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第246回(2011.03.05)
PMBOK(R)はアジャイルに適している |
※PMBOK(R)はPMI(R)の登録商標です。
◆ついに、PMI(R)がアジャイルに
米国PMI(R)がアジャイルプロジェクトマネジメントの試験を始めると発表した。結構、話題になっている。PMBOKとアジャイルというと、水と油のように思っている人が多いようだ。
これが大きな誤解だ。PMBOK(R)はプロセスに対して、インプットとアウトプットが完全につながっている。つまり、全体が巨大な一つのプロセスになっている。PMBOK(R)の信奉者の大好きな世界だが、このことにさして意味があるわけではない。PMBOK(R)のプロセスをすべて実行するようなマネジメントが必要なケースはほとんどないからだ。
PMBOK(R)のすべてのプロセスには、ツールと技法という「プラクティス」が示されている。PMBOK(R)のプロセスは、プロセスの形で示されたプラクティスだと考えた方がすっきりする。
PMBOK(R)の原型ができたのは、1987年であるが、標準になったのはそこから10年後の1996年である。当初はプロセスとして標準化しようとしたが、実際には難しく、知識体系に落ち着いたという経緯があり、収束に10年の月日がたったという話を聞いたことがある。
実際にマネジメントプロセスを記述するというのは不可能に近い。実際に1996年に出版された初版のPMBOK(R)はすべてのプロセスはつながっていない。
◆ロジックとプロセス
プロセスがすべてつながるというのはどういうことかを考えてみるとよくわかる。マネジメントにおいては、Aという事実とBという事実があって、「洞察」によりCという事実が導かれることが少なくない。「ロジック」ではない。たとえば、プロジェクトマネジャーが
A:スケジュールが遅れている
B:メンバーがつかれている
という2つの事実から、
C:放っておくとどんどん状況は悪化する
という判断を導いたとしよう。一見、ロジカルに見えるが、風が吹けばおけ屋が儲かるような筋の悪いロジックで、ロジックであるとは到底言えない。しかし、現実にはこれは正しいことが多い。つまり、AとBという事実に加えて、プロジェクトマネジャーのこれまでの経験から新たなロジックを追加したり、あるいは直感を加えるなど、総合的に判断をしているからだ。これを確率だけでロジックにしようとすると大けがをする。たとえば、疲れているのだが、目は死んでいないことを見逃すようなことになる。
話が脱線するが、最近、ある研修で「総合的に判断する」というのは政治家とか、経営者といった偉い人のごまかし言葉だと言い切った若者がいた。ロジック以外はごまかしだというのは不見識も甚だしい。洞察というのはロジックや五感すべてで行うものだ。第六感も重要である。
◆マネジメントプロセスは本質的につながらない
話をもとに戻す。マネジメントで行う判断というのは上のような洞察が入るものがほとんどである。いくら、メトリクスを細かくして客観化しようとも、必ず、ロジックだけでは構成できない。
プロセスは決まって手順を表現したものであり、再現性があるものだ。したがって、基本的にロジックで構成できないものをプロセス化すると「ごまかし」がある。大抵は再現できないものをプロセスとして定義している。PMBOK(R)ではもともと、再現性のない部分はツールと技法として扱ってきた。
それから12年後に出た第4版を見ると、プロセスである必要のないものをプロセスに仕立てて、全体をつないでいる感があるのは否めない。どこだという指摘はしないが、少なくとも2か所はある。
◆PMBOK(R)の枠組みはアジャイルに適している
話が長くなったが、PMBOK(R)はプロセスはあるが、プロセスも含めて知識体系、つまり、プロジェクトマネジメントのプラクティスだとみるのが自然である。
PMBOK(R)がアジャイルに向いている一つ目の理由は、このような作りにある。ツールと技法、あるいは、プロセスにアジャイル的プラクティスを取り込んでしまえば、アジャイルプロジェクトマネジメントのフレームワークを作ることはそんなに難しくない。
ただし、いくつかのポイントがあると思われる。これについては、また、今度。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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