第13回(2006.02.01) 
これは使えるぞ!PMBOK3(13):リスク(2)
 

◆各知識エリアで変更されたプロセス(11)
前回に引き続き、知識エリアの観点からの変更点について、特に変更されたプロセス
について記述します。

ここでは、
△:立ち上げプロセス群
○:計画プロセス群
◎:実行プロセス群
●:監視コントロール・プロセス群
▲:終結プロセス群
でプロセス群を表現しています。

■プロジェクト・リスク・マネジメント(2)
前回は、プロジェクト計画に対して何らかの影響を与える事象がプロジェクト・リスクであり、プロジェクト・リスクが発生するとプロジェクトの実行が計画とずれてしまい、その差異を少なくするために、プロジェクト・リスク・マネジメントが必要であることを述べました。

PMBOKのリスク知識エリアには、計画プロセス群に「リスク・マネジメント計画」、「リスク識別」、「定性的リスク分析」、「定量的リスク分析」、「リスク対応計画」、実行プロセス群はなく、監視コントロール・プロセス群に「リスクの監視コントロール」があり、前回は「定量的リスク分析」までを取り上げました。

この段階では、プロジェクト・リスク・マネジメントの主要なアウトプットであるリスク登録簿には、次の情報があります

「リスク識別」でのアウトプット
・プロジェクト前提条件:プロジェクト計画を作成する際に前提としたこと
・リスク区分:リスク事象を体系的に分類する区分
・識別したリスク:プロジェクトに影響を与える事象
・根本原因:リスクを発生させる根本的状態、原因

「定性的リスク分析」でのアウトプット
・プロジェクト・リスクの優先順位リスト:発生確率・影響度から査定
・短期対応リスクのリスト:短期対応が必要なリスクとその他に分類、緊急性
・追加の分析と対応を要するリスクのリスト:定量的リスク分析の要否
                     リスク対応の要否
・低優先度リスクの監視リスト:重要と査定しなかったリスクのリスト
・定性的リスク分析結果の傾向:緊急性や重要性を変化させるために傾向を見る

「定量的リスク分析」でのアウトプット
・プロジェクトの確率的分布:コストとスケジュールの確率的な見積もり
・コストとタイムの目標達成の確率:プロジェクト目標(納期・予算)を達成する確

・定量化したリスクの優先順位リスト:プロジェクトに大きな脅威を及ぼすリスク
・定量的リスク分析結果の傾向:緊急性や重要性を変化させるために傾向を見る

したがって、リスク事象が洗い出されてその原因とリスクが発生した場合の影響(発生確率と影響度)を推定し、対応すべきリスクの優先順位が決まっている段階と言えます。
今回は、その後の「リスク対応計画」を取り上げます。

○「リスク対応計画」
「リスク対応計画」では、「定性的リスク分析」または「定量的リスク分析」で決定した優先順位の高いリスクについて適切な対応計画を選択します。
PMBOK2000では、リスクの戦略として、回避、軽減、転嫁、受容がツールと技法としてありましたが、PMBOK3ではマイナスのリスクとプラスのリスクに分けられました。

マイナスのリスク(脅威)に対する戦略として、次の3つの戦略があります。
回避:リスクによってもたらされる脅威を取り除く
転嫁:リスクの発生結果をリスク対応の責任とともに第三者へ移す
   たとえば、保険や瑕疵担保など
軽減:リスク事象の発生確率と発生結果のいずれか、または両方を減らす

プラスのリスク(好機)に対する戦略として、次の3つの戦略があります。
活用:不確実な事象(プラスのリスク)が確実に起こるようにする
共有:プロジェクトの利益となる好機を捉える能力の最も高い第三者と共有の関係(オーナーシップ)を持つ
強化:プラスのリスクの影響を強める

脅威・好機に対する戦略として、次の戦略があります。
受容:リスク事象への対応として、プロジェクト計画を変更しない
   能動的な受容と積極的な受容があり、
   能動的な受容では、脅威や好機が起きた時に対処し、
   積極的な受容では、リスクに対して、時間、金、資源を含むコンティンジェンシー予備を準備します。

「リスク対応計画」のアウトプットとしてリスク登録簿に次の情報が追加されます。
追加される情報自体はPMBOK2000と大きな相違はありません。

・リスク担当者とその責任
・合意した対応戦略
・選択した対応戦略を実施するための具体的な行動
・リスク発生の兆候と警告サイン
・選択した対応策を実行するために必要な予算とアクティビティ
・タイムとコストのコンティンジェンシー予備
・コンティンジェンシー計画とその実行のきっかけを与えるトリガ(引き金)
・計画した対応策を講じた後に残る残存リスク
・リスク対応策を実行した結果から直接発生する二次リスク

「リスクの監視コントロール」は、次回へ回したいと思います。

◆お奨め図書
もちろん、PMBOK第3版の日本語版です
 Project Management Instytute
"A Guide To The Project Management Body Of Knowledge: Official Japanese Translation"(2005.2)
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