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第171回(2007.12.14)
完璧なリーダーが成果を挙げるとは限らない |
◆The Power of followership
1992年に「The Power of followership」という書籍が出版された。著者はカーネギーメロン大学教授のロバート・ケリー。日本で講演をしたこともあるのでご存知の方もあるだろう。この本は牧野昇氏の翻訳で、日本では翌年「指導力革命」という訳本として出版されている(この本は絶版になっている)
ロバート・ケリー教授はリーダーシップ研究の専門家である。その教授がリーダーとフォロワーの調査の結果、その関係に関して、3つの衝撃的な報告を行った。
・ほとんどの組織において、その成功に対するリーダーの平均的貢献度は20%に過ぎない
・フォロワーは、残り80%の鍵を握っている
・ほとんどの人は、その肩書きや給与とは無関係に、リーダーとしてよりフォロワーとして長く働く
の3つである。
◆完璧なリーダーが成果を挙げるとは限らない
教授によると、リーダーシップ自体は2000年前からある考え方だが、最近「リーダーとは完璧なものである」という神話が生まれてきたという。しかし、歴史上、活躍したリーダーをみると決してそんな完璧なものではない。たとえばとしてあげているのはイギリスの存亡の危機を救ったウィンストン・チャーチル。彼は弁舌でイギリス国民の心を捉え、国民を団結させ、危機を脱出したが、飛んでもなく横柄な人物だったそうだ。もうひとつ例に挙げているのが、古代ギリシアの最高神のゼウス。ゼウスはだらしなく、理屈っぽく、狭量な一面があったという。
つまり、完璧なリーダーという考え方は最近生まれてきた考え方(発祥の地は米国だと思う)であって、完璧さが必ずしも有能なリーダーの条件とは限らないというのが教授のフォロワーシップの旅の始まりだったという。
最近の例でいえば、小泉純一郎元首相と安部晋三前首相の比較をしてみると面白い。
小泉は完璧なリーダーとは程遠いものだったし、目指していたとも思えない。阿部は完璧なリーダーを目指していたように思う。どちらが成果を挙げたかはいうまでもない。完璧なリーダーを求めるというのは単なる崇拝に過ぎず、さほど、意味があることではない。
◆成功するプロジェクトマネジャーはキーマンを放さない
であれば、プロジェクトの成否は何で決まるのか?フォロワーシップ(メンバーシップ)であるというのがロバートケリーの調査である。
この話はある程度納得できる。組織の中に必ずいる成功するプロジェクトマネジャーの多くはキーマンになる人材を手放さない。小泉にとっての飯島元秘書のような感じの人材を抱えているのだ。
ある組織での調査だが、プロジェクトマネジャーがもっとも重視するマネジメントサポートはリソース配置だ。これは多くの組織の共通していると思われる。では、どういうリソース配置かというと、実は「有能だという評判」の人を求めているわけではない。もちろん、一定の能力はあるのだろうが、「○○さんがほしい」という個人名をあげるプロジェクトマネジャーの方が圧倒的に多かった。
逆に、外部(組織)から与えられた人材で成功を積み重ねることができるプロジェクトマネジャーはめったにお目にかからないし、その組織の調査ではその自身があると答えたプロジェクトマネジャーは1%に満たなかった。
◆プロジェクト成功の鍵はフォロワーシップである
この結果はプロジェクトを成功させるためには、メンバーが鍵になっているということを示していると同時に、リーダーシップ神話を否定する結果だともいえる。リーダーシップ神話に従うと、リーダーはどんなフォロワーでもその能力を活用でき、動機付けでき、また手本になる。こんなことは起こらないはずだ。
このギャップの中で、リーダー自身は完璧であろうとして苦しみ、メンバーやステークホルダーは完璧でないリーダーを見て失望する。しかし、これはリーダーもメンバーもないものねだりをしているに過ぎない。
このような現象はメンバーのフォロワーシップやスポンサーシップの未熟さを示す結果でもある。
上に述べた組織とは別のクライアントだが、伝説のメンバーというのがいる。入社7年、まだ、30過ぎの技術者なのだが、彼が入ったプロジェクトはプロジェクトマネジャーが誰であろうと必ず成功するそうだ。いろいろと聞いていると、彼の入ったプロジェクトでは目標が明確になっている、チームでの目標の共有が達成できている、チームでのリスクの共有ができていることがわかった。何らかの形で彼が影響力を及ぼしているのだろう。
これはサーバントリーダーシップだと見ることもできるが、究極のフォロワーシップであると見ることもできる。卓越したフォロワーシップはサーバントリーダーシップなのかもしれない。
これから少し、プロジェクトの成功の80%を決めるフォロワーシップのあり方について考えてみたい。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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