PMstyleはこちら |
第6回(2002.06.01)
プロジェクトの品質 |
プロジェクトマネジメントとは,スコープ(成果),納期,コスト,品質のマネジメントである.これはどんなプロジェクトマネージャーに聞いても,どんな企業に聞いても同じ答えが返ってくるだろう.
ここでいう品質とは成果(プロダクト)に対する品質である.これとは別に,プロジェクトの品質(クオリティ)が高いとか低いということをいうことがある.
話は大きくなるが日本という国は不思議な国だと思うことがある.それは,ビジネスの場で結果は問わないということを真剣に言っているのを聞くときである.結果は後についてくるもの,結果より過程が大切であるという意味であろう.不思議なのはこのこと自体ではない.このように考えているにも関わらず,経営管理しているのは結果だけのことが多いことだ.よく言えば,信じているので結果だけ聞けばよいということかもしれないし,悪く言えば過程が大切だというのは責任の所在を明確にしたくないだけということかもしれない.
このような風潮は少しづつ変わってきているように感じるが,そのきっかけはISO9000の普及であるように思う.ISO9000はプロセスの品質という概念を持ち込んだ.そして,プロセスの品質を管理できれば,結果(プロダクト)の品質は管理できると考えている.
不確実性の小さな分野ではこれは正しいが,不確実性の大きい分野で正しいかどうかはなんともいえない.しかし,少なくとプロセスの品質に注目することが大切であることは間違いない.
さて,話を元に戻して,プロジェクトの品質であるが,プロダクトの品質がプロジェクトの品質だと理解している人が多いだろう.これはこれで大ききはずしているわけではないと思う.しかし,じゃあ,どうやって品質を上げるのかということを考えたときに,少し,行き詰る.プロダクトの品質を上げるしかないのだから,品質管理を強化するということになるが,これは品質保証を強化するとかいう話だけではすまない.ソフトウエアを例にとれば,潜在的バグという概念がある.製造者によるテストでは発見されないバグで,OSなどになると結構な数で存在している.これを減らすのがプロダクトの品質を上げるという意味である.さて,どうするのかという話になるわけである.
やはり,プロジェクトの品質はプロダクトの品質だといっていないで,プロジェクトの品質という意味をきちんを考えてみる必要がありそうである.言い換えると,プロセスの品質を考えてみるということだ.
品質という概念はもともと「計画に対する差異の大きさ」を示す概念である.ここでいっている計画とはプロジェクト計画だけではなく,技術仕様なども含まれてくる.プロジェクトの品質の意味するところは,プロジェクトの計画との差異だと考えるのが妥当であろう.すると,プロジェクトの品質を上げるにはという問題は,差異を小さくするにはどうすればよいかという問題になる.
計画との差異を小さくするには3つのポイントがある.一つ目は計画の精度を上げることであり,これは組織学習によってのみ,実現される.2つめはリスクをきちんとマネジメントすることである.精度とも関係してくるが,コンティンジェンシープランなどをきちんとつくり,不確実性をできる限り取り除いていくような計画の立て方をする必要がある.もう一つは差異を小さく押さえることである.差異は積分される.従って,生じてしまった差異をできるだけ早く修正することが,差異を小さく押さえる方法になる.これが,PMBOKでいうところの変更管理である.差異を早く修正するには早く発見しなくてはならない.つまり,進捗管理の方法を厳密にしなくてはならない.このあたりにアーンドバリューマネジメントシステム(EVMS)が注目されている理由がある.
これらの一つ一つについては,これから徐々に解説していこうと思う.
◆関連するセミナーを開催します
╋【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋ ◆プロジェクト監査の理論と実際 ◆7PDU's 日時・場所:【東京】2019年 01月 28日(月) 10:00-18:00(9:40受付開始)
ちよだプラットフォームスクウェア(東京都千代田区)
【大阪】2019年 02月 27日(水)10:00-18:00(9:40受付開始)
大阪市中央公会堂(大阪市北区) 講師:鈴木道代(プロジェクトマネジメントオフィス、PMP,PMS) 詳細・お申込 http://pmstyle.biz/smn/pm_audit.htm 主催 プロジェクトマネジメントオフィス、共催:PMAJ ╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋ 【カリキュラム】 1.プロジェクト品質とは 2.プロジェクトマネジメント品質向上への取り組み事例 3.プロジェクト監査と進め方 4.事例に見るプロジェクト監査の活用法 5.プロジェクト監査の視点 6.監査の実際 ╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋ |
|
前の記事 | 次の記事 | 記事一覧 |
|
著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
メルマガ紹介
本連載は、「PM養成マガジン」にて、連載しております。メルマガの登録は、こちらからできます。 |
スポンサードリンク |
|