であれば、「技術的に難しい点があった」、「工数見積もりがまずく、要員が不足している」、「担当者が別の作業に手をとられて時間を割けていない」などいくらでも考えられる。そこで、原因を特定するためには、さらに調査が必要になる。問題は何を調査するかである。考えられるすべての原因に対して、それをしらみつぶしに調査をしていったのでは、プロジェクト期間がいくらあっても間に合わない。そこで「仮説」が重要になる。類似プロジェクトで過去に「担当者のスキル不足で遅れたことがあった」とすれば、担当者のスキル不足が原因ではないかというのが仮説になり、まず、その裏づけを調査する。それが原因であれば特定できたことになる。もし、今回は違うということになれば、別の仮説を立てる。このように調査仮説を作り、調査を進めていく。

◆課題の設定
 このようにして原因が特定される。次は、対策を考えることになるが、ここでポイントになるのは、何に対する対策かという点である。プロジェクトにおける問題解決では、プロジェクトの時限性などもあり、原因を消すような対策を立てる場合が多い。例えば、スキルが不足しているのであれば、スキルのある人を調達してきて対処するというように考える。しかし、このような直接的な原因の対処は、時として別の問題を生む可能性があることをよく理解しておく必要がある。例えば、スキルの問題で要員の変更を行った場合に、その作業はうまく行くかもしれないが、別の作業ではその新しい要員がスキル不足であるかもしれない。そのような状況を引き起こさないためには、一度高みに上って全体を考えてみる必要があるだろう。確かに原因は担当者のスキルの不足であるが、では、なぜそうなったかという点を考えてみる。例えば、WBSの作り方がまずく、アクティビティとして問題になっている作業が明確に上がってきておらず、リスクマネジメントの際にその検討が落ちていたとしよう。すると、要員の変更はもちろん必要であるが、同時に計画の正確さの向上をすべきである。このときに注意しなくてはならないのは、それを考えるスパンである。例えば、人材育成が不十分であったからなどいったことを考えてみても仕方ない。あくまでも現在進行形のプロジェクト時間での対処につながる現実的な範囲で検討である
 ここでの「計画の正確さの向上」は「課題」と呼ばれる。課題とは、原因を解消するための課題だと考えればよい。つまり、それが実現されると原因が解消されるとともに、全体の状況がより改善されるようなものである。

◆対策の立案
 さて、課題が決まれば、最後は対策である。「計画の正確さの向上」が課題であるので、まずは、WBSの見直しを行い、リスクの見直しもする。その上で、新たなWBSのアクティビティに対して、適正なスキルの要員を再度割り振りを行う。これにより、「納期が遅れる」という問題に対する問題解決策ができたことになる。そして、この解決策は、単にスキルの高い要員と交代するという対策よりは一歩進んで、適正なスキルの要員と交代するという対策になっている。

◆問題解決の流れ
 以上の流れを整理すると、問題解決の流れは

  現象の把握→問題の発見→原因の特定→課題の設定→対策の考案

ということになる。これはマネジメントで行う一般的な問題解決であるが、プロジェクトマネジメントで課題の設定が必要かどうかは議論になるところである。しかし、ここではプロジェクトにおいても例えば、品質管理などではプロジェクト期間内での再発防止を視野にいれた問題解決が必要であり、そのように考えるとやはり、課題の設定は必要だと考えるべきであろう。
◆参考文献
ウィリアム・J. アルティエ「問題解決と意思決定のツールボックス―思考するマネジャーへの実践的強化」、東洋経済新報社
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