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第256回(2011.06.03)
プロジェクトマネジメントチーム

◆分業型のチームと協働型のチーム

世間ではチームマネジメントがブームである。この半年で、チームマネジメントをテーマにした本は30冊は出ていると思う。チームで仕事をすることの重要性への認識が高まってきているのだろう。

チームで仕事をすることの重要性は、プロジェクトでは改めていうまでもない。

チームで仕事をするといった場合、チームのスタイルは二つに分かれる。分業型のチームと協働型のチームである。分業型は生産を目的とするプロジェクトでよくみられるスタイルである。WBSで仕事を分け、責任者を決め、最終的にチームとして成果を統合していくスタイルである。

これに対して、協働型のチームは、チームで行うべき課題を全員でやっていく。細かくみれば作業分担をすることもあるが、基本的にはプロジェクトの一つ一つのイシューに対して、全員で知恵を絞り、動いていく。


◆プロジェクトマネジメントにおけるチーム
プロジェクトマネジメントにおいてもチームで行うことが重視されるようになってきた。プロジェクトマネジメントチームである。

プロジェクトマネジメントチームという考え方は、PMBOK(r)のプロジェクト活動の枠組みに明記されているように新しい考え方ではない。日本でも、プロジェクト内PMOといった形で大規模プロジェクトや、マルチコーポレイトプロジェクトでは取り入れられている考え方である。

ただ、その位置づけはプロジェクトオフィスと呼ばれるものであった。名前の通り、主たる機能は、事務機能である。プロジェクトマネジャーからの依頼を受け、ドキュメント作成やデータ作成、プロジェクト主管組織へのレポート作成、会議の運営など、プロジェクトで発生する事務処理を担当し、プロジェクトマネジャーの支援を行う位置づけであった。分業型のチームである。

プロジェクトマネジメントチームを設置することによって、プロジェクトマネジャーは本来の仕事である、意思決定や、メンバーのパフォーマンス向上、顧客対応、ステークホルダマネジメントに時間を割くことができ、プロジェクトがうまくいく確率が高まる。


◆協働型の経営チーム

しかし昨今では、これだけで十分かという議論が出始めている。経営レベルの話でいえば、今の時代は、複雑性が高くなり、ある経営上のイシューに対して、複数の視点からの意見を調整していかないと、適切な答えが得られなり始めている。たとえば、従来だと、収益と顧客と技術のことを考えていればよかったのが、ここに環境的な視点を入れざるを得なくなった。2〜3の分野であれば、一人の経営責任者が判断できるかもしれないが、視点を置く分野が4つ、5つとなると、まず、無理だ。また、そのあとの戦略展開はもっと難しい。

ここで、2つの考え方がある。一つは、それでも専門分野の意見を取り入れ、経営スタッフの助けを借りて、あくまでも一人が意思決定し、実行していくことだ。もう一つが、専門分野の責任者や実行のキーマンを巻き込んで、経営チームを作ることだ。流れとしては後者に移りつつあり、そのチームマネジメントをどのようにするかが議論されるようになってきた。

たとえば、プロジェクトマネジメント分野でもハックマンモデルというチームの発展モデルで知られる、リチャード・ハックマンたちは、「Senior Leadership Term」(邦訳「経営リーダーチーム」)という本で、経営リーダーによるチーム経営の方法について論じている。


◆協働型のプロジェクトマネジメントチーム

この流れはプロジェクトマネジメントでも同じである。プロジェクトで発生するさまざまな問題はプロジェクトマネジャー一人の判断で対応するのが難しくなってきている。たとえば、著者のクライアントのIT企業では、協働型のプロジェクトマネジメントチームを制度化しており、ガバナンス、プロジェクトチーム、顧客、ベンダー対応のリーダーロールを置いている。小さなプロジェクトでは兼務が多いが、規模によってはすべてのロールに一人一人、プロジェクトリーダーが配置されるようになっている。

特に、プロジェクトの場合、意思決定の迅速な実行が求められる。それを誰が推進するのかということが問題になってくる。大規模なプロジェクトでプロジェクト内PMOを作って分業型のプロジェクトマネジメントを行っているケースを見ると、顕著である。プロジェクトマネジャーはステークホルダマネジメントに忙殺され、意思決定事項を実行していくところに手が回らない、目が届かない。それなりに、PMOやリーダーが対応するが、スピードが遅く、問題に発展する。

この問題の本質は、プロジェクトマネジメントチームのあり方にある。プロジェクトマネジメントチームが分業型である限り、統括するプロジェクトマネジャーは仕事が増えてしまい、対応が遅くなる。そこで、プロジェクトマネジメントチームは協働し、自分たちで決めたことを自分たちが推進していけるという体制を作っていく必要があるといえる。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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