PMサプリ10:マネジメントの成果

【PMサプリ10:マネジメントの成果】

「マネジメントの成果は5つの仕事で決まる」(P.F.ドラッカー)


【効用】

・PM体質改善
  PM体質の全般に対して効果があります
・PM力向上
  PM力向上の全般に対して効果があります
・トラブル緩和
  モチベーション向上


【成分】

◆はじめに

サプリでは、あまり大きなテーマはかけないようにしている。が、今回は、新年を迎えての第一号であるので、ちょっと大きな話です。


◆マネジメントという仕事

ドラッカーの数々の金言の中で、このフレーズほど、ドラッカーでないといえないと思う言葉はない。マネジメントの発明者といわれる所以でもあろう。これは、書籍では、「マネジメント−課題、責任、実践」の中に書かれているフレーズである。

ドラッカーの言っている5つの仕事とは

 (1)目標の設定
 (2)組織する
 (3)チームを作る
 (4)評価する
 (5)「自らを含めて」人材育成をする

の5つだ。ドカッカーの意図については、

 ドラッカー「マネジメント−課題、責任、実践(上)」、ダイヤモンド社(1993)
 

を読んで戴きたい。ここでは、ドラッカーの言葉を「プロジェクト」のマネジメントを念頭において少し解釈してみたい。


◆プロジェクトマネジメントという仕事〜その1 スコープの設定

マネジメントの第一の仕事である目標の設定というのは、目標領域を決め、それぞれについて到達地点を決めることである。プロジェクトマネジメントではスコープというわかりにくい概念があるが、スコープは目標領域を指していると考えると非常にわかりやすくなる。そして、その目標領域で到達地点を決めるが、これがスコープ定義である。そして、定義したスコープの達成のために行うべきこと、つまり、プロジェクト計画を策定する。

ここまでが、目標の設定だと思い勝ちであるが、ドラッカーの言い分はそうではない。
ステークホルダとのコミュニケーションによって、「その目標を意味のあるものにする」ことまでがこの仕事の範囲だといっている。これは非常に含蓄のある言葉である。

目標を意味のあるものにするには、

 ・目標そのものに対する組織の承認
 ・計画に対する関係者の合意

の2つが最低限必要であり、これらを行うコミュニケーションが必要である。

言い換えると、スコープが定義され、計画が策定された時点では、重要なステークホルダはスコープや計画に対して協力の合意が出来ている必要がある。当然のことだが、意外と見落としがちな点である。


◆プロジェクトマネジメントという仕事〜その2 プロジェクトを組織する

第二の仕事である「組織する」というのは、プロジェクトのアクティビティを決定し、そのアクティビティに対して、組織構造を決める。プロジェクトマネジメントでは、OBS(Organization Breakdown Structure)という手法があるが、OBSでやっていることをイメージするとわかりやすい。この際に担当者を決めるだけでは不十分であることに注意をしていく必要がある。組織するということは、そのプロジェクトの目標を達成するための基本的な組織構造を決めることであり、組織を作ることよりはもう少し、深い意味がある。組織を決めるということは、人が変わっても、組織として同じ機能を果たすということである。


◆プロジェクトマネジメントという仕事〜その3 チームビルディング

第三の仕事は「チームを作る」ことである。これは比較的プロジェクトマネジメントでは馴染み深い。チームを目標達成に向けて動機付け、コミュニケーションを図っていくことである。


◆プロジェクトマネジメントという仕事〜その4 パフォーマンス評価(進捗管理)

第四の仕事は「評価」をすることである。プロジェクトのパフォーマンスについて評価することはプロジェクトマネジメントの基本である。スケジュールに対するパフォーマンス、コストに対するパフォーマンスなどの指標でプロジェクトを評価していくのが普通である。評価の目的は2つあり、プロジェクトチームとしての生産性を改善することと、プロジェクトメンバー個人としての生産性を改善していくことである。

ここで注意しなくてはならないのは、評価は必ずしも管理は意味していないことである。これは評価の結果をどのように活用するかにかかっている。マネジメントの仕事としての評価は具体的な改善方法の創出に結びついていかなくてはならない。


◆プロジェクトマネジメントという仕事〜その5 チーム育成

マネジメントの最後の仕事は「自らを含めて」人材育成をすることである。「自らを含めて」という点に非常に含蓄がある。プロジェクトマネジメントの重要な仕事の一つは、チームを育成することである。チームを育成するためには、プロジェクトリーダーが自分自身を育成することが不可欠である。メンバーに対して指導的な立場に立つためには、自身が継続的に成長していく必要がある。メンバーの成長を加速するためには、リーダーが成長を誘発する必要があるのだ。

さて、以上の5つがプロジェクトマネジメントの仕事であるといわれたときに、あなたはどのような感想を持つだろうか?簡単だと思う人、難しいと思う人、いずれもあると思う。重要なことはマネジメントという「何をやってよいかよくわからないこと」を明確に5つの仕事だとしている点にある。これがドラッカーの慧眼であろう。


◆PMBOKのマネジメント

もう一つ見逃してはならない点がある。それはPMBOKはこの5つのマネジメント仕事に対して、大きくは過不足のない体系になっている点である。PMBOKを使うときには、やたらと複雑なツールから入るのではなく、このような原理から入ってみてはどうだろうか?

 (2006年1月5日号より)
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