PMサプリ116:すぐれた成果は明確な目標から

【PMサプリ116:すぐれた成果は明確な目標から】

すぐれた成果は明確な目標から始まる(リアス・カデム、ロバート・ローバー:コンサルタント)


【効用】

・PM体質改善
  アカウンタビリティ向上、リーダーシップ発揮、顧客感度アップ、問題解決能力向上、計画力アップ、バランス感覚の洗練、実行力向上
・PM力向上
  ピープルマネジメント力向上、チームをまとめる力の向上、リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上


【成分】

◆1ページマネジメント

リアス・カデム、ロバート・ローバーの両氏は、「One Page Management」で著名なマネジメントのコンサルタントである。日本でも最近ずいぶん、この手の本が増えてきた。日本で目立つのは企画である。アマゾンで探してもずいぶんあるので、興味があれば探してみてほしい。

1ページマネジメントにはたいへんシンプルな原則がある。「報告書は1ページ以内」
という原則である。何の意味があるのかと思う人もいると思う。実感したければやってみてくださいという話かもしれない。

リアス・カデム、ロバート・ローバーの1ページマネジメントは最近、新版の翻訳(「1ページマネジャー」というタイトル)が出たので新しい考えだと思っている人も多いと思うが、この本が最初に出版されたのは80年代である。ちょうど著者が会社に入ったことだが、その自分にずいぶん流行っていたらしい。著者の勤務していた会社でもあった。企画書、報告書はすべて1枚にまとめる。そして、その中で流れを明確にする。ただし、1枚は1枚でもA3で1枚だったが。


◆必須のものだけを書くと1ページになる

新入社員にこれを求められるとかなりつらいことが後でわかった(新入社員のときは、
そういうものだと思っていたのであまり感じなかったが)。まず、仕事の内容や、仕事の関係者、背景を知らない限り、1ページにまとめられない。僕が会社に入って初めて担当した仕事は、発電用プラントのボイラーの新しい制御用モデルのプロトタイプを作るという研究業務だった。勉強を兼ねて3か月程度でやれと言われた。指導員が一人ついたが、実務はすべて一人でやる規模の仕事であるが、ここでまず、企画書(研究計画書)を書かなくてはならなかった。同じような研究というのはあったので、
その計画書や報告書を参考にしろと言われて書こうとするのだが、なかなか、書けない。計画書の様式は決まっているし、何を書かなくてはならないかも前のものをみればそれなりに分かるのだが、報告書と照らし合わせても、なぜ、そこを書くのかがよくわからない。たとえば、成果の中で、書いてあるものとないものがある。これすら理由がよくわからない。


◆すぐれた成果は明確な目標から始まる

後でわかったのだが、必ず必要な成果物と、できればほしい成果物、派生的に出てくる成果物など、報告書にはいろいろと混ざってくる。計画書には、必須のものだけを書くようにすると、だいたい、1ページの様式に入るということらしい。

この指導の中で、指導員が教えてくれたことが、今回のサプリ。「すぐれた成果は明確な目標から始まる」。そのときは当然知らなかったが、これは1ページマネジメントにある言葉「Good performance starts with clear goals」であったことについ最近気がついた。その指導員がリアス・カデム&ロバート・ローバーの言葉を引用したのが、経験的に気がついていたのかは今となっては不明だが、少なくとも僕のキャリアの中で非常に影響のあった言葉であることは間違いない。


◆膨大なスコープ記述書のできる理由

さて、話は変わってプロジェクトマネジメント。スコープ記述書を見ていると、上位組織の能力が分かる。膨大なスコープ記述書を作っているプロジェクトの上位組織は例外なく丸投げ体質がある。賢明なみなさんは理由は説明するまでもないだろう。著者が新入社員のときに計画書を1枚の様式に書けなかったのと同じ理由だ。新入社員であれば説明してもたぶんすぐには理解できない(たぶん、著者の指導員も説明はしてくれたと思う)。しかし、プロジェクトマネジャーに指名されるような人が同じ理由でできないのは、明らかに上位マネジメントの説明不足だ。プロジェクトマネジャーも説明を受けないからといって全く知らないわけではない。多くの場合、担当者として類似の業務をやってきているので、何を作ればよいか、アプローチはなどそれなりに書ける。ただし、プロジェクトの目的がちきんとわかっていないので、目標にメリハリをつけることができない。したがって、膨大な量になる。

これではよい成果は生まれない。すでにスタートのところで失敗している。目標が明確になっているようで、なっていないのだ。


◆プロジェクトが1ページなら、上位組織は半ページでよい

特にひどい場合には、上位マネジャーも分かっているかどうか、怪しいケースがある。
著者たちは、1ページ計画書のコンサルティングを推進しているのだが、上位組織が1ページでは分からないので1ページをフェースペーパーとして、補足説明書をつけろと言い出す組織があるのだ。組織の階層は上に行けばいくほど、押さえておくべき点が少なくなるととにも、責任が大きくなる。現場がA3で1枚なら、エグゼクティブへの報告はA4で1枚で十分だ。こんな組織のプロジェクトはまず、うまくいかない。

あなたも1枚運動をしてみませんか?


【参考資料】
リアス・カデム、ロバート・ローバー(小林薫訳)「1ページマネジャー」、東洋経済新報社(2008)

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