PMサプリ34:プロジェクトの敵はリスク

【PMサプリ34:プロジェクトの敵はリスク】

れを知り己を知れば、百戦して殆からず。
彼れを知らずして己を知れば、一勝一負す。
彼れを知らず己を知らざれば、戦うごとに必ず殆し。
                         (孫子「兵法」より)

【効用】
・PM体質改善
  自信をつける、リーダーシップ発揮、問題解決能力向上、リスク管理力アップ、  バランス感覚の洗練、顧客感度アップ、自己統制力アップ
・PM力向上
  チームをまとめる力の向上、リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上


【成分】

彼れを知り己を知れば、百戦して殆(あやう)からず。
彼れを知らずして己を知れば、一勝一負(いっしょういっぷ)す。
彼れを知らず己を知らざれば、戦うごとに必ず殆し。(孫子「兵法」より)


◆「孫子以前に兵書無く、孫子以降 に兵書無し」

「孫子」の中で最も有名な箇所の一つだろう。中国では「孫子以前に兵書無く、孫子以降 に兵書無し」といわれるくらい、有名であり、心酔されている。日本ではそれほどではないが、よく引用されるこの箇所などは、たいていの人が聞いたことのあるではないだろうか。サッカーのW杯の真っ最中であるが、スポーツでよく引用されるフレーズでもある。

自分のことを知り、また、敵のことを知っていれば、百回戦っても、百回とも勝てる。
自分を知っていても、敵を知らなければ、勝ったり、負けたりである。敵も自分も知らなければ、百回戦えば、百回とも負ける。自分を知ることは難しい。敵やライバルを知ることはもっと難しい。しかし、勝利を確実にするためには、両方をしっかりと知る必要がある。これが孫子の教えである。

ビジネスにも同じような側面がある。例えば、競合企業との戦いなどはその典型である。それゆえに、ビジネスでは孫子の兵法は重視されているし、「ドラッカー」と同じくらい心酔している人も少なくない。

自分の強み、弱みを知り、相手の強みと弱みを知る。そして、自分の強みを活かし、相手の弱みを突くような戦略(戦術)を考案する。これがビジネス、戦略的マネジメントの鉄則だが、これはまさに、この孫子の兵法で言っていることである。


◆プロジェクトにおける彼れと己は?

さて、プロジェクト。著者はこの孫氏のフレーズをプロジェクトマネジメントのコンサルティングの場面でよく引用する。

プロジェクトマネジャーに「このプロジェクトで自分と敵は誰か」と尋ねる。返ってくる答えは、自分はプロジェクト、敵はステークホルダだという。あるいは、自分はプロジェクトマネジャー自身であり、敵はメンバーも含めてすべてのステークホルダだというのが多い。確かにそのように思いたくなる気持ちは理解できなくはない。考えようによっては顧客との間に戦いがあり、また、メンバーとの間にも戦いがある。
これがプロジェクトである。おそらく、これらは「イニシャティブ(主導権)」のようなものを争う戦いであろう。

分からなくはないが、おそらく、顧客やメンバーなどのステークホルダと敵だと考えた瞬間にそのプロジェクトは失敗への第一歩を踏み出すことになるだろう。彼らとプロジェクトマネジャーの間には利害関係の対立はあっても決して敵ではない。なぜなら、同じ目的を持ち、同じ目標を立ててプロジェクトに取り組んでいるからだ。いわば同じ船に乗り合わせて、その中で座席争いをしているようなものである。


◆プロジェクトについて知るとは

では、プロジェクトにおける自分と敵というのは誰なのか?自分はプロジェクト自身である。ここでよく考えたいのは、自分を知るというのはどういうことかである。プロジェクトにおいて自分を知るというのは、自らのプロジェクトの強みと弱みを知るということである。意外なくらい、意識されていないことだ。例えば、プロジェクトメンバーの中で、Aさんは若干スキルが低いとか、Bさんはもう一つのプロジェクトを掛け持っておりスケジュール面でリスクを抱えているといったことはプロジェクトマネジャーであれば考える。

だから、このプロジェクトチームは○○である。ということはほとんど考えられることがない。チームを考えるのではなく、いきなり、「じゃあ、CリーダーにはAさんといつも一緒に仕事をしているので、Aさんのサポートをお願いします。BさんはDさんとよく話し合いをし、できるだけ前倒しに作業スケジュールを決めてください」といった対応策の議論になる。ある意味で極めて現実的である。

しかし、よく考えてみてほしい。Aさんがスキルが低いということは、ひょっとすると、プロジェクト全体の足を引っ張る可能性がある。そう考えると、自分たちのチームにはスキルの低い人がいるという弱みがある。この弱みを消す、あるいは、影響を小さくするにはどうすればよいかということを考えないとプロジェクトの成功はおぼつかない。それはCさん一人の問題ではなく、チームとしてAさんをカバーするため
にAさんの仕事の一部をシェアすることかもしれないし、ひょっとするとチームの雰囲気をよくすることによってAさんに成長してもらうような環境を作ることかもしれない。いずれにしても、自分たちがどういうチームなのかということを知らなくては手の打ちようがない。

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