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第308回(2014.04.04)
今求められている「プロジェクト・イニシアチブ」とは何か


◆プロジェクト・イニシアチブ

戦略ノート306にプロジェクトマネジメントからプロジェクトへという記事を書いた。この中で、プロジェクトのポイントになるのはデザインで、そのためのツールとしてパターンランゲージがキーになるだろうと述べた。

PMstyleでは今年度のテーマを

「プロジェクト・イニシアチブ」

とし、戦略ノート306に書いたようなことに着手した。今回は戦略ノートでも今後の話のベースになるプロジェクト・イニシアチブという概念を説明しておきたい。

◆イニシアチブとは

まず、プロジェクト・イニシアチブとは造語であることを最初にお断りしておく。

イニシアチブとは、日本語では「主導権」という言葉に訳されることが多い。

イニシアチブをとる
イニシアチブを握る

という使い方をする。ここで主導には、牽引、率先、自発といったニュアンスが含まれていることに注意しておいてほしい。もう少し一般的にいえば、「自ら責任を持った行動」というニュアンスが含まれる。

イニシアチブはマネジメントの中では、「推進」とか、「推進努力」という意味でつかわれることが多い。たとえば、「戦略マネジメント」で、戦略実行のために戦略目標を設定し、目標を達成していく活動を「戦略的イニシアチブ」と呼ぶ。

エム・アンド・ティでは「プロジェクト&イノベーション」というメルマガを発行しているが、イノベーションでイニシアチブという言葉を使うときには基本的に推進という意味で加えて、「新しいことの推進」といったニュアンスも含まる。

ちなみに、戦略的イニシアチブとか、イノベーション・イニチアチブは、カタカナ英語としてはあまり定着していないが、英語そのものは普通に使われている言葉である。

このようにイニシアチブという言葉はいろいろな意味で使われるが、共通するのは「自発的」だということだ。


◆プロジェクトとは

ではいまさらだが、プロジェクトとは何だろうか?新製品開発プロジェクト、情報システム開発プロジェクト、建築プロジェクト、イノベーションプロジェクト、組織開発プロジェクトなどいろいろなプロジェクトがある。プロジェクトマネジメントの教科書を見ると、プロジェクトとは

新規性と不確実性がある有期の活動

という説明がされている。狭い意味でいえばこういう仕事の一つ一つがプロジェクトということになる。もう少し広くいえば、プロジェクトとは事業そのものだと考えてもいいだろう。

一般的に、狭い意味でのプロジェクトの上位概念にプロジェクトの集合体であるプログラムがあるが、広い意味でのプロジェクトはプログラムも含む概念で、事業を意味する。少しややこしいが、頭の整理をしておいてほしい。

狭い意味でのプロジェクト:新規性と不確実性がある有期の活動
広い意味でのプロジェクト:狭い意味でのプロジェクトやプログラム

となる。


◆自発的に社会を牽引するプロジェクト

そこで、プロジェクトとイニシアチブという言葉を併せてみると

プロジェクト・イニシアチブとは会社や社会を牽引していくプロジェクトが自発的に生み出され、実行されること

という意味になる。PMstyleではこれをプロジェクト・イニシアチブと定義している。

プロジェクト・イニシアチブというとすぐに思い浮かぶのがプロジェクトXだ。

昔の日本にはプロジェクトXは数多く存在していたが、この20年くらいの間に激減している。1980年代に世界を風靡したエレクトロニクス産業が世界に遅れをとったのもこれが一因だといえよう。


◆プロジェクト・イニシアチブのポイントは自発性

プロジェクトXのポイントになるのはいかにリスクをとり得るかである。

たとえば、あなたの担当している製品開発を思い浮かべてみてほしい。経営者が求めるのはその製品を売ることによって利益を上げることだ。管理者が求めるのは売れそうな製品が出来上がることだ。

しかし、プロジェクトにはそれ以外のミッションがある。それは社会に貢献することだ。言い換えると、人々の生活や仕事を素晴らしい方向に変える製品にすること。それが、結果的に売れる製品、儲かる製品になる。

このとき、経営者や管理者は社会貢献の部分は指示しない。ルール、権限、職責などに縛られていると、社会貢献は難しくなる。そこでプロジェクトが自発的に考えていく必要が生まれる。

これが、プロジェクト・イニシアチブが必要な理由である。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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