第12回(2005.12.07) 
これは使えるぞ!PMBOK3(12):リスク
 

◆各知識エリアで変更されたプロセス(10):リスク
前回に引き続き、知識エリアの観点からの変更点について、特に変更されたプロセスについて記述します。

ここでは、
△:立ち上げプロセス群
○:計画プロセス群
◎:実行プロセス群
●:監視コントロール・プロセス群
▲:終結プロセス群
でプロセス群を表現しています。

■プロジェクト・リスク・マネジメント
プロジェクト・リスク・マネジメントは、プロジェクトに関するリスクのマネジメントに必要なプロセスからなっています。

プロジェクト・リスクとは、プロジェクト計画に対して何らかの影響を与える事象であり、そのため、プロジェクト・リスクが発生するとプロジェクトの実行が計画とずれてしまいます。その差異を少なくするために、プロジェクト・リスク・マネジメントを行います。
そして、その目標はプロジェクトに対してプラスとなる事象の確率と影響を増大し、マイナスとなる事象の確率と影響を減らすことでであり、そのために必要なリスクのマネジメントの計画、識別、分析、対応、監視コントロールを行います。

PMBOKのリスク知識エリアには、計画プロセス群に「リスク・マネジメント計画」、「リスク識別」、「定性的リスク分析」、「定量的リスク分析」、「リスク対応計画」、実行プロセス群がなく、監視コントロール・プロセス群に「リスクの監視コントロール」があります。

リスク知識エリアは他の知識エリアに比べて、非常に充実しているプロセスであり、PMBOKのプロセスをその通り行うことで、必要十分なリスクのマネジメントができると言われています。
もちろん、プロジェクトの規模によっては、行わなくてもよいプロセスもあり、そのことについてもPMBOKでは言及しています。

そのため、PMBOK3での変更点はほとんどありません。
「リスクの監視コントロール」プロセスの中点「・」がなくなったことがプロセス名の唯一の変更点です。(2000では「リスクの監視・コントロール」)
その他、インプット、ツールと技法、アウトプットが若干変更されていますが、流れとしては概ね変わりはなく、最も大きな変更点は、「リスク識別」、「定性的リスク分析」、「定量的リスク分析」、「リスク対応計画」、「リスクの監視コントロール」のアウトプットがリスク登録簿に統一されていることです。

そこで、それぞれのプロセスでリスク登録簿に何が追記されていくのかを見ていきましょう。

○「リスク・マネジメント計画」
「リスク・マネジメント計画」では、プロジェクトにおけるリスク・マネジメントの体系と実行方法や方針を記述するリスク・マネジメント計画書を作成します。リスク・マネジメント計画書は、以降のプロセスすべてのインプットとなります。

○「リスク識別」
「リスク識別」では、プロジェクトに影響するリスクを見定めて、リスク登録簿と呼ばれる文書に記載します。

ここでは、次のような情報をリスク登録簿に記載します。
・識別したリスク:プロジェクトに影響を与える事象
・根本原因:リスクを発生させる根本的状態、原因
・プロジェクト前提条件:プロジェクト計画を作成する際に前提としたこと
・リスク区分:リスク事象を体系的に分類する区分
       リスクの傾向を判断するカテゴリになります

○「定性的リスク分析」
「定性的リスク分析」では、識別したリスクの発生確率、影響度を査定し、優先順位付けを行います。

ここでは、次のような情報をリスク登録簿に記載します。
・プロジェクト・リスクの優先順位リスト:発生確率・影響度から査定
・短期対応リスクのリスト:短期対応が必要なリスクとその他に分類、緊急性
・追加の分析と対応を要するリスクのリスト:定量的リスク分析の要否
                         リスク対応の要否
・低優先度リスクの監視リスト:重要と査定しなかったリスクのリスト
・定性的リスク分析結果の傾向:緊急性や重要性を変化させるために傾向を見る

○「定量的リスク分析」
「定量的リスク分析」では、優先順位の高いリスクについて、コスト、スケジュールの観点から定量的な分析を行います。

ここでは、次のような情報をリスク登録簿に記載します。
・プロジェクトの確率的分布:コストとスケジュールの確率的な見積もり
・コストとタイムの目標達成の確率:プロジェクト目標(納期・予算)を達成する確率
・定量化したリスクの優先順位リスト:プロジェクトに大きな脅威を及ぼすリスク
・定量的リスク分析結果の傾向:緊急性や重要性を変化させるために傾向を見る

○「リスク対応計画」
「リスク対応計画」では、優先順位の高いリスクについて適切な対応計画を選択します。
「リスク対応計画」のツールと技法の戦略が、PMBOK3から、マイナスのリスクとプラスのリスクに分けられました。これも大きな変更点ですので、「リスク対応計画」と「リスクの監視コントロール」は次回にまわしたいと思います。

◆お奨め図書
もちろん、PMBOK第3版の日本語版です
 Project Management Instytute
"A Guide To The Project Management Body Of Knowledge: Official Japanese Translation"(2005.2)
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