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第239回(2010.12.10)
自律と管理

◆自律的なチームを管理する

2011年の1月に企画したセミナー「PMBOK(R)とチームファシリテーションの融合」というセミナーに「自律的なチームを管理する考え方と方法」というサブタイトルがついている。告知すると早速、自律的なチームの管理というのは矛盾ではないかという指摘があった。「管理されているチームは自律的ではないでしょう」という指摘だ。

これは誤解である。自律とはレスポンシビリティ(作業責任)に対するものであり、管理はアカウンタビリティ(成果責任)に対するものである。簡単にいうと、個人やチームは自分の役割を果たすことに自律的な責任を持つが、その成果に対しては組織(プロジェクト)が責任を持つ。これが、「自律的チームを管理する」という概念であり、プロジェクトマネジメントの最も基本的な形なのだ。


◆偏重するアカウンタビリティとレスポンシビリティ

このような構図が理解しにくいのは、プロジェクトにはレスポンシビリティとアカウンタビリティが2つの責任概念があることが理解されていないためだ。多くのプロジェクトはどちらかだけに偏重しているケースが多い。

レスポンシビリティに偏ると、とにかく一生懸命やればいいのだという話になる。

確かに、仕事の制約条件が緩かった時代には、一生懸命やれば「結果はついてきた」。つまり、レスポンシビリティだけで十分だった。プロジェクトも例外ではなかった。

しかし、今の時代、一生懸命にやっても仕事がうまく行くとは限らない。つまり、レスポンシビリティは果たしているのに、アカウンタビリティを果たすことができない。そんな状況が増えている。

そこで、真逆に振る上位管理者が出てくる。アカウンタビリティだけを問う管理者、
「とにかく結果を出せ、言い訳など聞きたくない」というパターンだ。

このように本当の意味で責任が分担されておらず、いずれの発想もプロジェクトマネジメントの発想ではない。プロジェクトマネジメントはレスポンシビリティを果たすことによって、アカウンタビリティを果たすためにある。PMBOK(R)のプロジェクト体制でいえば、アカウンタビリティを持つのはプロジェクトスポンサーであり、レスポンシビリティを持つのはメンバーである。そして、レスポンシビリティをアカウンタビリティに変換するのがプロジェクトマネジャーの仕事である。


◆アカウンタビリティとレスポンシビリティをマネジメントする方法

さて、問題は変換をどのように行うのか。プロジェクトマネジメントはその具体的な方法をあまり明確にしていない。アカウンタビリティの管理の手法としては、WBSとアーンドバリューがある。そして、アカウンタビリティとレスポンシビリティを結びつける手法として、RAMがある。

問題はRAMで定義した責任を如何に実行していくかである。この部分はプロジェクトマネジメントでは、チームマネジメントなどの方法への言及はあるが、管理の手法はない。つまり、レスポンシビリティについては基本的には自律を前提にしており、その中でアカウンタビリティを実現していかなくてはならない。

ここで、上で述べたように自律というのは管理されないことだと誤解されていることが多い。つまり、何にも制約されず「ベストエフォート」で仕事をすればよいと思っているプロジェクトチームが少なくない。これは間違いである。チームの行動については介入されることがないが、チームの成果については管理される。そのためには、目標管理視点が必要になる。一つの例は生産性である。

つまり、設定された生産性の目標に対して自律するのだ。


◆プロジェクトマネジメント計画で変換する

このように、チームの目標を設定するのがアカウンタビリティの役割であるし、また、アカウンタビリティの実現手段である。

そのために、プロジェクトマネジメント計画がある。プロジェクトマネジメント計画は、何らかの目標の設定をすることにより、レスポンシビリティをアカウンタビリティに変換することを計画する。

言い換えると、自律的なチームがもたらす成果物を、プロジェクトの成果物へ変換するための方法を考え、計画する。自律的なチームを管理するというのは、チームやチームメンバーの行動の管理をすることではなく、成果物を管理し、アカウンタビリティを実現することに他ならない。


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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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