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第8回(2002.06.15) 
エンジニアリング型プロジェクトとマネジメント型プロジェクト
 

 プロジェクトマネジメントにはいろいろなタイプがある.例えば,プラントを建設する,システムを開発する,宇宙開発をする,クルマを開発する,新技術を開発する,経営革新をする,商品のプロモーションをする,これらはすべてプロジェクトとして行われる.これらのプロジェクトは,所用期間も違えば,プロジェクトフェーズの構成も異なる.これらの違いは,また機会があるときに解説する(急いで知りたい方は,例えば,「プロジェクト・マネジメント実践講座 B&Tブックス」をご参照).

 さて,今回はこの中で,特にマネジメントとして違いの顕著な分類に注目してみたいと思う.それは,マネジメント型プロジェクトとエンジニアリング型プロジェクトという分水である.

 エンジニアの間では,例えば,情報システムと建築で全く対象は違うが,双方のプロジェクトマネジメントをみて,全く理解できないというほどの違いはない.ところが,経営革新と情報システムの開発を比較すると考え方が全く違うことに気が付く.

 何が違うかというと,目的の与えられ方である.エンジニアリングのプロジェクトでは目的が与えられた上で,その目的の達成をドライブするためのプロジェクトがある.もちろん,目的が与えられただけであるので,それがきちんとできるかどうかという保証はないし,それゆえに上でプラント建設とシステム開発ではフェーズ構成が異なるということになるわけだ.

 これに対して,経営革新プロジェクトでは目的そのものを作っていくところから始めなくてはならない.経営を革新しようというのは目的であるように思えるかもしれないがそうではない.目的とは目的を達成する条件というのが明確になって初めて目的であるといえる.経営革新の場合,どうすれば経営が革新されたかを決めながら行っていく必要がある.

 さらには,研究開発のように目的そのものを探しながら進めていくケースも考えられる.例えば,創業20周年を記念してイベントを行うとしよう.この場合,経営革新よりはもっとあいまいである.目的そのものを創業20周年記念事業という制約の中で探していく必要がある.
 このように目的を作っていくところから行うプロジェクトをマネジメント型プロジェクト,目的の与えられたところから始めるプロジェクトをエンジニアリング型プロジェクトと呼ぶ.

 さて,現在のプロジェクトマネジメントの手法を見ていると,生い立ちからしても,現実を見ても,明らかにエンジニアリング型プロジェクトを対象にした手法になっている.ところが,今後重要性が増すだろうと考えられているのはマネジメント型プロジェクトである.重要なことは経営革新,起業,イベントといったマネジメント型プロジェクトは今まではプロジェクトマネジメントの対象としてあまり考えられていなかったものであることだ.また,エンジニアリングの中でもITエンジニアリングなどでは目的が与えられないプロジェクトが多く見られるようになってきていることにも注意しなくてはならない.これをテーブルに載せなくてはならない.そのためには,戦略決定などで使われるポートフォリオマネジメント,シナリオベースマネジメントなど,今までとは少し異なる手法が必要になる.

 PMBOK(R)は非常の良くできたフレームワークで,対象プロジェクトの性質に応じて使う手法を他の分野からいかようにも持ってこれる(まさにフレームワーク!).現に,PMIでは,例えば,製薬メーカを中心にそのような研究が盛んに行われている.
 PMBOK(R)を待つまでもなく,そのような分野でもそろそろ,実績が計画であるなどといった考え方は捨てて,マネジメントを意識してより効率的な運用を考えていく時期に来ていると思う.また,そうすることがより一層の創造性を発揮させる手段になるだろう.

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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