第6回(2005.06.10) 
これは使えるぞ!PMBOK3(6):タイム
 

前回に引き続き、知識エリアの観点からの変更点について、特に変更されたプロセスについて記述します。

ここでは、
△:立ち上げプロセス群
○:計画プロセス群
◎:実行プロセス群
●:監視コントロール・プロセス群
▲:終結プロセス群
でプロセス群を表現しています。

■プロジェクト・タイム・マネジメント
タイム知識エリアには、計画プロセス群と監視・コントロールプロセス群のプロセスがあり、計画プロセス群の「アクティビティ資源見積り」がコスト知識エリアから移動しています。前回では、以下のプロセスについて、記述しました。

○「アクティビティ定義」
○「アクティビティ順序設定」
○「アクティビティ資源見積り」
○「アクティビティ所要期間見積り」
○「スケジュール作成」
●「スケジュール・コントロール」

今回は、「スケジュール作成」について、もう少し詳しく記述します。

○「スケジュール作成」のインプット
2000では資源プール記述書というインプットがありましたが、PMBOK3では、なくなりました。
2000の「資源計画」(PMBOK3では「アクティビティ資源見積り」)でも、資源プール記述というインプットがありましたが、資源の可用性(原文:resource availability)に変わっています。
どの資源(人員、機器、物質など)が利用できるか、どこから供給されるか、いつ利用できるかという意味自体は変わっていないようです。

「アクティビティ資源見積り」のアウトプットにアクティビティ資源に対する要求事項があり、2000ではWBSの最下位レベルの各要素がどのような資源をどれだけ必要とするかと説明していますが、PMBOK3では、可用性、使用量を決めた前提条件が記述される、と可用性が追記されています。
そして、このアクティビティ資源に対する要求事項がスケジュール作成のインプットになっています。

ですが、この可用という言葉は、日本語変換でも素直に出てきませんし、広辞苑にもないそうで、コンピュータ用語だそうですね。
大昔に情報処理の試験勉強をしていたときなどもどうも、可用性という言葉がよくわからないままに使っていましたが、ここでも、また、考え込んでしまいました。

アベイラビリティ、つまりシステムの壊れにくさだそうです。ここでは資源が使えるかどうかの入手可能性と考えていいのではないでしょうか。(壊れにくさを要求しているのかもしれませんが)

もうひとつ、リスク・マネジメント計画書もなくなり、プロジェクトマネジメント計画書の中のリスク登録簿に変わっています。
リスク・マネジメント計画書では、「リスク識別」〜「リスク監視およびコントロール」までのリスクマネジメント・プロセスにおいて、いかに構成し実行するかを記述します。従って、個々のリスクの対応については取り上げません。

これに反して、リスク登録簿はリスク対応計画書とも呼ばれ、識別したすべてのリスクを詳細に記述した文書のことで、「リスク識別」〜「リスク監視およびコントロール」プロセスにおいて、内容が更新されていきます。

PMBOK3の「スケジュール作成」では、(リスクマネジメントの方針ではなく)個々のリスクについて懸案しながら作成すると、なったようです。
このあたりも、すっきりしてきました。

○「スケジュール作成」のツールと技法
ガート(GERT)とパート(PERT)がツールと技法から削除されました。ガートは、PMBOKを勉強して初めて知った言葉で、インターネットで検索しても中国語の説明しか出てこず、私は実体がよくわからないまま終わってしまいました。

また、パート(PERT)については大昔に情報処理の勉強をしたときに、クリティカルパスと同義で使っていたような記憶がありますが、ベータ分析による3点見積りのことであると初めて知りまして、カルチャーショックを受けたものです。

そして、クリティカル・チェーン法が追加されています。クリティカル・チェーン法とは、各工程の見積りにおいて安全余裕をなくし、工程全体で安全余裕を吸収したバッファを設けるという考え方です。バッファは各工程の安全余裕の合計の約2分の1で十分です。

○「スケジュール作成」のアウトプット
スケジュール・ベースラインが明示されています。承認を受けるためのプロジェクト・スケジュールのことで開始日と終了日が記載されているベースライン(計画)です
。2000には、アウトプットとしてスケジュール・ベースラインはありませんでしたが、PMBOK3ではこのように明示され、他の知識エリア(スコープ、コスト、品質)と同様、ベースラインが強調されています。


今回はタイム知識エリアの「スケジュール作成」プロセスについて記述しました。「スケジュール・コントロール」を、次回に取り上げる予定です。

◆お奨め図書
もちろん、PMBOK第3版の日本語版です
 Project Management Instytute
"A Guide To The Project Management Body Of Knowledge: Official Japanese Translation"(2005.2)
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