PMサプリ107:三知って、その三つを実践する

【PMサプリ107:三知って、その三つを実践する】

百知って何もしないより、三知って、その三つを実践する方がよい(師友塾塾長・大越俊夫)


【効用】
・PM体質改善
  リーダーシップ発揮、実行力向上、顧客感度アップ、自己統制力アップ
・PM力向上
  ピープルマネジメント力向上、チームをまとめる力の向上、リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

【成分】

◆わかるとは聞いたことを実行すること

大越俊夫氏は、「教える」ということで多様なキャリアを持たれる方だが、中でも有名なのは京都は西陣に設立した不登校・高校中退のための塾「師友塾」である(その後、すぐに神戸御影に移ったので、神戸にある塾として有名)。その大越氏が2003年に、過去の過去の塾生6000人を動かした言葉ということで、自身の言葉の中から27の言葉を「6000人を一瞬で変えたひと言」という書籍にまとめて出版さ
れている。今回のサプリはこの本の中からの言葉である。

さて、大越氏がこのようにいうココロはどこにあるのか?大越氏はこの言葉に加えて

たった三つでもその三つをきちんと実行できる人間を人は信頼する

と指摘する。これが大越氏の信念なのだろう。さらに、こうも続ける。

「わかる」とは聞いたことを実行すること。実行できないのにわかったというのは、信頼を失うことにもつながる

不登校や高校中退といったある種の挫折を経験した若者には、手の届きそうな目標を与えてくれる力強い言葉は非常に響く言葉なのだろうと思う。


◆チームは和気あいあいのいい雰囲気

プロジェクトが学校だとは言わないが、大越氏のいう信頼は、どんな分野でも通用する話だと思う。知識としてどんどんいろいろなことを身につけていく人は少なくない。しかし、行動に移す人はそんなに多くない。そして、知識を身につけながらも、行動をしない人はだんだん信頼を失っていくという点も同じだ。

大越氏の言葉は中高校生に向けたものだが、三つを知って、その三つをきちんと実行することが信頼に結び付くことは社会人やプロジェクトマネジャーにも確実に通用する。

たとえば、チームマネジメントを考えてみよう。著者の経験では、多くの人がチームをまとめるというのはそんなに難しいことではない(うまくいっている)と思っている。同じステークホルダでも、上位組織や顧客とは対立しているのだが、チームメンバーとは和気あいあいとやっている人は多い。また、この状況を利用して、上位組織や顧客を仮想の敵として、まとまって敵と戦うというストーリーでチームをまとめているようなプロジェクトマネジャーも時々みかける。

そして、チームの人間関係の上に、無理をいうというのがなんとなく正当化されている。あるいは、チームの人間関係を保つために上位組織や顧客に無理を言っている。


◆表面的な人間関係と信頼関係は違う

ここで曲者は、こういった和気あいあいの表面的な人間関係と信頼関係は違うということだ。

あるプロジェクトのコンサルティングをした際の話であるが、表面的にはチームの雰囲気はいいのだが、メンバーがプロジェクトマネジャーの指示をあまりきいていないという現象に遭遇したことがある。ミーティングの際にプロジェクトマネジャーS氏に対しては「はい、わかりました」というのだが、実際にはやらないことが目につくようになってきた。

特に目につくメンバー何人かに聞いてみると、「Sさんはいい人なのだが、そんなに信頼していない」といういうのだ。

さらに観察してみると、S氏は自分が言っていることを自身が言っていることを必ずしもやっていない。たとえば、メンバーには「悪い報告はできるだけ早くしよう」と言いながら、自身はプロジェクトの上位管理者に対してそれを実行していない。メンバーはよく見ていて、敏感に反応しているようである。

このプロジェクトマネジャーはなかなかの勉強家で、コンサルタントから見てもいろいろなことを知っている。PMOのスタッフに聞いたところでは、PMOに対してもプロジェクトマネジメントの進め方についていろいろと意見をしており、採用されたものも少なくないという。しかし、制度かされても彼自身はあまり実行していないとも言っていた。


◆有言実行こそが信頼構築の方法

あなたの周りにも彼のようなプロジェクトマネジャーはいるのではないだろうか?

数多くのプロジェクトマネジャーを見ていて、周囲からできると目されている人の中には、結構、こういった評論家タイプが多い。著者のようなコンサルタントは「言ってナンボ」だが、プロジェクトマネジャーは「行動してナンボ」である。

大越先生のいうように、百のことを知って何もしないというのは最悪である。三つといわず、ひとつずつでもいいので、知ったことを確実に自分のものにしていく。その中に、メンバーはもちろん、ステークホルダの信頼も芽生えていくのではないかと思う。

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