第3回(2005.03.09) 
これは使えるぞ!PMBOK3(3):統合
 

◆各知識エリアで変更されたプロセス(1)

 今回は知識エリアの観点からの変更点について、特に変更されたプロセスについて記述します。
ここでは、
△:立ち上げプロセス群
○:計画プロセス群
◎:実行プロセス群
●:監視コントロール・プロセス群
▲:終結プロセス群

でプロセス群を表現しています。

■プロジェクト統合マネジメント

立ち上げプロセス群では、スコープ知識エリアの「立ち上げ」が削除され、統合知識エリアの「プロジェクト憲章作成」、「プロジェクト・スコープ記述書暫定版作成」が新規に追加されています。

監視コントロール・プロセス群では「プロジェクト作業の監視コントロール」が追加されています。

終結プロセス群では、コミュニケーション知識エリアの「完了手続き」が削除され、「プロジェクト終結」が新規に追加されています。

このことから、PMBOK3ではプロジェクトを統合という観点から一貫して見直した内容になっていると言えるでしょう。

△「プロジェクト憲章作成」
このプロセスでは、プロジェクトを公式に認定するプロジェクト憲章を作成します。
スコープのみではなく、すべての知識エリアを検討・調整する点が2000(PMBOK2000のことで2000とここでは略しています)からの変更点です。

△「プロジェクト・スコープ記述書暫定版作成」
このプロセスでは、プロジェクトで達成すべきものやプロジェクトの目的や制約条件などを定義するプロジェクト・スコープ記述書を作成します。

2000では、計画プロセス群で作成していたスコープ記述書がプロジェクト・スコープ記述書に名称変更になりました。しかし、プロジェクト・スコープとは、達成すべきニーズのことで2000でも同様の考えでしたので、単にプロジェクト・スコープということを強調しているだけのようです。
立ち上げ段階でわかる限りのプロジェクト・スコープについて、立ち上げプロセス群で暫定版として作成する点が2000からの変更点です。

○「プロジェクトマネジメント計画書作成」
2000の「プロジェクト計画の策定」から名称変更になっています。

2000では、他の計画プロセスで作成された計画から首尾一貫したプロジェクト計画書を作成し、それを元にプロジェクトの実行を行い、プロジェクト・コントロールの指針とするとなっていました。また、プロジェクト・マネジメント計画書としては特になく、該当するものとして、プロジェクトマネジメントの方法と戦略計画、とリスク・マネジメント計画書、個々のマネジメント計画書となっていました。

PMBOK3では、プロジェクトの実行、監視コントロール、終結の方法を規定するプロジェクト・マネジメント計画書を作成するとなっています。

プロジェクト・マネジメント計画書には、個々の知識エリアで作成されるマネジメント計画書(例えば、「スコープ計画」で作成されるプロジェクト・スコープ・マネジメント計画書)やこの「プロジェクト・マネジメント計画書作成」で作成されるマネジメント計画書(例えば、スケジュール・マネジメント計画書)や資源カレンダー、スケジュール・ベースライン、コストベースライン、品質ベースラインなどが含まれます。

そして、プロジェクト・マネジメント計画書は統合変更管理プロセスを通じて更新することになっています。

ここで驚いたことが二つほどあります。それは本メルマガ編集長の好川が従来から申しておりましたことが、PMBOK3で明確に記述されていることです。

・プロジェクト計画書とプロジェクト・マネジメント計画書は異なり、それぞれの知識エリアのマネジメント計画書を作成すべき

・ベースラインにはスケジュール・ベースラインとコスト・ベースラインだけではなく品質ベースラインもある

なんだかPMBOK3の次が出るときには予想を聞きたいような意地悪な気持ちになってきました....

◎「プロジェクト実行の指揮・マネジメント」
2000の「プロジェクト計画の実行」から名称変更になっています。

2000では、プロジェクト計画を実行するプロセスですが、プロジェクト・マネジャーやマネジメント・チームはプロジェクトの実施に伴う調整や指揮を行いプロジェクト・ベースラインに対する実績を継続的に監視・分析を行い、完成時のコストとスケジュールの結果を予測するとなっています。

PMBOK3では、プロジェクト・マネジャーやマネジメント・チームはプロジェクト・スコープ記述書に記載されている作業を達成するためにプロジェクト・マネジメント計画を実行し、その実行のための活動を行うとあります。

ここでも、プロジェクト・マネジメント計画書が2000より強調されています。


●「プロジェクト作業の監視コントロール」

PMBOK3で新規に追加されたプロセスです。そして、監視コントロール・プロセス群では、立ち上げ、計画、実行、終結に関連するプロセスを監視するために実行するプロセスとPMBOK3では考えています。

2000ではコントロールプロセス群は、プロジェクト目標を達成するために計画との差異を検出するための進捗を監視・測定し必要な処置を行うと体系付けられていました。

PMBOK3では、監視コントロール・プロセス群と名称が変更され、プロジェクト全体の作業の監視コントロールを行うと体系付けています。監視では「プロジェクト実行の指揮・マネジメント」で作成される作業パフォーマンス情報の収集、測定、配布などを行います。


●「統合変更管理」

プロジェクトはプロジェクト・マネジメント計画書通りに実行されることはほとんどなく、プロジェクト・マネジメント計画書やプロジェクト・スコープ記述書、要素成果物について、変更を継続的にマネジメントすることで維持していく必要があります。

2000では「統合変更管理」を
・変更が納得できるものであるかどうか
・変更の発生を確定する
・変更が発生したときは実際の変更をマネジメントする

の3点で定義していましたが、PMBOK3では、要素成果物が「統合変更管理」のインプット、アウトプットともにあげられ、そして、「統合変更管理」で承認されるとあります。
それでは「スコープ検証」は、とページをめくると、検査というツールと技法で要素成果物の顧客やスポンサー、ステークホルダーの要素成果物の受入の確認を行うとあります。2000の「スコープ検証」はプロジェクト・スコープの公式な受け入れでしたので、PMBOK3では要素成果物という表現でより具体的になっています。

つまり、「統合変更管理」での要素成果物の承認とは変更に関する承認を行い、「スコープ検証」でステークホルダーでの受け入れの確認を行います。ちなみに「品質管理」では、要素成果物が適切な品質規格に適合しているかの確認を行います。


▲「プロジェクト終結」

2000のコミュニケーション知識エリアの「完了手続き」が削除され、新規に追加されたプロセスです。

プロジェクトマネジメントのすべてのアクティビティを終了し、プロジェクトを公式に終結し、事務終了手順と契約終了手順を作成します。契約終了手順には契約により作成された成果物の検証と契約に関する事務終了が含まれています。

2000の「プロジェクト終結」では、実績測定や成果物に関する文書からプロジェクトの公式記録と教訓を作成し、プロジェクトの終了を行っています。

PMBOK3では、プロジェクトを終結するための手順と公式な受け入れ文書などのプロジェクト終結に関する文書を作成すると内容がより具体的になっています。

今回は知識エリアの観点からの変更点について、特に、プロセス群が移動したプロセスについて、記述しようと思っていましたが、ずいぶん変更されていたために、統合で息切れがしてしまいました。次回はスコープから続けます。

◆お奨め図書
もちろん、PMBOK第3版の日本語版です
 Project Management Instytute
"A Guide To The Project Management Body Of Knowledge: Official Japanese Translation"(2005.2)
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