第11回(2004.11.26) 
習慣化(1)〜能力を成果に結びつける

◆なぜ、成果が上がらないのか?

何がしかのトレーニングを受け、プロジェクトマネージャーとしてプロジェクトを仕切ってみたけど、散々だった。こんな経験をした人は多いと思う。なぜ、できないのだろうか?たとえば、ITエンジニアがjavaを勉強して、プログラムを書く。これは何とかなるものだ。この作業とPMBOKを勉強してプロジェクトマネジメントをやってみることにはどのような違いがあるのだろうか?

これを同じだと感じる人はそんなに多くないだろう。しかし、何が違うのかといわれると意外と答えに窮するのではないかと思う。

一生懸命勉強しているのだが成果に結びつかない、あるいは、あるプロジェクトのマネジメントで経験したことが次のプロジェクトのマネジメントでの成果に結びつかないといったことが起こる理由はここにある。


◆能力には2つある

能力は2種類に分けられる。ものごとを行う能力と、その能力を成果に結びつけるための力である。

まずは、ものごとを行うための能力である。上の例でいくと、Javaを書く能力であるし、WBSを作るとか、EVMで進捗を管理するとか、PMBOKで指定されているツールを使う能力である。

しかし、この能力だけで成果を生み出すことは難しい。たとえば、Javaを書く能力があっても、仕様書を読めず、トンチンカンな仕様のプログラムを作っていたのでは成果にならない。あるいは、EVMを計算できてもその計算結果から適切なマネジメントの判断ができなければ、プロジェクトマネジメントの成果には結びつかない。

ここで注目しておきたいことがある。それは、たとえば、Javaを書く能力と、この能力と使って成果を上げることと、EVMを使う能力とこの能力を使って成果を上げることの間の距離感である。プログラミングとプロジェクトマネジメントが比較しにくければ、オブジェクト指向分析の能力ととJavaを書く能力で考えてみてもよい。プログラミングに較べるとシステム分析では、システム分析の方がこの距離感が大きい。プロジェクトマネジメントになると一層大きい。

この距離感が大きくなればなるほど、ものごとを行う能力を成果に結びつける力を求められることになる。また、そのような仕事ほど、難しい仕事だと感じる。


◆自分の能力を成果に結びつける力とは

では、自分の持っている能力を成果に結びつける力とはどんなものだろうか?上の例で、プログラミングやシステム分析では、仕様をきちんと把握でき、理解できる、また、共同作業者に説明できる力が注目されている。いわゆるヒューマンスキルである。

しかし、ことはそう簡単ではない。たとえば、人からものを聞き出す能力をコミュニケーション能力だとしても、ここに同じ構図ができてしまうのだ。つまり、話し方とか、尋ね方とか、傾聴の仕方といったスキルがあっても、そのスキルを使って人からものを聞きだすには、やはり、何か別の力が必要なのだ。相手のことを理解しているとか、相手の発言の背景を理解しているとか、いろいろあるし、ここにシステム分析の能力そのものも入ってくる。かなり、テレコな関係になっている。

ここの力は少しメタなものである。それは、習慣化することである。自分の持っている能力を成果に対して役立てるには、どのように使えばよいかを常に考え、行動し、そのような行動を習慣にしていくことである。この習慣の中で、無意識に自分の持つ能力が常に成果に結びついていくのだ。また、その習慣化により、能力を成果に結び付けていく力は向上していく。


◆「目的を意識する」という習慣

たとえば、プロジェクトマネジメントのスキルを成果に結び付けていこうとするとどのような習慣が必要なのか?最初にあげられるのは、目的を意識するという習慣である。マネジメントにはいろいろな作業がある。WBSを作るのも、スケジュールを作るのも、レビューするのも作業である。この作業の一つ一つの場面で、常に目的は何だったかと考えてみる。これは問題解決の強力な推進力になると同時に、実行性のない計画を作るといったことの防止になる。つまり、成果に結びつける強力な力となっているのだ。

我々はこのように、プロジェクトマネージャーが身につけることによって、そのプロジェクトマネージャーの持っている能力をマネジメントの成果に結びつける習慣として以下の7つの習慣を考えている。

 1.目的を意識する
 2.リスクを楽しむ
 3.あらゆることに問題意識を持ち、改善を心がける
 4.顧客の立場で考える
 5.主体性を発揮する
 6.ものごとを分類を意識する
 7.自分の行動を客観的に見る

プロジェクトマネジメントOSでいえば、ツールは個々のファイルシステムとか、メモリ制御とかいったOSの機能である。そして、習慣は、OS全体を動かすアーキテクチャーのようなものだと考えている。

プロジェクトマネジメントOS原論の後半は、この習慣について議論していきたい。

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